日本航空が整理解雇へ

2010年11月16日の日本経済新聞Web版で、会社更生法が適用され再建途上にある日本航空の整理解雇について報じています。整理解雇についてまとめておきたいと思います。

整理解雇とは、企業経営上の必要性に基づいて行われる人員削減のための解雇のことです。解雇とは、使用者が一方的な意思表示によって行う労働契約の解約であり、大きく普通解雇と懲戒解雇とに分類されますが、整理解雇は懲戒解雇ではないので普通解雇の一態様と考えられます。

労働契約法は、16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として、解雇に関する「権利濫用法理」の適用を明文化した規定を設けています。

さらに、整理解雇に関しては、判例で次のような点を検討すべきであるという判断の枠組みが形成されています。ただし、次の1から4の各事実について、その1つでも欠けた場合には、整理解雇は解雇権濫用にとなるとする「4要件説」があるのに対して、1から4の事実は、必ずしもそれが全てそろわないと法的な効果を生じない要件ではなく、事案ごとに個別具体的に事情を考慮して総合判断する際の要素に過ぎないとする「4要素説」に立った判例が存在しています。

1.人員削減の必要性があるか
2.解雇回避努力義務履行を尽くしたか
3.被解雇者選定の相当性
4.手続の妥当性

日本航空の事案に当てはめて考えてみると、1は会社更生法を申請した会社であり、被整理解雇者の人数などが常識的な線にとどまる限り、まず必要性ありと判断されると思います。2も希望退職を募ることを行ってきた結果、人数が目標に達しなかったという事実が前提としてあるので、要件を満たしていると判断されそうです。

問題は、3及び4で、3について組合側が相当性を問題にしているとみられます。3については、例えば勤続年数が長い者を対象にするのと短い者を対象にするのとどちらが相当か、また、正社員とパート社員のいずれを対象とするのが相当かなど、個別具体的に検討していくしかない問題です。4についても会社のやり方の一部に組合が反発しているようで、手続きの妥当性が問われることになりそうです。会社が組合に対し3箇月間に7回の団体交渉を行った事例について、会社は誠意をもって対応したと認めた判例があります。

=== 日本経済新聞より引用 ===

「時間ない」日航が整理解雇 労組反発

会社更生手続き中の日本航空が15日、雇用契約を強制的に解消する整理解雇に踏み切る方針を決めた。日航と企業再生支援機構は労働組合と協議を進める考えだが、一部の労組は強く反発。今後ストライキや訴訟に発展する可能性もある。混乱をどう収拾するのか、経営陣は難しいかじ取りを迫られている。
「予想していたよりも人数がずいぶん少なかった。しかし、もう時間がない」。希望退職の募集を締め切った9日深夜、日航幹部は険しい表情を浮かべた。
日航と管財人の企業再生支援機構は東京地裁に提出した更生計画案の中で、グループの社員数4万8714人(2009年度末)から約1万6000人を削減する方針を掲げた。このうち日航本体での削減目標は1500人。9月3日から全職種を対象に希望退職を募ったが、当初の締め切りでは「パイロット130人、客室乗務員140人の計270人が未達」(大西賢社長)だとして最終募集を実施。客室乗務員については対象年齢も引き下げたが、9日の締め切りではパイロットで110人客室乗務員で90人程度が足りなかった。
最終募集の期間中、パイロットの労働組合「日本航空乗員組合」からは「ワークシェアリングを検討して欲しい」といった要請も出ていた。しかし、経営側らは「対応できない数字だと判断した」という。

労使の溝は深い。「整理解雇を回避するため、最後までぎりぎりの検討を重ねた」(日航幹部)とする経営側。これに対し、客室乗務員の労働組合「日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)」の幹部は「当初から特定の人間を辞めさせようとする意図を感じた」と批判の声をもらす。
例えば客室乗務員の削減目標。日航は職種別の内訳を公表しなかったが9月の募集当初は、労使協議の場で「550人程度」と伝えていたという。それが、いつの間にか「実人数ではなく、稼働ベースの実態で判断する。目標は610人」という説明に変わったという。
稼働ベースとは月に一定時間の乗務があった人を「1人」として換算するやり方だ。客室乗務員は10月26日までに650人が応募。当初目標からいえば達成していることになるが、長期欠勤者が含まれているため稼働ベースで換算すれば470人にしかならない――。経営側の説明に、CCUは「納得がいかない」と不信感を募らせた。

また、乗員組合も経営側が一部のパイロットを乗務から外して個別面談を受けさせた手法を問題視している。「運航への影響を考え、安全面から外した」とする経営側に対し、乗員組合は反発。東京地裁に退職強要の差し止めを求める仮処分を申し立てており、徹底抗戦する構えだ。

労使問題は日航にとって長年のアキレスけんだが、ここに来て、その根深さが改めて示されている。再建に向けて更生計画案の実効性が問われるなか、問題が社内で波及し、労使の信頼関係が損なわれるような事態になれば、再建の行方にも黄信号がともりかねない

=== 引用終わり ===

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