年金の併給調整について-その2-

 公的年金制度では、1人1年金が大原則です。そのうえで、例外的に遺族年金と本人の老齢年金など2つ以上の年金の受給権を取得したときに、複数の年金の中から1つを選択したり、特例として2つ以上の年金が受給できる場合があるというのが前回のお話でしたが、今回はもう少し特殊な場合について、考え方をまとめておきたいと思います。


1.旧厚生年金保険又は旧国民年金の老齢年金との併給調整

(1)65歳以後の遺族厚生年金と旧厚生年金の老齢年金又は通算老齢年金
 65歳以後に遺族厚生年金及び旧厚生年金の老齢年金又は通算老齢年金の受給資格があるときは、遺族厚生年金及び旧厚生年金の老齢年金又は通算老齢年金の2分の1相当額を併せて受給することができます。

 旧厚生年金の受給者とは、どのような方々なのか少々考えてみました。要は、昭和60年(1985年)大改正で基礎年金制度が導入される前に既に受給者になっておられた方々のことです。ということで、おおよその生年月日を見ていくと、大正15年(1926年)4月1日以前生まれの方々が、新法施行日の前日昭和61年3月31日までに60歳到達という訳です。しかし、旧厚生年金の元々の支給開始年齢は、55歳だったのが昭和55年4月1日の法改正で60歳に引き上げられたものです。経過措置のために55歳から59歳で支給される年代は、女性の場合昭和15年4月1日生まれまで続きました。

 そもそも、厚生年金の発足自体、昭和17年6月1日に労働者年金保険法として、一定範囲の男子労働者のみを対象としてのものでした。昭和19年厚生年金保険法となり、同年10月1日から、男子事務職及び女子も被保険者となったのです

(2)65歳以後の遺族厚生年金と旧国民年金の老齢年金又は通算老齢年金
 65歳以後に遺族厚生年金及び旧国民年金の老齢年金又は通算老齢年金の受給資格があるときは、遺族厚生年金及び旧国民年金の老齢年金又は通算老齢年金を併せて受給することができます。

 (旧国年)通算老齢年金及び(旧厚年)通算老齢年金、(旧国年)通算老齢年金及び(新)遺族厚生年金の組み合わせについては、特段併給調整の規定がないため、併わせて受給と考えます。一方、(新)遺族厚生年金と(旧厚年)通算老齢年金の併給調整については、昭和60年改正法附則第56条第6項で、(新)遺族厚生年金の2文の1支給が規定されています。

 なお、(1)及び(2)ともに65歳までは、いずれか1つの年金を選択する1人1年金の原則に戻ります。


2.通算老齢年金

 それでは、通算老齢年金とは一体どのようなものなのでしょうか。併給の話から少々それますが、ここでまとめておきたいと思います。

 通算老齢年金は昭和36年に創設された制度で、大正15(1926)年4月1日以前生まれの方で、複数の年金制度に加入し、それぞれの加入期間が1年以上あるが、何らかの理由によりその制度から老齢年金を受けられないとき、各制度の加入期間を通算することにより各制度から期間に応じた支給を行う老齢年金のことを指します。昭和60年大改正で基礎年金制度が導入されたため、現在はその役割を終えています。

 旧厚生年金の通算老齢年金の対象となる人は、昭和61年3月31日までに60歳になる人(大正15年4月1日以前生まれ)、あるいは昭和61年3月31日までに旧厚生年金保険法若しくは旧船員保険法による老齢年金又は共済組合が支給する退職(減額退職)年金(昭和6年4月1日以前に生まれた人に支給されるものに限る)の受給権を有している人で、旧通算年金通則法または旧公的年金各法による通算老齢年金又は通算退職年金が適用されます。

 旧厚生年金保険の通算老齢年金を裁定請求するときには「厚生年金保険通算老齢年金裁定請求書[旧](様式第194号)」の書類の提出が必要です。


3.遺族厚生年金及び遺族共済年金の併給

 遺族厚生年金と遺族共済年金の併給の問題は、加入期間を300月とみなして年金額を計算する場合(短期の支給要件)と老齢厚生年金又は退職共済年金等が受給資格期間を満たしていることによって受けられる場合(長期の支給要件)があり、このうちのどちらに該当するかによって、併給調整の取り扱いが異なります。

(1)共済組合等から支払われる障害給付の受給資格のある方が厚生年金保険の加入中に亡くなった時などは、遺族厚生年金(短期要件)及び遺族共済年金(短期要件)となります。この場合、両年金ともいったん支給停止され、いずれかを選択して、選択した方の年金の支給停止解除申請をすることになります。

(2)共済組合等の退職給付を受けられる方が厚生年金保険の加入中に亡くなったときなどは、遺族厚生年金(短期要件)及び遺族共済年金(長期要件)となります。この場合、両年金ともいったん支給停止され、いずれかを選択して、選択した方の年金の支給停止解除申請をすることになります。

(3)厚生年金保険の老齢給付を受けられる方が共済組合等の加入中に亡くなった時などは、遺族厚生年金(長期要件)及び遺族共済年金(短期要件)となりますが、選択ではなく、遺族共済年金のみが支給されることになります。

(4)厚生年金保険の老齢給付及び共済組合等の退職給付の両方の受給資格期間を満たしている方が亡くなったときなど、遺族厚生年金(長期要件)及び遺族共済年金(長期要件)どちらも満たしている場合には、2つの年金が併わせて支給されます。

※ 短期要件のとき、被保険者期間の月数が300月未満の時には300月とみなされます。


4.遺族給付及び業務上の給付について

 労働者災害補償保険法(労災法)による給付及び昭和61年改正後の新船員保険法から支払われる年金など、業務上の災害による給付及び遺族基礎年金又は遺族厚生年金とは併せて受けることができます。

 ただし、同じ業務上の災害によって、遺族基礎年金又は遺族厚生年金及び労災法による給付等が支給されるときには、遺族基礎年金又は遺族厚生年金は全額支給され、労災法による給付等は、一定の調整率(およそ8割程度)を乗じて減額した額が支給されます。

 また、同じ業務上の災害によって、遺族基礎年金又は遺族厚生年金及び労働基準法による遺族補償が支給されるときには、死亡の日から6年間、遺族基礎年金又は遺族厚生年金は全額支給停止されます。

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