病院経営は危機的状況

 昨年12月、福島県双葉部広野町にある高野病院の院長が火事で亡くなるという痛ましい事故のことが主要な報道機関でもとり上げられました。高野病院は福島第一原発事故発生以来、地域で唯一の医療機関として地域のインフラとしての役割を担ってきたのです。その病院の院長が亡くなり、病院の存続が危機的な状況にあるとみられたため、大きな関心が寄せられたのです。しかし、原発事故という特殊な事情を抱えた高野病院に限らず、今日多くの地方都市の病院経営は、厳しい状況にあるようです。星槎大学客員教授の上昌広氏は、「加速する病院崩壊」(NHKラジオ)で次のように病院経営の問題を解説されておられます。

 まず、地方都市の病院ですが、全国の病院で医師は院長が一人で診ておられるような病院が全体の1割程度にのぼるとのことです。その原因は、主に2つ考えられ、ここ数年続いている診療報酬の引き下げと地方都市における人口減少に伴う患者数の減少です。こういった地方都市では、地域の重要なインフラの一つである医療機関を維持していくことが困難になってきているのです。

 しかし、人口が集積し、医者の数も十分な首都圏でも別な意味での病院経営の問題が生じているというのが上教授の指摘です。私立大学医学部付属の大学病院などの民間の病院で主に起こっている問題は、看護師などの人件費が高く、コスト高を全国一律の診療報酬でまかないきれず、赤字になる病院が増えているということです。また、消費税の引き上げは、消費税の支払いが持ち出しになる傾向が強い病院経営にとって痛手であり、そういった状況下で設備投資その他の経営判断を少し違えただけで、経営状況が厳しくなる病院が多いようです。経営に問題のある病院はコスト削減に走ることになりますが、首都圏では数の多い医師の人件費削減が行われるため、私大付属の大学病院で働く40台の勤務医の月給が手取りで30万円あるかないかといったところもあるそうです。首都圏では知らない者は皆無と思われる聖路加国際病院でさえ赤字に苦しんでいることにはまったく驚きました。

 こういった深刻な問題が病院経営で人知れず進行していたのですが、上教授が提示した解決策は、新技術の導入と海外からの看護師や医師の招聘によるコスト削減、及び医療費の負担増でした。海外からの人件費の安い看護師と医師を招聘することは今日どの先進国でも行われているといわれるのですが、このような発想にはまったく同意できません。途上国の医師や看護師を先進国が吸い取るということは、途上国の医療を後退させてその恩恵を吸い取るということを意味すると思うからです。もちろん、日本で働きたい、日本で技術を磨いて祖国の医療に貢献したいという途上国の人を受け入れるのは好いと思いますが、積極的に外国人労働者を安く使おうという発想で受け入れるのには断固反対です。日本は日本のやり方で、つまり、設備投資と技術開発によってコスト削減を実現し、経済成長することで医療費増加分を賄って行けるようにするのが目指すべき理想の姿というものです。

(追記)今朝の日経紙には、大手銀行による医療費抑制のこんな動きが掲載されておりました。
<三井住友銀行とみずほ銀行は地方自治体と組み、病気の予防事業などで抑制できた医療費の一部を配当として投資家に還元する取り組みを始める。公共的な課題に関心を持つ富裕層らの投資マネーを取り込み、社会保障関連の事業拡大につなげる。民間資金を公的サービスに回すソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)と呼ぶ仕組み。2010年に英国でスタートし欧米で普及している。>

梅@八幡神社_KIMG_0108

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