年金額の改定方法の見直しについて

 今国会で取り上げられている「賃金の下落に合わせて年金支給額を引き下げる新たなルールを盛り込んだ年金制度改革関連法案」は11月29日、衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会の3党の賛成多数で可決され、政府・与党は12月2日に参院で審議入りし、延長した今月14日までの国会会期内に成立させる方針でいます。

 件の法案、浅草社労士は当初「マクロ経済スライド」をデフレ期にも使えるようにするだけの法案かと思っていたのですが、それだけではありません。賃金・物価の変動に合わせて年金額を毎年改定する仕組みについても、平成33年度(2021年度)から新ルールが導入されるようです。つまり、物価が上がっていても現役世代の手取り賃金が下がった場合、現在は高齢者が受け取っている年金額を据え置いているのですが、新ルールでは賃金に合わせて減額するようになります。両方下がり、賃金の下落幅が大きければ、年金の減額幅は賃金に合わせることになります。

 国民年金及び厚生年金などの公的年金の年金額は、ざっくりとした理解では、前年の物価変動に応じて毎年4月その年金額が改定されることになっています。ここが現在の年金受給者が受給している年金を現役世代の保険料でまかなう賦課方式だからこそできるインフレに強い仕組みといわれています。「賃金・物価スライド」と呼ばれる仕組みの改正は、賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底したとされています。

(1)物価も賃金も上昇、物価の上昇率>賃金の上昇率
→ 賃金の上昇率に合わせて年金額を改定する(今回変更なし)

(2)物価も賃金も下落、物価の下落率<賃金の下落率
→ つまりデフレ期に典型的な状況。このとき現行では下落率の少ない方の物価に合わせて年金額を改定していた。これを賃金の下落率に合わせて改定するに変更する。

(3)物価は上昇、しかし賃金は下落
→ このとき現行では年金額据え置いていた。これを賃金の下落率に合わせて改定するに変更する。

 次に、「マクロ経済スライド」の強化ともいえる改正です。マクロ経済スライドとは何かということですが、従来からあった年金額改定の仕組みは、前述の賃金及び物価増減率のみを考慮していたのに対し、マクロ経済スライドではこれらに加えて、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制しようという仕組みなのです。

 この労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制しようという仕組みは、経済が平常運転で賃金及び物価が上昇しているときは良いのですが、デフレ期のようにその伸びが鈍化又はマイナスになったとき、それをさらにマイナスに調整するとなると、さすがに景氣対策の面からも問題です。そこで、そういった場面ではマクロスライドによる調整をある程度の物価上昇時まで見送っていたわけですが、平成30年度からは名目加減措置を維持し、賃金及び物価の上昇の範囲内で前年度までのマクロスライド未調整分を調整するとのことです。要は、景氣後退期、デフレ期においてもマクロ経済スライドの適用による調整を早め早めに実施して年金支給額を削ってゆくよということなのです。

 政府・与党は、「若者世代の立場に立って制度の持続性を考えれば、足元の年金水準を徐々に下げることで、将来の年金水準を維持するために必要な措置」と主張しているようですが、景氣後退期が延々と続き、もはや我が国はデフレからは脱却できないということを前提にしているように思ます。賃金が下落するのは、通常景氣後退期です。そういうときに年金額も削って緊縮を行えば、景氣は負の循環に陥る危険性が増すのではないでしょうか。それこそマクロ経済的視点に立った施策とは言えないとも考えられるのです。

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