一元適用事業と二元適用事業

労働保険料徴収法に言う一元適用事業と二元適用事業の定義について、簡単に整理したいと思います。


1.教科書的定義

 同法第1条は、法律の趣旨を「労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合等に関し必要な事項を定めるものとする。」と規定し、労災保険の保険関係と雇用保険の保険関係の成立及び消滅、保険料の納付手続等の事務を一本化(一元化)して、効率的に運営すること(労働保険の適用徴収の一元化)を狙っていると言うことができます。
 しかし、例えば建設事業を行う建設会社などの場合、労災保険に係る保険関係は建設現場ごとに成立し、その現場の工事が終了すれば労災保険に係る保険関係は消滅します。ところが、1つの工事の終了で雇用関係が消滅するわけではないので雇用保険に係る保険関係まで消滅させることは不合理と考えられます。また、労災保険と雇用保険で適用労働者の範囲が異なる事業などもあり、これらの事業については一元化することがかえって事務の非効率につながってしまいます。従って、こういった事情を抱える事業については、例外的に二元適用事業として、労災保険及び雇用保険をそれぞれ別個に処理していきます。


2.より明確な定義

 しかし、1.のように法の趣旨から定義していくと今ひとつ釈然としない場合も想定されます。
例えば、国の行う事業です。この場合は、国家公務員災害補償法が適用されるので、そもそも労災保険の適用はありません。具体的にどのような事業かというと、(1)①国有林野、②印刷、③造幣の3つの事業があり、これを3現業と言います。郵政事業については、日本郵政公社の時代まで国家公務員災害補償法の守備範囲でしたが、その後民営化され、現政権下で民営化路線が修正されるようなので、今後また変化があるのかもしれません。(2)ついでに触れると、国家公務員及び地方公務員の事務部門(一般職)、「非現業の官公署」と呼ばれますが、ここが国家公務員災害補償法の守備範囲で、これらの公務員に労災保険の適用はないのです。
 一方、雇用保険については、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、厚生労働省令で定める者」という規定があります。要は、国又は特定独立行政法人の事業に雇用される者の場合には、原則として国家公務員退職手当法の対象となるので、雇用保険は適用しないということです。
 従って、国の行う事業については、そもそも一元適用事業、二元適用事業と言った概念の埒外にあると言うことができますが、これらの事業所の中に例外的に雇用保険の対象になっている労働者がいるものと思われます。そういう例外的な場合を想定すると、一元適用事業、二元適用事業の区分分けをしておく意味はあるかもしれません。

 都道府県等及び市町村等の事業に雇用されるものについては、前述の通り非現業の公務員の場合、労災保険の適用がありません。現業の場合、労災保険の対象となります。一方、雇用保険の適用は、「当該都道府県等の長が雇用保険法を適用しないことについて、厚生労働大臣に申請し、その承認を受けたもの、」「当該市町村等の長が雇用保険法を適用しないことについて、都道府県労働局長に申請し、労働厚生大臣の定める基準によって、その承認を受けたもの、」について適用除外としています。

 また、ある事業所(建設作業場)で働く労働者は一括して労災保険に加入していますが、雇用保険関係については、元請け、下請け、孫請け各会社の個々の事業所において雇用保険に加入しており、ある事業所(建設作業場)で取扱う労働保険は労災だけと言うような場合もあります。

 そこで、同法第39条第1項及び施行規則第66条は、二元適用事業を例外として限定列挙し、二元適用事業以外の事業を全て一元適用事業と定義しています。

(1)二元適用事業
 ①都道府県及び市町村の行う事業
 ②都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものが行う事業
 ③港湾労働法による港湾運送を行う事業
 ④農業、林業、畜産、水産の事業
 ⑤建設の事業

(2)一元適用事業
(1)以外の事業

 つまり、一元及び二元の分類とは、1.で述べたような労災及び雇用の各保険の加入状況とある程度関連させて考えることができますが、上記のような形式的な区分に拠る以上、当然のことながら、必ずしも加入状況に厳密に従っているとはいえない場合が想定されるのです。

コメント

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大変勉強になりました。とてもわかり易く、よく
わかりました。これからもわからない点について、
見させていただきます。

2012年07月13日 13:02 from 岸江 直美 URL

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