製造業復活の手がかり

 以前にも「中小企業の人を生かす経営」で紹介した嘉悦大学大学院教授の黒瀬直宏は、長年中小企業経営の事例研究を専門分野とされ、提言をしてこられた方です。7月22日の放送では、「中小企業の新しいものづくり」と題して、次のような事例を紹介されています。最先端を走っているコンセプト重視の中小企業のようでもありますが、大量生産と利益追求重視するあまり大企業が見失ってしまった物づくりの本質的な内容を含んでいるように思われます。ただ、こういう中小企業が育っていくためには、やはり一定以上の社会全体の豊かさが必要だな、と浅草社労士などは考えてしまいます。それは、金銭的な面でもあり、また、精神的な豊かさでもあります。多くの人が生活していくことだけで精一杯のような状況では、大量生産型の安くて一応不都合なく使える製品で市場が席巻される傾向が強まると考えられるからです。

 豊田自動車でコンセプトカーの企画・制作などに携わっていた根津孝太氏が、平成17年に独立して設立した「つなぐデザイン」という会社があります。この会社は、様々な製品のデザインを手掛ける一方で、工場を持たない自動車メーカー、つまり、コンセプトカーの企画を行っていると紹介されています。放送の中で紹介されていたのは、一台888万円もする未来型電動バイク「ZecOO」、子供でも運転できる車「カマッテ」、そして、小型で人にやさしい2人乗りの電氣自動車「リモノ(rimOnO)」などです。この手のコンセプトカー、記事を見ていて浅草社労士は楽しそうだなとは思うのですが、いま一つ実用性はどうなんだろうと考えてしまい、正直興味は高くはありません。やはり実物に触ってみて、乗ってみないと何とも言えないのです。

 しかし、「つなぐデザイン」には、中小企業らしく根津社長の個性が反映された会社の存在理由、理念といえるものが明確に意識されているようです。その第一は、「物づくりとは、思いを実現することである」と考える点です。従ってつなぐデザインでは、製品を世に送り出すにあたって、まずその思いを共に働く者全員で共有することを追求します。そして、製品を買っていただく使い手と製品を通じて思いも共有していくことを目指しています。つまり、物づくりを通じてある思いを具現し、その製品を世に送り出し、それを通じて思いを共有した共同体を生み出すこと、使い手により豊かになってもらうこと、利益はその結果に過ぎない、という思想です。

 第二は、近代大量生産方式の対極に位置する職人的技術を重視していることです。つなぐデザインは、工場を持たない会社ですので、物づくりをするにあたっては実際に製品を作る製造部門を担当する人々の協力が不可欠です。ここで、前述した思いに共鳴する職人的技術を集めて生かすことができる人脈や仕組を構築していることです。

 第三は、世に送り出す製品を使い手にこれは自分だけのものと実感して、愛着を持ってもらえることを重視しています。コンセプトカーのデザインを手がけてきた根津氏は、今日巷間でささやかれている若者の車離れの主な原因の一つに、車のブラックボックス化があると考えています。IT化が進み、あらゆる製品がコンピュータ技術とつながる流れを止めることは、おそらく不可能だと思われます。大量生産やブラックボックス化が今後ますます高度に進んでいく自体は止められないのですが、一方で、その対極にあるような職人的ものづくりの仕組みや作り手の思いを具現した製品等の存在価値も高まってゆくと想像することができます。行き過ぎた大量生産方式や利益偏重主義が行き詰まったときに、物づくりにおける一つの方向性を示してくれるような中小企業が育っているのは、素晴らしいことのように思えました。

20160711_蓮華@不忍池_KIMG0019

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