定年後の再雇用で賃金格差は違法か

 少々旧聞に属しますが、「定年後の再雇用で、同一労働なのに賃金を引き下げたのは違法である」という東京地裁の判決が出ておりました。いわゆる「同一労働、同一賃金」の原則にそった判決といいたいのでしょうが、同時にこの裁判長は「コストの増大を回避しつつ定年者の雇用を確保するため、賃金を定年前より下げること自体には合理性が認められるべきだ」ともいっており、一体何が言いたいのか、訳が分かりません。

 浅草社労士は、まず、定年制廃止又は定年制超延長を肯定します。その前段階としての、継続雇用制度にも賛成です。しかし、厳密な意味での「同一労働、同一賃金」の原則には明確に反対です。例によって、舶来の考え方だと思われますが、その運用の仕方は、欧米各国で歴史と伝統によりまちまちであろうと想像しています。以前にも書きましたが、次のように考えると「同一労働、同一賃金」の原則が馬鹿げたものであることが分かるはずです。

 これから何十年も会社に貢献することが期待される若者と数年後に定年に達する年齢の老人が同時に入社して同じ仕事をするという場合を想定すると、同じことをする点だけに注目して同じ賃金を支払うということがありえないことだと納得される方が多いと思います。同じような状況でも、この老人が長年会社に貢献してこられた功労者で、今は身体の衰えから今年入社の若者と同じことをしているという場合にも、また、別の配慮があって良いと考えるのが普通の日本的な発想です。「同一労働」というのは、単に目に見える今そこで行われている現象だけを見るものではなく、その中に様々な要素が含まれるものでなければならないように思えます。前述の若者と老人の例の他、正社員と非正規や地域限定正社員などの例でも、たとい今現在同じ労働を現象的には行っていたとしても、正社員の方は業務命令一つで全国どこにでも転勤していかなければならないとか、将来かなり異なる業務に取り組まなければならないなどといった賃金にプレミアムをつけるべき条件が付加されているとも考えられるのです。米国流の「ポスト」というのも、単純な同一労働というよりは、このような要素がある程度は織り込まれた概念だと思われます。

 形式的に同一労働を行っていても潜在的に織り込まれた複雑なポスト概念を考量する余地があるはずだとはいえ、このような判決が出ている以上、今後は継続雇用制度の運用面でよりきめ細かな配慮が必要になってくることになります。本件で言えば、仕事の内容や量は変わらないまでも、責任を軽くするための措置を採るなどです。

=== 日本経済新聞電子版 5月14日 ===

 定年退職後に横浜市の運送会社に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が、正社員との賃金格差の是正を求めた訴訟で、東京地裁(佐々木宗啓裁判長)は13日、「業務内容が同じなのに賃金が異なるのは不合理」として、請求通り正社員との賃金の差額計約400万円を支払うよう運送会社に命じた。
 判決は「定年前と同じ立場で同じ仕事をさせながら、給与水準を下げてコスト圧縮の手段にするのは正当ではない」と指摘。再雇用者の賃金を下げる運送会社の社内規定について、正社員と非正社員の不合理な待遇の違いを禁じた労働契約法に違反すると判断した。

 原告側の代理人によると、再雇用の賃金をめぐり、労働契約法違反を認める判決は初めて。判決によると、3人は2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。セメントを輸送する仕事の内容や責任の程度が変わらない一方、年収は定年前より2~3割下がった。被告の運送会社は「会社が定年前と同じ条件で再雇用しなければならない義務はなく、不合理な賃金ではなかった」と主張していた。代理人の宮里邦雄弁護士は「運送業界では、中小業者を中心に、全く同じ仕事なのに再雇用者の賃金を下げる例が多い。不当な処遇の改善につながる判決だ」と述べた。

 企業が定年後に嘱託社員を雇用する場合、仕事内容の変更とともに賃金を引き下げることは一般的。佐々木裁判長は「コストの増大を回避しつつ定年者の雇用を確保するため、賃金を定年前より下げること自体には合理性が認められるべきだ」とも判示した。

=== 転載 終わり ===

20160711_七夕@合羽橋

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