歓送迎会後の帰社中に事故と労災適用

 労働法体系というのは、比較的物事の実質を見て判断する傾向が強いように思えます。民法などもそうですが、あくまでも条文解釈の余地があり得る範囲内で実質をみるということです。労働者災害補償保険法という法律は、労災について規定している法律です。同法第1条は、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い...」としています。そこで問題になるのが、「業務上」という言葉です。現実の実務では、業務上と認定すべきか否か、難しい場合も多くあるため、その判断基準として「業務起因性」と「業務遂行性」という概念を導入して判断することになっています。

 確かに一見より緻密で論理的な判断ができるような氣にはなりますが、かえって一般の方の頭を混乱させるだけのように浅草社労士には思えてしまいます。要は、一般の人の健全な常識に訴えて、業務に内在している危険性が現実化したと認められるか、事業主の使用従属関係下で命じられた業務遂行の中で起こったことと見られるか、ということです。といっても、何だかまだ分かったような分からないような表現になってしまいます。そこに、実質を見るといってもある程度形式的な判断基準の必要性が出てくる土壌があるわけですが、これまで、職場での飲み会などに参加した後に起こった事故については、ほぼ自動的に業務上の要件を満たさないと判断されていました。帰りがけに事故にあった場合には、通勤災害と認定される可能性が出てきますが、仕掛かり仕事を再開しようと会社に戻ろうとしている途上で事故にあったというのが本件で、当初労災が認定されず、裁判所の判断を仰ぐこととなりました。今回最高裁判決では、この飲み会及びその前後の行動自体が亡くなった男性の置かれた具体的な状況に照らして業務上の行動であったという判断をしており、労災を認めるべきであるとの判決が下されました。

=== 日本経済新聞電子版 7月8日 ===

 判決によると、男性は福岡県内の会社に勤務。2010年12月、残業を中断して中国人研修生の歓送迎会に参加した。男性は社用車で研修生を自宅に送った後、会社に戻る予定だったが、途中で交通事故を起こし亡くなった。男性は飲酒していなかった。同小法廷は、上司の呼びかけで歓送迎会が開かれ、経費が使われたことを挙げ、「親睦のために会社が企画した行事で、事業活動に密接に関わっている」と判断した。男性は社長への資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に参加を断ったが、上司から「今日が最後だから」などと参加を求められた。判決は「資料の提出期限は延期されず、歓送迎会後に職場に戻ることを余儀なくされた」と認めた。

 労働基準監督署は労災にあたらないとして遺族補償の給付を認めず、妻が処分の取り消しを求めて提訴。一、二審判決は「有志で親睦を深める私的な会合が業務とは認められず、上司が帰社を命じたとも言えない」として妻側が敗訴した。福岡労働局は「判決の趣旨に沿って速やかに手続きを進めたい」とコメントした。

=== 転載 終わり ===

(参 考)
通勤災害を否定する通勤経路の逸脱、中断
通勤途中で逸脱または中断があると、その後は原則として通勤とはなりません。
(1)逸脱・・・通勤の途中で通勤と関係ない事で経路を逸れること
(2)中断・・・通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うこと

以下は例外として、その後も通勤途上とされる。
逸脱、中断の部分を除き、経路に戻った後は再び通勤となります。
(1)日常生活において必要な行為で厚生労働省令で定めるもの
(2)やむを得ない理由で最小限度に行う場合
例えば、
(イ)日用品の購入その他これに準ずる行為
(ロ)職業訓練、学校において行われる教育
(ハ)その他これらに準ずる教育訓練で職業能力の向上等を受ける行為
(二)選挙権の行使その他これに準ずる行為
(ホ)病院等での診察又は治療を受ける行為

20160711_七夕@合羽橋

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