月末退職と退職改定など

 老齢年金の手続きに関する技術的な問題をかなりマニアックなところまで掘り下げて論じてみたいと思います。


1.月末退職と退職改定

 そもそも老齢年金の額は、60歳、65歳など、特定の決められた時期にのみ改定されます。老齢年金の基本的な思想は、いうまでもなく、年齢をとって働く能力がなくなっていくことを保険事故とみなす年金ということですが、近年は60歳台前半は働くのが当たり前、65歳を過ぎても働き続ける人も珍しくなくなっています。そこで、老齢年金の受給者でありながら、同時に厚生年金の被保険者で、毎月保険料を納付している人の場合、年金額が改定されるのはいつかということが問題になってきます。このリセット的改定の時期は、65歳、70歳の特定年齢到達時を除くと、退職のときとなります。このリセット的改定のことを「退職時改定」と呼びます。

 退職時改定とは、「被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、(再び)被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときは、資格を喪失した日から起算して1月を経過した日の属する月から、年金額を改定する。」(厚生年金保険法43条の3項)というものでした。具体的には、5月23日に退職するとき、喪失日は翌24日になりますので、1箇月経過は6月24日、すなわち6月から年金額が改定されます。ここで問題になっていたのが、月末退職の場合でした。5月31日退職ですと、翌日は6月1日です。6月1日から1箇月経過する日は7月1日となりますので、月末退職の場合の退職改定は、翌々月からとなっていたのです。しかし、平成27年10月1日からの被用者年金の一元化の影響で、「退職日から1箇月を経過した日」と読みかえて運用されることとなり、月末退職であっても1箇月を経過した日は、上記の例ですと、6月30日となり、月末退職ときも翌月から年金額が改定されることとなりました。


2.継続雇用に関する同日得喪

 ここで、退職改定に関連してはおりますが、別の問題で「継続雇用に関する同日得喪」ということが論じられなければなりません。これは、60歳以降、定年等で一旦会社を退職しますが、間を置かずに継続雇用制度などで資格を再取得した場合、通常は正社員から嘱託社員などに地位が変更になることで給与が相当程度引き下げられるのが一般です。そして、このような場合に限って、標準報酬月額の引き下げが、3箇月の平均給与の水準を見てから届け出る月変届に依らず、給与水準が引き下げられた月から標準報酬月額を変更することが、資格喪失届と取得届を同時に届け出ることによって、許容されています。この仕組を「継続雇用に関する同日得喪」といっていますが、かつての「定年退職の場合にかぎられる」、「60歳から64歳までの特老厚の受給権者」といった要件が現在は不要とされており、60歳以上の同日得喪の場合には、この仕組みが広く適用されるようになっています。


3.2のときの在老の問題

 それでは、ここで問題です。

 これまで特老厚は給与水準が高かったため、全額支給停止されていた人が、平成28年5月末日、62歳到達で退職、翌月1日より嘱託で採用されることになった場合、もちろん年金が全額支給される水準まで給与は引き下げられたとします。この場合、年金額の改定は、何時からになるかということです。まず、この場合も、被保険者の資格を喪失して1箇月経過という事実は存在しませんので、6月の「退職改定」は起こり得ません。ですが、「継続雇用に関する同日得喪」ということは考えられますので、標準報酬月額は、6月から引き下げられます。ところが、年金額停止又は一部停止の調整は7月、つまり、取得から1箇月経過した日の属する月からとなります。ここのところの考え方は、「継続雇用に関する同日得喪」というのが、あくまでも継続雇用などで給与が引き下げられる人の保険料を引き下げてあげるための単なる便法であり、その効果は標準報酬月額にしか及ばないということでしょうか。ですから、年金額の改定は、原則に戻り資格取得から1箇月を経過した月からというようになるようです。

 それでは、65歳時改定と絡むときはどうでしょうか。

 上記の事例とほとんど同じですが、これまで特老厚は給与水準が高かったため、全額支給停止されていた人が、平成28年5月末日、65歳到達で退職(5月中に誕生日を迎える人でも、切りのよい末日退職という会社は多いと思います。)、翌月1日より嘱託で採用されることになった場合です。この場合も、考え方は上記と同じです。まず、「継続雇用に関する同日得喪」により、標準報酬月額は、6月から引き下げです。そして、年金額も65歳時改定で6月から改定されています。しかし、ここで65歳改定された新年金の6月分調整を行う標準報酬月額は、従来の高い標準報酬月額を使って停止額を決定します。もちろんその方式は、従来の低在老ではなく、高在老が用いられます。嘱託となってからの新しい標準報酬月額が用いられるのは、なぜか7月からということになります。


4.では、月変の場合は

 ここで、さらに問題を複雑化しているのは、継続雇用のような一旦資格喪失してから取得する場合ではなくて、ずっと正社員のまま高齢になっても働き続けている場合で、原則通り月額変更届によって標準報酬月額が変更されたときです。このときは、同月改定ということで、月変届によって標準報酬月額が改定された月と同じ月から停止額と年金額の改定が行われます。すなわち、月変届によって標準報酬月額の改定は、単なる便法などではなく、本当の改定であるため、保険料額ばかりでなく、年金額等全ての周辺事情に効果を及ぼす改定と考えると分かり易いかと思われます。

20160401_Skytree@墨堤_005

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