退職金減額訴訟で最高裁差し戻し判決

 いわゆる「就業規則の不利益変更」の論点に関して、19日に重要な最高裁判決が出ました。退職金を大幅に下げる際の労使の交渉が妥当かどうかが争われた裁判で、最高裁第二小法廷は、労使が合意したと見なすには書面上の同意では不十分で、使用者側が具体的な内容を説明する必要があるという初判断を示しました。

 山梨県の旧峡南信用組合の職員は、2度にわたる合併の際、労使の交渉で退職金の計算方法の変更点などについて説明を受けたあと、同意する文書に署名しました。しかし、その後、合併で退職金の規定が変更され、著しく減額されたとして合併先の山梨県民信用組合(甲府市)に以前と同じ退職金の支払いを請求する訴えを起こしていました。元職員らは規定変更の同意書に署名押印しており、同意があったと言えるかどうかが大きな争点の一つです。

 最高裁判所第二小法廷の千葉勝美裁判長は、「労働者は同意の基礎となる情報を収集する能力に限界がある。署名押印があったとしても、労働者への事前の情報提供の内容などに照らして判断すべきだ」と指摘。「自己都合退職の場合には支給額が0円となる可能性が高くなることなど、具体的な不利益の程度を説明する必要があった」などとして、原告側が敗訴した2審の判決を取り消して審理をやり直すよう命じました。要するに、労使が合意したと見なすには書面上の同意では不十分で、使用者側が具体的な内容を説明する必要があるという初判断を示したもので、今後、同じようなケースに影響を与えることが予想されます。

 類似の論点に関する判決としてしばしば参照されるのが、以下に掲げられた判例です。

(1)秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決)
 就業規則の変更により、定年制度を改正して主任以上の職の者の定年を55歳に定めたため、新たに定年制度の対象となった労働者が解雇された事例で、新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきとし、不利益を受ける労働者に対しても変更後の就業規則の適用を認めた。

(2)大曲市農業協同組合事件(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決)
 農協の合併に伴い、新たに作成・適用された就業規則上の退職給与規定が、ある農協の従前の退職給与規定より不利益なものであった事例で、秋北バス事件の最高裁判決の考え方を踏襲した上で、就業規則の合理性について、就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面から見て、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいうとし、新規則の合理性を認めて、不利益を受ける労働者に対しても拘束力を生じるものとした。

(3)第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日第二小法廷判決)
 就業規則により定年を延長する代わりに給与が減額される事例で、秋北バス事件、大曲市農協事件の最高裁判決の考え方を踏襲し、さらに合理性の有無の判断に当たっての考慮要素を具体的に列挙し、その考慮要素に照らした上で、就業規則の変更は合理的であると判断した。

201601_神奈川県庁@不横浜_0083

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