労働者派遣法改正問題

1.労働者派遣法改正案の要点

 労働者派遣法を規制緩和の方向で改正する法案は、平成25年(2013年)後半あたりからたびたび俎上に上せられてきた懸案ですが、今国会(第189回通常国会)で3度目の審議入りとなりました。改正法案の要点は、以下の通りです。

(1)派遣事業の「許可制」一本化
 派遣元企業が常時雇用する労働者のみを派遣する常用型派遣だけを行う「特定労働者派遣事業」に許容されている「届出制」を廃止し、派遣事業は全て「許可制」とします。

(2)派遣労働者の雇用安定及びキャリアアップ
 派遣元は、派遣労働者の雇用継続推進、キャリアアップのために以下の措置を講じることとします。
 ① 派遣労働者に対する計画的な教育訓練、希望者へのキャリア・コンサルティング
 ② 派遣期間終了時における派遣労働者への雇用安定措置
  A 派遣先に直接雇用を申し入れる
  B 新たな派遣先を提供する
  C 派遣会社で無期雇用に転換する

(3)派遣期間無制限26業務廃止
 まず派遣期間に上限のないソフトウエア開発、通訳、秘書又はファイリングなど「26業務」の区分をなくします。区分の廃止により何が26業務にあたるのか分かりづらかった問題を解決し、派遣労働者に仕事を任せやすくするのが目的としています。

(4)派遣期間の無制限化
 その上で、派遣期間の上限は「業務」ごとではなく「人」ごとに変えるとしています。現行法では、専門26業務以外で3年とする上限は、企業が仕事を派遣労働者に任せてよい期間で、1人の派遣労働者が同じ職場で働ける上限ではありません。上限を「人」に改めることで、人を交代すれば、企業は同じ職場で派遣労働者の受け入れを続けられる期間に制限がなくなるというわけです。しかし、こうなると派遣労働者を守ると同時に正規労働が派遣に置き換えられてしまうことから正規労働者を保護するという建前が崩れます。この点は、派遣労働が正規労働を代替しないように、労働者を交代する時に、過半数労働組合等から意見を聴取するよう企業に求めるとしていますが、どこまで実効性が働くのか連合などから疑問の声が上がっているようです。

 また、このような「人」ごとの制限をしたとしても、同一組織の派遣先において、同一人物が3年間人事課に派遣され、次の3年間は経理課に派遣されるということが永遠に繰返されることも可能になるという危惧も残ります。


2.派遣法改正に「10.1問題」

 ただ、今回労働者派遣法の改正が不成立になった場合にも、問題が生じる可能性があるという指摘があります。民主党政権時代の前回平成24年の改正で、法律の公布から3年以内に実施が予定されている「労働契約申込みみなし制度」です。以下は、5月13日の日本経済新聞電子版からの転載記事です。

=== 日本経済新聞電子版 ===

 与野党が真っ向から対立する労働者派遣法改正案を巡り、企業に「10.1問題」への懸念が広がっている。現行法のまま法施行から3年となる10月1日を迎えると、雇い止めや労働紛争が多発しかねないとの問題だ。現行法は2012年10月に施行され、今年10月1日に3年を迎える。問題は、実際の派遣現場では専門業務か一般業務かあいまいなケースがある点だ。企業が派遣社員を専門業務だと考えていても、労働局などが一般業務と判断すれば、10月1日以降には、3年を超えた時点で違法となってしまう。

 加えて、10月には「労働契約申し込みみなし制度」が施行される。3年を超えた違法派遣は、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し入れたのと同様だとみなされる。派遣業界からは「こうした事態を恐れ、一部で雇い止めが起きるのではないか」と警戒の声があがる。雇い止めを不満に思った派遣労働者が裁判所に訴えたり、企業が労働局の判断を不当として訴訟するなどの混乱も予想される。厚生労働省は「今回は通してほしい」(同省幹部)と焦りの色を強めている。政府・与党は国会でこうしたリスクを訴えていく方針。自民党の高鳥修一氏は12日の衆院本会議で「雇い止めが生じる可能性も否定できない」と指摘した。民主党は「悪質なプロパガンダだ」と反発している。

 総務省が12日発表した今年1~3月期の労働力調査によると、労働者派遣事務所の派遣社員は120万人で前年同期に比べ4万人増えている。

=== 転載 終わり ===

 同様の指摘は、月刊社労士4月号でも「労働契約申込みみなし制度を見据え9月施行」(51頁)の記事でもなされています。要するに、この制度の対象となる違法派遣は、(1)労働者派遣の禁止業務に従事させる(①港湾運送業務、②建設業務、③警備業務、④医療関係業務など)、(2)無許可の事業主から労働者派遣を受け入れる、(3)派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れる、(4)偽装請負となる場合なのですが、(3)はいまひとつ基準が明確でない例外26業務の規定を残しておくと、日経紙の指摘の通り「企業が派遣社員を専門26業務だと考えていても、労働局などが非26業務と判断すれば、10月1日以降には、3年を超えた時点で違法となってしまう。」可能性が高く、その結果、違法状態が発生した時点で派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたとみなす「労働契約申込みみなし制度」が発動してしまうことになるというのです。

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コメント

労働者派遣法改正案8日の参院本会議で審議入り

労働者派遣法改正案は8日の参院本会議で、安倍晋三首相も出席して趣旨説明と質疑が行われ、審議入りする。
http://www.sankei.com/politics/news/150707/plt1507070023-n1.html

2015年07月16日 11:16 from ヨコテ URL

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