マクロ経済スライド適用見直し案

 経済用語で、自動安定化装置(Build in stabilizer)といわれるものがありますが、これは、あらかじめ組み込まれた、景氣を自動的に安定させる働きが期待される財政制度のことをいいます。代表的な制度として挙げられるのは、累進課税制度及び社会保障制度などです。累進課税制度とは、高収入、高収益になるほど税負担率が増えて、これらが低くなればなるほど税負担率が減るという制度であり、社会保障制度とは、傷病、高齢、失業などで収入が減ってしまった場合に、最低限度の生活を保障するために国が給付を行う制度です。

 そこで、景氣が非常に好況になると、個人の所得が増え、企業も増益となるので、所得税や法人税が累進的に増額されて、景氣を沈静化する方向に税制が作用することが期待されます。また、好況期には求人も当然増加しますから、失業給付などの社会保障費の給付が減少します。一方、景氣が低迷すると、個人所得も企業収益も減少しますので、これらに課される税率が下がり、少なくなった所得や収益の中で民間の手許に残る割合は相対的に大きくなるので、景氣に対する負の作用を和らげることが期待されます。さらに、不景氣で失業者が増加すると、失業給付の総額が増えて、消費を下支えすることになります。

 このような観点からすると、消費税は、自動安定化装置の考え方とは全く相容れない制度の代表格であるといえます。また、デフレ期に物価の下落以上に年金給付を減らすという、急進的なマクロ経済スライドの考え方も、ちょっとやり過ぎだという批判が出て当然なのかもしれません。しかし、心配になるのは、厚生労働省が物価が下落して「抑制できなかった分の削減を、翌年度以降の物価上昇時まで持ち越す」という考えであることです。基本的にはデフレ政策であるマクロ経済スライドを実施しておいて、翌年度以降の物価上昇を期待するというのは、あまりに虫の好い話のように聞こえてしまうからです。

=== 毎日新聞電子版 2月24日 ===

 厚生労働省は24日、次期年金制度改革案を自民党の厚労関係部会に示し、大筋で了承された。年金の伸びを物価の伸びより抑える仕組み(マクロ経済スライド)について、>物価下落(デフレ)時にも発動できるようにする原案を断念。デフレで抑制できなかった分の削減を、翌年度以降の物価上昇時まで持ち越す。原案に反発する与党に配慮した形だが、デフレが長引いた場合、実際に複数年度分をまとめてカットできるのか疑問視する意見もある。

 公的年金は前年の物価の動きに連動して改定するのが基本だが、マクロ経済スライドは、年金財政が安定するまで年金の伸びを少子高齢化による財政悪化分(2015年度は0.9%と試算)だけ抑える仕組み。物価が1.5%増でも年金は0.6%増とする。ただ、デフレ時には実施しない決まりがあり、物価が0.5%減なら年金も0.5%減にとどめる。これに対し、厚労省は昨年、年金財政の悪化を踏まえてデフレ時にも同スライドを適用する案を公表した。この案では、物価が0.5%減なら、同スライド分(0.9%減)と合わせて年金は1.4%減になる。

 しかし、春の統一地方選などを控えて与党内に慎重論が浮上したため、厚労省はこれまで通り、デフレ時には同スライドを適用しない方針に戻した。ただし、抑制見送り分は物価が上昇に転じたときにまとめて削減する方向。24日の自民党の部会では「将来世代に責任が持てない」との批判が出たが、執行部側に抑え込まれた。

 厚労省はこの日、国民年金に加入する女性を対象に、出産前6週間と出産後8週間の保険料を免除する制度の導入案も提示した。加入者全員の保険料を月額100円程度アップして財源にする。厚生年金には既にこうした制度がある。このほか、従業員500人以下の企業に勤めるパート労働者を対象に、労使が合意すれば厚生年金に加入できる仕組みも整える。厚労省は一連の改革案を盛り込んだ年金関連法案を今国会に提出する構え。ただ、審議は秋の臨時国会以降になる見通しだ。【中島和哉】

下線は浅草社労士

=== 引用 終わり ===

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