メンタルヘルスと過重労働

 これも失われた20年の影の部分なのかよく分かりませんが、経費削減のための人減らしが横行し、労働者一人当たりの労働量が増える傾向にあり、過重労働の問題が別に驚きでも何でもなくなってきている昨今です。おそらく、鬱病をこんなにも世に蔓延らせた主犯の一人は「過重労働」だろうと小生などは考えています。そして、このような過重労働をしてでも生産性を上げざるを得なかった要因は、いろいろあったのだと思いますが、90年代に進んだグローバリゼーション、国境のボーダーレス化が大きかったと思われます。


1.過重労働による健康障害防止対策

 過重労働による様々な健康障害が社会問題になるにつれて、政府による対策が講じられました。その一つが平成18年(2006年)改正労働安全衛生法の施行です。

 このときの改正では、「過重労働による健康障害防止対策」として、長時間労働者に対する医師による面接指導の実施についての条文が新たに追加されました。

(面接指導等)
第66条の8 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第1項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
4 事業者は、第1項又は第2項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。
5 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

 「厚生労働省令で定める要件に該当する労働者」とは、「1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその越えた時間が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」(労働安全規則第53条の2)で、該当する労働者が医師の面接指導を申し出た場合、事業者は、医師による面接指導を実施しなければならないとされ、医師による面接指導の義務を事業者に課しています。

 また、この医師による面接指導の実施の具体的な流れは、
(1)事業者が各労働者の1箇月当たりの時間外・休日労働時間を算定
(2)100時間超の労働者がいた場合、医師による面接指導を実施することを通知
(3)労働者は、この通知を受けて自ら疲労の蓄積を認めた場合、医師による面接指導を受ける旨申出を行う。
(4)医師による面接により労働者の勤務状況、疲労の蓄積状況その他心身の状況について確認の上労働者本人に対して必要な指導を行う。同時に事業者に対して事後措置について意見具申を行う。
(5)事業者は、就業場所の変更、労働時間短縮などの対策を実施する。


第66条の9 事業者は、前条第1項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

第66条の8が全ての事業者に課せられる義務であるのに対して、第66条の9は努力義務です。対象となる労働者とは、週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合により疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している者で、該当する労働者からの申出を受けて医師による面接指導を実施します。


2.衛生管理委員会

 第66条の8第5項に言う衛生委員会は、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する全業種で事業場ごとに設置されなければならず、①総括安全衛生管理者、②常時50人以上の労働者を使用する全業種で選任される衛生管理者、③常時50人以上の労働者を使用する全業種で選任しなけらばならない産業医、④当該事業場の労働者で衛生に関する経験を有する者などのよって構成されます。
衛生管理委員会の役割は、①労働者の健康障害防止のための基本対策、②健康保持増進のための基本対策、③労働災害の原因調査及び再発防止対策で、衛生に係るもの、④その他、労働者の健康障害防止及び健康保持増進に関する重要事項について、調査審議し、事業者に対して意見を具申することです。


3.産業医

 常時50人以上の労働者を使用する全業種で選任しなけらばならないとされています。産業医の職務は、①労働者の健康管理等に関して事業者に対して必要な勧告を行うこと、②総括安全衛生管理者に勧告すること、③衛生管理者に対して指導・助言すること、④少なくとも毎月1回作業場を巡視し、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じること、などです。


4.50人未満の労働者を使用する事業場

 使用する労働者の人数が常時10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者(安全管理者の選任を要する事業場)又は衛生推進者(安全管理者の選任を要しない事業場)を選任することが義務付けられています。また、小規模事業場に産業医の選任義務はありませんが、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学の知識を有する医師その他の専門家に労働者の健康管理の全部又は一部を行わせるように努めなければならないという形で、努力義務を課しています。

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