「マクロ経済スライド」来春から実施へ

 16日、NHKの伝えるところによれば、厚生労働省は、15日開かれた社会保障審議会の部会で、年金支給額の伸びを物価上昇よりも低く抑える「マクロ経済スライド」が来年4月から初めて適用されるという見通しを示すとともに、年金財政を強化するため、デフレ経済のもとでも実施できるよう、規定を見直す案を示したとのことです。NHKによる報道は以下の通りです。

=== NHK HPより転載 ===

 平成16年に成立した年金制度改革関連法で導入された「マクロ経済スライド」は、年金財政の先行きが厳しさを増すなか、年金支給額の伸びを物価や賃金の上昇より低く抑えて実質的に給付水準を切り下げるもので、デフレ経済のもとでは実施しないことになっています。厚生労働省は、15日開かれた社会保障審議会の年金部会で、全国の消費者物価指数がことし8月まで15か月連続で上昇しているとして、来年4月から初めて適用されるという見通しを示しました。厚生労働省は、これによって、物価や賃金の上昇分として2.5%程度加算される年金支給額が、およそ1%の増加にとどまると試算しています。

 さらに厚生労働省は、少子高齢化の進展に備えて、年金財政を強化する必要があるとして「デフレ経済のもとでは実施しない」という規定を見直す案も示しました。ただ、こうした対応を取った場合、収入が少ない高齢者が大きな影響を受けるという声があることから、厚生労働省は、低所得の高齢者対策の必要性についても議論を進め、年内をめどに方向性を示したいとしています。

=== 転載 終わり ===

 以前の記事でも何度か言及してまいりましたが、年金額の決定方式としてのマクロ経済スライドとは、賃金及び物価増減率のみを考慮するだけではなく、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制する仕組みを指しています。マクロ経済スライドは、本来平成17年から実施されるはずだったのですが、保留状態が続いていました。その理由は、平成12年から14年の景気後退期に生じた-1.7%の物価下落がその後の物価上昇によって相殺されるまで、マクロ経済スライドを含む年金額の改定方法の実施を延期することとしてしまったからです。

 しかし、安倍政権発足以来の物価上昇傾向と来春4月に完結する予定の年金額特例水準の引下げにより、保留状態がいよいよ解消されるというわけです。ということは、記事にもあるとおり、今後約10年間は、賃金及び物価の上昇率を労働力人口の減少及び平均余命の伸びで値切った末に出てきた改定率が採用され、総年金支給額の増加抑制が実施されることを意味します(特例水準の年金額解消の先にあるもの)。

 高齢化に伴い肥大化する社会保障費の抑制は、我が国にとって喫緊の課題ではありますが、記事が指摘するとおり、高齢者の貧困化にどのように対処して行くのか新たな懸念が残ります。ただ、高齢化に伴う社会保障費抑制の問題は、先進国共通の課題であり、米国及びドイツの支給開始年齢が既に67歳に引上げられていることなどを見ると、社会保障の後退傾向は今後も避けられないものと覚悟しておかなければならないことかもしれません。

 ただ、「デフレ経済のもとでは実施しない」の見直し案というのは、政府が資本主義経済の運営上絶対に回避しなければならないデフレ経済を再び繰返すの愚を想定しようということなのでしょうか、浅草社労士には理解不能です。国には、健全な経済成長を促進する財政金融政策を推進し、国民の雇用機会を確保して、税収を増やしてゆくことが、より効率的な社会保障の仕組みを求めて右往左往することより先に求められるところです。また、国民の側も、一人ひとりの自助努力と共に、地域社会や家族の復権、より堅固な共同体の再構築といった発想の転換が求められているような氣がします。

 なお、マクロ経済スライドの実施に関する同様の記事は、本年6月にも日本経済新聞に掲載されており(マクロ経済スライドを見直すという記事について)、この分かりにくい仕組みを来春までに国民に受け入れる心の準備をしてもらおうという意図が背景にあるのかもしれません。

201410_皆既月蝕

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