配転命令の有効性_日本ガイダント仙台営業所事件

1.事案の概要

債務者Yは、医薬品、医薬部外品及び医療用具の製造、輸出入及び売買等を目的とする株式会社です。債権者Xは、債務者Yとの間で平成11年3月8日に労働契約を締結していました。本件申立に係る配転命令発令以前のXの職務は仙台営業所の営業係長であり、賃金月額は61万9950円で、給与等級はPⅢに属していました。

Yは、平成12年からは、各営業所だけでなく各営業職員ごとの売上目標額をも設定することとし、同年におけるXの売上目標額は2億4202万2000円、売上実績は2億1236万702円(87.7%)、同13年の売上目標額は2億8400万円、売上実績は1億6343万4658円(57.5%)となり、この結果は債務者全国営業所の営業職係長職員15名中、目標達成率で14位、売上実績では最下位でした。

このため、YはXに対し、平成14年3月5日付けで、従前の営業職(給与等級PⅢ)から仙台営業所事務職(給与等級PⅠ)への配置転換を行う旨辞令を交付しました。当該配置転換に伴う給与等級の引下げにより、Xの賃金は月額31万3700円となりました。そこで、XはYに対し、営業事務職への配置転換命令が無効であるとして、労働契約上営業職としての地位を有する仮の地位が有ることの確認と、配転命令を受けて減額される以前の賃金額と減額後の賃金の差額について仮払いを求めた訴えを起こしました。


2.解 説

本事案について、仙台地方裁判所平成14年11月14日決定では、(配置転換等)人事権の行使は、基本的に使用者の裁量判断に属し、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用にわたるものでない限り、使用者の裁量の範囲内であるとして、広く有効性を認める方向を示しています。

しかしながら、本件配転命令は降格の側面を有しており、賃金は労働契約における最も重要な労働条件であることから、単なる配転の場合とは異なって使用者の経営上の裁量判断に属する事項とはいえず、降格の客観的合理性を厳格に問うべきものと言っています。

従前の賃金を大幅に引下げる本件のような配転命令については、使用者の人事権の裁量を重視することはできず、①労働者の適性、能力、実績等の(降格の原因に対する)労働者の帰責性の有無及びその程度、②(会社側の)降格の動機や目的、③使用者側の業務上の必要性の有無及びその程度、④降格の運用状況(他に降格された者との比較)等を総合的に考慮し、従前の賃金からの減少を相当とする客観的合理性がない限り、その降格は無効であるとしました。

そして、降格が無効になった場合、配転命令に基づく賃金の減少を根拠付けることができなくなるから、賃金減少の原因となった・・・配転命令自体も無効となり、配転命令全体を無効と解すべきであると述べています。

本件配転命令について裁判所は、増員を予定とした売上目標を設定されながら、結果として増員がなされなかったため、1人当たりの売上目標額が高額に設定されていたこと、担当によって顧客数や担当範囲の広さなどの地域特性があり、単純比較しづらい部分があること、会社側の過去の降格事例と比較すると、この労働者ほどの大幅な降格は考えられないこと、会社側は何としても退職させたかったところ、労働者側が応じなかったために、あくまで給料の引下げそのものが目的で、適材適所の配置という観点からの配置転換及び降格ではなかったことが経緯からみて明らかなこと、というような内容の事実認定を行っています。

前述のような基準と事実認定に基づき、裁判所は、本件配転命令には、客観的合理性があるとは言えず、降格は無効であるとしました。また、降格が無効である以上、配転命令も無効であると結論付け、賃金差額の大部分についての仮払いを認めました。ただし、地位保全の必要性については、Xの主張のみではこれを基礎付けることができないとして、否定しました。




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