いわゆる「残業代ゼロ制度」、識者の見解

 いわゆる「残業代ゼロ制度」(=成果だけに応じた給与制度=スマートワーク構想)について、様々な意見が聞かれるようになっております。リベラル系経済評論家の1人と目される森永卓郎氏が、制度に対する反対意見をラジオで述べられていたので、紹介します。

 森永氏は、労働時間に対して賃金を支払う現行制度にも、その例外として、裁量労働制やフレックス制が既に存在することを指摘した上で、今回の導入時には年収1千万円を超えるような高度の専門職に限るなど相当に制限的な労働規制緩和だとしても、制度導入の真の狙いは、合法的に残業代を払わない制度を導入し、時間無制限で労働させることを可能にすることにあると見ています。

 そのように制度導入に関して疑いを持って見ている理由は、派遣労働者制度の導入とその規制緩和方向への改正の歴史を見ているからです。すなわち、労働者派遣制度は、当初、例えば同時通訳などの高度な専門職に限るとして導入されました。これが1986年のことです。しかし、1999年には、労働者派遣は原則自由化され、一部の業務について例外的に禁止されるという形に規制緩和されました。それでも、製造業については、派遣労働者を使用することが禁止されていましたが、2004年に小泉政権下、製造業への労働者派遣が解禁されてしまいます。森永氏は、残業代ゼロ制度も労働者派遣法と同じような運命をたどるのではないかと危惧されているのです。制度に転換するためには、労使の合意及び本人の同意が必要という要件も、結局は使用者側の意向が通るのではないかと見ておられるようです。

 森永氏によれば、現在、先進国の中で比較的長時間労働をしているのは、我が国を除くと英米の2箇国であり、米国の制度であるWhite Collar Exemptionが手本になっているのではないかとの見解を述べています。そして、このような成果のみで賃金を決定する方式を採用すると、その成果を評価する上司が相当に強い権限を握るようになり、結局米国で起きていることは、徹底した成果給賃金の会社において、現象的には次の3者だけが高い賃金を得られるようになるというのです。

(1)上司に上手く取り入る人
(2)同僚の足を引張るのが上手い人
(3)同僚の手柄を横取りするのが上手い人

 成果主義の悪いところに焦点を当てすぎていて、少々極端な見方のような氣もします。しかし、確かにWall Streetなどでは、直属の上司の権限が絶大な感じで、この点は我が国など比較にならないということは事実のようです。残業代ゼロ制度については、しばらくの間様々な賛否両論の意見が出されると思われます。ただ、時間によらない柔軟で時代の変化に即した制度を導入したいというならば、まず、既存の裁量労働制を試してみて、もし使えないならば、その原因を洗い出し、本当に改善すべき変更点が存在するならば、改正案を出して行くというような地に足の着いた方法論を採るのが筋ではないかと思うのです。

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