労災適用申請中の治療

今更言わずと知れたことなのですが、労災は業務上又は通勤途上の負傷、疾病、障害、死亡等を事故と想定した保険制度です。一方、健康保険法は、業務外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産を事故と想定した保険制度について規定しています。しかし、実務において、果たしてこれは業務上の負傷に該当するのかという場合があります。疾病については、症状が表れるまでに一定の期間経過している場合等も多く、かく乱要因はさらに多いことでしょう。

そこで、業務上の傷病として労働基準監督署に認定を申請中の未決定期間に治療を行った場合(普通そうすると思います)、この治療費の扱いはどうなるのかということが問題になります。これについては、一旦業務外の傷病ということにして、健康保険の適用を受けるということが考えられますが、前述の通り、健康保険が事故として想定しているのは業務外の疾病及び負傷であって、業務上の傷病はそもそも健康保険の想定する事故ではありません(健康保険法第1条)。論理的には、業務上の傷病に健康保険を適用するのは仮であっても誤りです。

悩ましいところですが、次のような通達(昭和28年4月9日保文発2014)が出ています。
「業務上の傷病として労働基準監督署に認定を申請中の未決定期間は、一応業務上の取扱いをし、最終的に業務上の傷病でないと認定されたときに、健康保険法による業務外と認定された場合には、さかのぼって療養費、傷病手当金等の給付を行う」

つまり、原則はあくまで業務上の傷病と考えるということです。業務上の負傷であろうといえる程度の状況で、急いで治療を受けなければならないというような典型的な場合には原則論で十分だと思われます。しかし、うつ病など業務上の事由によるのかどうか確定するまでどうしても時間がかかるような場合、実際にはどうなっているのか、健康保険で治療を受け始めてしまい、その間に業務上の事由によるのかということになって労災認定の申請を行うというようなことが多いのではないかと想像しています。この場合には、同じ事由の疾病で初期の治療は健康保険、労災申請後の治療については労災認定後に労災保険適用となるものなのでしょうか。

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