経過的加算のからくり

1.合算対象期間のからくり

 俗に「カラ(=空)期間」と呼ばれている「合算対象期間」ですが、代表的なものとして「昭和36年4月1日から平成3年3月31日までの20歳以上の学生であった期間のうち、国民年金に任意加入しなかった期間」、「昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの被用者年金加入者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者であった期間のうち、国民年金に任意加入しなかった期間」、及び「昭和36年4月1日から日本国籍を有する20歳以上60歳未満の者が海外に居住していて非居住者であった期間」などが挙げられます。

 この4月からの年金の受給資格の判定に重要な影響を及ぼす改正点の一つが、上記の期間のうち国民年金に任意で加入できる期間がある場合で、任意で加入した上で未納期間があるとき、合算対象期間として受給資格期間に算入できることになりました(平成26年4月からの年金制度改正点等_3月10日)。これまでは、「任意で加入したのにもかかわらず被保険者が保険料を納付しなかった期間については、未納期間であるから合算対象期間には含めない」という理屈だったのです。

 ところで、この合算対象期間を勉強していると、「第2号被保険者としての被保険者期間のうち、20歳前の期間及び60歳以後の期間」又は「厚生年金保険(船員保険)の被保険者期間のうち昭和36年4月1日以後の期間で20歳前の期間及び60歳以後の期間」(共済組合の組合員等期間も同様)というのが出てきます。これらが年金額の算定の対象にならない単なる資格期間である合算対象期間とは、一体どういう意味なのか、首をかしげる方も多いかと思われます。


2.経過的加算のからくり

 その意味が明確に分かったのは、数年前に年金特別アドヴァイザーの仕事をするようになってからのことです。ここで、このからくりを理解するためには、いくつかの前提条件を明確に意識しておく必要があります。

(1)何といっても合算対象期間とは、あくまでも国民年金の話であるということ、従って、対象期間は20歳以上60歳未満の期間ということが原則であり、大前提です。

(2)ここから、国民年金(基礎年金)の満額は20歳から60歳までの40年間という上限があり、個別の年金額は原則として20歳から60歳までの間の納付期間を40年間(480月)で除し、その数値を満額に乗じて求めることになります。

(3)国民年金とは別系統の厚生年金保険では、加入期間は20歳前にも存在し、60歳以後70歳まであります。ただし、厚生年金の被保険者が2号被保険者となるのは、20歳前の期間から開始しますが、上限は原則として65歳までです。その理由は、国民年金において被保険者であると同時に年金受給者とはなり得ないからです。

(4)厚生年金保険の構成要素には、定額部分と報酬比例部分があり、定額部分には40年(480月)という上限が設定されています。また、20歳から60歳までの期間で定額部分に相当する保険料は、大部分基礎年金に流用されます。

 こうした大前提から必然的に導かれる「経過的加算」に関する結論は、次のようになります。

(1)大卒者の場合、60歳で定年退職して以後、厚生年金保険に係る会社等で働かなかったとき、基礎年金は大学時代に納付又は卒業後追納した分及び厚生年金保険の保険料を納付した期間の分ですが、厚生年金定額部分の年金額は、基礎年金の計算の方法と若干異なり、1箇月当たり1円程度大目に差額が生じるので、厚生年金保険の保険料を納付した期間についてはこの差額が「経過的加算」となり、厚生年金保険の年金額を構成する一部になります。

(2)高卒者及び大卒者でも60歳到達以後も厚生年金被保険者であった場合、当然のことながら、1で触れた合算対象期間が発生します。しかし、20歳から60歳までの期間は基礎年金に流用されると書きました。そうすると、高卒者の場合が分かりやすいのですが、18歳から60歳まで途切れなく同じ会社で働き、厚生年金保険の被保険者として保険料を納めているとき、20歳から60歳までの保険料は、基礎年金を構成する要素となり、月当たり1円程度の定額部分と基礎年金との差額が「経過的加算」となります。18歳から20歳前までの厚生年金被保険者としての定額部分はどうなるのかというと、残念ながら定額部分の上限は480月ですので、20歳から60歳の基礎年金に流用された部分で既に上限に達していると考えるのです。

(3)それでは、大卒者が65歳まで厚生年金保険の被保険者であった場合はどうなるかです。この大卒者は、23歳到達で初めて厚生年金保険の被保険者となり、大学時代は国民年金の学生特例を利用して保険料を納付していなかったと仮定します。そうするとこの人の基礎年金は、厚生年金保険38年間分で支給されるはずです。また基礎年金は全て厚生年金保険料によりまかなわれていますので、この期間の月当たり1円程度の定額部分と基礎年金との差額が「経過的加算」となります。さらに、60歳から62歳までの3年間分の定額部分が「経過的加算」に加えられます。なぜなら、この人の厚生年金定額部分は、基礎年金に流用されるのが23歳から60歳までの37年間にすぎず、定額部分の上限に達するまでの3年分が残っているからです。

 ここから分かるとおり、合算対象期間とされる「第2号被保険者としての被保険者期間のうち、20歳前の期間及び60歳以後の期間」又は「厚生年金保険(船員保険)の被保険者期間のうち昭和36年4月1日以後の期間で20歳前の期間及び60歳以後の期間」(共済組合の組合員等期間も同様)は、国民年金の納付期間としての基礎年金の支給対象期間にはなりませんが、基礎年金とは別口で480月の上限が設定されているものの厚生年金として支給の対象になっているということです(国民年金の被保険者の種類と年金額_2010年10月30日)。ただし、480月という上限がありますので、それを超えた期間については報酬比例部分のみ増えていく程度になってしまいます。

201403_桜花爛漫

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/370-369b0273