労働契約と労働条件の明示

1.労働契約の成立

 私人間の労働契約を考える場合の基本となる労働契約法は、その第6条で「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定められた諾成契約であり、第4条の2項は「労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする。」と規定し、書面による確認は強制力を伴った義務にはなっておりません。

 しかし、実務的には、労働契約法の他に労働基準法その他の労働法に規定された書面による明示義務について、より注意を払わなければなりません。


2.募集時の労働契約の明示義務

 職業安定所等を通じて求人を行う際には、以下の労働契約の内容について明示義務が課せられています(職業安定法第5条の3 1項、2項)。

(1)業務内容
(2)契約期間
(3)就業の場所
(4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える残業の有無、休憩時間、休日
(5)賃 金
(6)労働保険及び社会保険の適用の有無


3.労働契約締結時の明示義務

 労働基準法第15条は、使用者に対して労働条件の明示義務を課し、以下の労働契約の内容については書面の交付によらなければならないと規定しています。また、これらに違反した場合には、30万円以下の罰金が科せられることがあります。

(1)労働契約の期間(期間の定めがない場合は、その旨の明示)
(2)有期労働契約について更新する場合の基準に関する事項(平成25年4月1日施行)
   更新の有無、更新の判断基準(業務量、勤務成績、能力、経営状況、業務進捗状況)
(3)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
(4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える残業の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交代制の場合における就業時転換に関する事項
(5)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもの並びに最低賃金額を除く)の決定、計算及び支払い方法、賃金の締切り及び支払いの時期に関する事項 ← 昇給に関する事項は含まれない。
(6)退職に関する事項(解雇事由を含む)

 労働契約締結時の書面による明示は、雇用形態に係らず全ての労働者に対して行われなければならず、採用決定時に行うのが原則です。ただし、新卒者については、採用の決定から就業開始までの間に明示されるのが実務上の慣行になっており、容認されています。また、明示の方法は、適用部分を明確にして、就業規則を交付することによって行うこともできます。


4.パートタイム労働法に規定された明示義務

 パートタイム労働について、紛争の原因になりやすい次の事項については、パートタイム労働法で労働基準法による明示事項に加えて明示義務が課されており、違反した場合には10万円以下の科料が課されることがあります。

(1)昇給の有無
(2)退職手当の有無
(3)賞与の有無

201401_湯島商店街_IMG_0128

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/351-5bae162e