定額残業手当

1.定額残業手当

 労働基準法に特に定めがあるわけではありません。毎月の残業時間がある程度平均化されている会社において、ある一定時間分の時間外割増賃金を予め手当化し、定額支給する方法と一応は定義できます。この方法が果たして許容されるのかというと、裁判所は許容する見解を述べています。例えば以下のような判例です。

 「労使間で、時間外・深夜割増賃金を、定額として支給することに合意したものであれば、その合意は、定額である点で労働基準法三七条の趣旨にそぐわないことは否定できないものの、直ちに無効と解すべきものではなく、通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある。(徳島南海タクシー上告事件 最高裁 第三小法廷 平成11年12月14日決定)」


2.解 説

 前述の判例でも触れている通り、基準法37条の趣旨にはそぐわない制度です。ですから、その仕組みは隙のないものでなければなりません。判例の挙げている条件にそって考えると就業規則又は雇用契約書に、

(1)定額残業とする時間数
(2)手当の額
(3)定額残業手当の計算方法
(4)不足があればそれも支払うこと

ということを明記する必要があります。

 ここで注意すべきは、第一に、毎月実際に残業が発生していなくても定額残業手当はきちんと支払うということです。仮に30時間分と規定していて、実際には15時間であったとしても、予め定められた金額が支払われなければなりません。第二に、今度はその翌月に40時間残業があった場合、10時間分は定額残業代に不足があるので、その差額分も当然支払うということです。第三に、ということはたとい定額残業手当制を採用したとしても、毎月労働時間を正確に管理し、毎月不足額を精算しなければならない点において通常の残業制度をとった場合と大差はないことを意味します。

 次に、定額残業手当込みで給与を支払う場合には、基本給と定額残業手当の線引きが必要となるわけですが、定額残業手当をどのように計算すればよいのでしょう。厳密には、次の算式で総支給額から逆算する方法を行うべきだと考えられます。

・ 1箇月平均所定労働時間                     … T(160時間)
・ 予め定める1箇月当たりの残業時間              … t(30時間)
・ 総支給額(割増賃金の算定基礎から除外される手当を除く)… A(45万円)
・ 定額残業手当                            … X

        (A-X)÷T×1.25×t=X

(例) (45万円-X)÷160×1.25×30=X  X≒8.55

 その他、定額残業手当を採用した際の注意点は、次の通りです。

(1)同じ業種、役職に対して、一律の金額又は残業予定時間を設定する
 → 社員個人ごとの残業代や残業時間を設定すると「恣意的」とされる可能性があります。
 
(2)評価により増減する手当は定額残業代としない
 → 手当の性質も最近の裁判例では検証されます。

(3)極めて長時間の残業時間をカバーする定額残業代の設定は避ける
 → 36協定の範囲内で設定するのは当たり前のことです。


3.年俸制の場合

 年俸制は、賃金の一部をみなし残業代とする定額残業手当制度と比較的相性がよいと見ることができます。厚生労働省は、年俸制の場合のみなし残業代について次のような通達を出しています。

(1)年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが明らかなこと
(2)割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する部分とに区別することができること
(3)割増賃金相当部分が法定の割増賃金以上に支払われていること

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