年金記録問題の現状

 およそ5000万件の誰のものかわからぬ宙に浮いた年金記録があるということが発覚した、いわゆる年金記録問題が世間を騒がせたのは、平成19年(2007年)2月のことでした。以来、年金特別便及び定期便の送付、社会保険庁から日本年金機構への改組、オンライン上の記録と紙台帳との突合せなど記録解明のための一連の措置が実施されてきました。

 日本経済新聞電子版等の報道によれば、厚生労働省の特別委員会は20日、「消えた年金」5000万件超の記録解明作業の経過について報告書案を公表しました。これは、政府が平成22年度(2010年度)から25年度(2013年度)を記録解明のための集中作業期間と位置付けていて、集中作業期間が今年度を以って終えるのを期に、節目の報告書をとりまとめたというものです。

 特別委が発表した報告書案によると、2013年9月時点で解明できたのは2983万件。うち1738万件は記録の統合が終わり、年金保険料を納付している人が年金を適正に受給できるようになり、1245万件は持ち主の死亡などを確認でき、解明作業に目途がついたとしています。一方、解明できていない記録は、2112万件で全体の4割に及ぶとのことです。このうち、海外に移住しているケースなど「手がかりがいまだつかめていない記録」が927万件。国から郵便などで確認を促したが、回答が無く持ち主が判明していない記録も863万件にのぼったとされ、報告書は、解明作業が限界に近づいているとの認識を示唆しているようです。

 また、これまでに年金記録問題に費やした予算は約4013億円に上り、記録訂正で年金額が回復した人は約269万人、年金の回復額は計1.9兆円になるとのことです。

 年金記録「解明には限界」…回復額は1.9兆円(読売新聞電子版)

 結局この問題は、「由らしむべし。知らしむべからず。」という言い回しに行き着くのだと個人的には思っています。この言葉は、時代劇などに出てくる権力者が、民にはけっして本当のことは伝えず、お上を頼って命令に従わせる状況にしておくのがよいのだという悪い意味の台詞として使われることが多いのですが、本来の意味は、権限のある者が正しい政治なり、経営なりを行ってこの人がやることならば間違いはないだろうと民や社員に信頼してもらうことは可能である。しかし、(いくら情報公開をしたとしても)やることなすことを全ての人に理解してもらうことは不可能だということのようです。つまり、「べし、べからず」は、当然ではなく、可能の意味であるとする読み方です。

 旧社会保険庁は、幾度かの法改正を経て、素人にはとてもわかりづらくなっている国の年金制度を運営するに当たり、全ての被保険者及び年金受給者を「由らしむ」ことができたのに、一部不心得者のずさんな経営と作業によって信頼を失墜し、「由らしむべからず。」の状態を作ってしまいました。年金記録解明の一連の作業は、何とか信頼を回復するために「知らしむべし。」を試みているのですが、それは、元々不可能なことです。一度崩れた信頼を取り戻し、「由らしむべし。」の状態を確立するためには、それなりの時間がかかると覚悟すべきなのでしょう。

201309_年金記録問題の現状

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