1票の格差

1.「1票の格差」最高裁判決

 本日15時頃に、昨年12月に実施された衆院選挙に関するいわゆる「1票の格差」についての最高裁による憲法判断が示されることになっています。

 「1票の格差」訴訟とは、衆議院小選挙区制などで選出される議員1人当たりの人口(有権者数)が選挙区によって違うため、人口(有権者数)が少ない選挙区ほど有権者1人の投じる1票の価値は大きくなり、逆に、人口(有権者数)が多い選挙区ほど1票の価値は小さくなっていると考え、憲法第14条に規定された法の下の平等に反するとして提起されている訴訟のことです。

 最高裁判所は、これまで2倍を超えても合憲判決が出されることが多く、著しい格差のみ違憲ないしは違憲状態との判決が出されています。投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態が「違憲状態」であり、これが合理的な期間内に是正されない場合に違憲とされます。ただし、定数配分を違憲ないし違憲状態とする判決においても、事情判決の法理によって選挙そのものは有効とされているようです。すなわち、「今回は大目に見ますが早く是正措置を取りなさいよ」という警告が「違憲状態」判決であり、明確に憲法に反し、本来は選挙無効やり直しとなるはずなのが「違憲」判決ですが、その間に「違憲だが、当該選挙に限って有効性を認めます」というのがあり、その根拠として使われるのが「事情判決の法理」(註)というものです。

(註)事情判決とは、行政処分や裁決が違法だった時、裁判所はこれを取り消すのが原則だが、「取り消すと著しく公益を害する(公共の福祉に適合しない)事情がある場合」には請求を棄却できるという行政事件訴訟法上の制度のことです。「1票の格差」訴訟においては、事情判決の規定の適用ではなく、事情判決の法理を用いるという形で「違憲であるが、選挙自体は有効」と判断することが行われています(最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決など)


2.1票の格差問題をどう考えるか

 1票の格差を判断する基準が、およそ2倍とされています。そもそも、格差の計算で、(1)選挙権のない未成年者も含めた全人口で計算するのか、(2)有権者のみで計算するのか、(3)有権者の中で投票所に出かけて権利を行使した票数で計算するのか、国により考え方が分かれます。それはさておき、平等原則を突き詰めていくと格差をなくすことを目指してひたすら区割りを見直すか、国会議員の選出は大選挙区完全比例代表制にするという極論に行き着きます。しかし、前者については、実務的に非常に困難が伴うことが予測されます。つまり、人口動態に合わせて選挙区を見直すたびに国会議員本人は言うに及ばす、地域住民の利害関係がその都度ぶつかり合うことになり、そもそも必要のない対立の種を蒔いて歩くような結果になりかねません。また、後者の大選挙区完全比例代表制というのは、国会議員は地域の代表ではなく、国政を議論するのが本来の仕事であるのだから、それでよいのだという主張は論理的には成り立ちうるとは思います。しかし、国会が1億人を超える日本国民の様々な利害対立を調整する議論の場であることを勘案すると、大選挙区比例代表制はあまりに雑で、伝統を無視した机上の空論のように思えてなりません。

 1票の格差は、国の代表であると同時に地域代表を選出するという性格を併せ持つ小選挙区制及び中選挙区制を取る限り、必ず生じてきます。しかも、一般的には、東京や大阪のような人口を引き寄せる大都市の1票の価値は、人口減少傾向の強い過疎地に比べ、年月を経過するに従い相対的に薄まるという現象です。そこで、ただでさえ、経済力で大都市に太刀打ちできない地方都市、さらには過疎の村の住民が、それを補う意味で相対的に高い価値の1票をもっていたとしても、あまりに非常識な格差でない限り、目くじらを立てるなという議論も成り立ちます。

 かつて、大都市住民から徴収した税金を地方にばら撒いて票を買うという行為が象徴的に視覚化されて、公共投資無駄論と併せ世間の批判を受けたこともありました。しかし、国土全体を見渡して、どんな過疎地域も見捨てずに国土の均衡的な繁栄に留意していくことは、第一義的に重要なことです。無駄を省くと称して、地方を切り捨ててしまうことは、地方自治の理念からも到底許容されるものではありませんし、そもそも国土の保全が徐々にできなくなっていくおそれが高まります。

 論点からずれましたが、区割制の下で「1票の格差」問題を突き詰めて行くと、論理的にも実務上も様々な問題が生じる可能性が高く、誰もが非常識と思えるような大きな格差が生じていない限り、許容して行くという結論にならざるを得ないと思います。問題は、「誰もが非常識と思えるような大きな格差」に結構な幅があるということです。個人的には、曲がりなりにも選挙で選ばれた立法府に対する司法府の介入は最小限度にすべきと思量します。また、過疎地の選挙区の1票の価値が東京の3倍~4倍くらいであったとしても問題にならないかもしれませんが、逆に東京の価値が過疎村の1票より価値が高かったら、2倍であっても非常識と判定すべきかもしれません。


(補足)2013年7月14日参院選 無効判決
参院選 初の無効判決 今年7月 一票格差、違憲 高裁岡山支部

東京国立博物館

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