就業規則の不利益変更_住宅手当の廃止

1.住宅手当、家族手当の廃止

人事管理制度を総合的に見直していく流れの中で、住宅手当や家族手当を見直し、廃止することがあります。この際も各労働者と個別に労働契約の中身の変更を交渉するのではなく、就業規則の変更によって統一的、画一的に行うというのが人事管理制度の見直しということの性質上通常行われる方法だと思われます。

仮に手当てを廃止した代償措置として手当相当額の賃金を補償する場合、不利益変更の問題は起こりません。しかし、諸手当の廃止は、不利益変更に当たる場合が通常でしょう。従って、繰り返しになりますが、第四銀行事件判決で述べられた「合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって①労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、⑤労働組合等との交渉の経緯、⑥他の労働組合又は他の従業員の対応、⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。」の基準又は労働契約法第10条の基準に当てはめて合理性が認められる内容にしておかなけらばなりません。

労働者が被る不利益の程度は、個別の労働者について、廃止する手当の額が賃金全体に占める割合を勘案し、この割合が過大であるときには、他の激変緩和のための移行措置又は手当の新設などの代償措置が必要と考えられます。また、労働組合等との交渉を通じての労働者との協議はきわめて重要で、もし合意に至ることができれば、合理性が認められる可能性は高くなると考えられます。

ここで注意が必要なことは、住宅手当及び家族手当は、時間外割増賃金の計算根拠になる賃金に参入しなくてよい諸手当となっているのですが、代償措置として基本給の増額又は新設手当などを行った場合、これらが時間外割増賃金の算定基礎に含まれてくる可能性が高いことです。住宅手当及び家族手当等の廃止措置は、このようなことも考慮して人事管理制度全体の総合的な見直しの中で行われるべきです。

割増賃金算定の基礎に参入されない諸手当(限定列挙)

(1)家族手当
(2)通勤手当
(3)別居手当
(4)子女教育手当
(5)住宅手当
(6)臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金など)
(7)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)


2.算入されてしまう住宅手当

労働基準法の適用は、現象の名称などよりもその中身に注目して実態的に判断する傾向が強いです。住宅手当も割増賃金の基礎に算定しないためには、実質的な住宅手当を支給していると認められる場合です。どういった住宅手当の仕組みが住宅手当と認められない場合かというと、持家居住者及び賃貸居住者に分けて一律に支給している場合、扶養家族の有無で一律に支給している場合などです。

住宅手当は、本来「住宅に要する費用に応じて支給する」ことがその趣旨です。従って、実際に住宅に費用がかかっている従業員対して支給する制度にすることが重要です。

とここまで書いて思ったことは、たとい持家所有者で、ローン完済の者であっても固定資産税は必ず課税される費用です。また、集合住宅の場合、管理費及び修繕費などの費用は家賃と同じように毎月かかってくるものです。こういったものまで勘案して住宅手当に含めるとなると、通勤手当などと違い実質的に住宅にかかった費用を見ていく場合、どこまで広げていいのか訳がわからなくなる可能性が高くなるため、やはりどこかで線引きしなくてはならなくなります。しかし、それでは住居を賃貸にするか持家にするか、親から相続したものか新たに購入したものかなどによって何らかの不平等の問題を抱えることになります。結局はこういった属人的な手当は廃止の方向に向かわざるを得ないのかな、という印象を持ちました。

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