雇用規制緩和特区、断念へ

 先日、安倍政権は、有期雇用の労働者が同じ企業で5年を超えて働いた場合、希望すれば期限の定めのない雇用契約に切り替えることを企業に義務づけた労働契約法について、非正規で雇用できる期間を10年にまで更新できるよう「変更」を目指すとして、改正されたばかりの労働契約法の「変更」を目指す方針を固めたという報道が流れました。

 しかし、この有期労働契約の無期労働契約への転換権を定めた18条については、使用者側が5年を超えて有期労働者を雇用することに慎重になり、かえって有期労働者の権利が損なわれることになりはしないかと危惧されていました(改正労働契約法 改正18条をめぐって_その2)。有期雇用で雇用できる期間を5年から10年の更新まで延長するということの中には、このような意味合いも含まれてはいたのでしょうが、何やら本末転倒した議論のように感じてしまいます。

 また、本日の読売新聞が伝えるところによれば、「政府は16日、成長戦略の柱に位置づける「国家戦略特区」で導入する規制緩和について、焦点となっていた「解雇ルール」など、検討してきた雇用に関する全3項目を見送る方針を固めた。」とのことです。地域を限定して大胆に規制緩和を進める「国家戦略特区」での緩和項目を巡っては、政府の国家戦略特区ワーキンググループが選定作業を進めてきた模様です。

 雇用に関する3項目とは、

(1)労働者と経営者間で解雇の条件を事前に契約書面で決める「解雇ルールの明確化」
(2)有期契約で5年超働いた労働者が本来、無期契約を結べる権利をあらかじめ放棄できる「有期雇用の特例」
(3)一定水準以上の収入がある人の残業代をゼロにできる「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を視野に入れた「労働時間ルールの特例」

の3項目であり、外国企業や新興企業が進出しやすくすることが目的とされています。

 しかし、(1)についていえば、我が国における「解雇権濫用法理」は、共同体的社会の成立ちや強い同朋意識など歴史的な背景をも基礎にして生み出された我が国固有の規範であり、そのような背景を有すると思われる「解雇権濫用法理」をなし崩し的に放棄してよいものか、という問題が即座に想起されます。

 また、(2)の有期雇用の期間制限は、企業が労働者にとって不安定な有期雇用契約を安易に選択することを牽制し、できる限り期限の定めのない正規雇用の労働を増やしていこうというのが本来の法改正の趣旨であったはずです。(3)の「ホワイトカラー・エグゼンプション」については、ただでさえサーヴィス残業が社会問題になるような我が国の労働慣行及び土壌において、制度が導入されれば残業代なしで労働者に長時間労働を強いることになりかねないとの懸念が根強くあります。

 こうした中、政府は10月16日、成長戦略の柱に位置づける「国家戦略特区」で導入する規制緩和について、焦点となっていた雇用に関する全3項目を見送る方針を固めました。いずれも労働者の権利保護を掲げた労働契約法などを根本から覆す内容で、「労働規制は全国一律でなければ企業競争に不公平が生じる」などと反発してきた厚生労働省などの主張に配慮した結果のようです。

 ところが、この読売新聞の報道は、片手落ちでNHKによれば、
「政府は、大胆な規制緩和を行う『国家戦略特区』の創設にあたって、雇用分野も対象にすることを検討してきましたが、全国一律の規制を求める厚生労働省が難色を示していたことから、安倍総理大臣や新藤総務大臣ら関係閣僚が、16日会談し、対応を協議しました。その結果、企業の競争力を強化するためには、雇用分野の規制の緩和を進める必要があるとして、当初の方針を転換して、国家戦略特区ではなく、全国一律に規制緩和を進める方針を確認しました。」ということのようです。

 要するに、アルバイトや契約社員などの非正規雇用として10年間は労働者を雇うことができるように法改正を目指す方針を政府を固めたこと、これが真相のようです。

非正規雇用から正社員になる上限、5年から10年に延長へ

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