傷病手当金_資格喪失後の継続給付

5.傷病手当金とその他の公的給付

(1)傷病手当金と障害年金又は障害手当金との調整

 同一の傷病により厚生年金保険法による障害厚生年金又は障害手当金が支給されるときは、1年6箇月経過していない場合でも傷病手当金の支給が打ち切られます。ただし、1日当りの傷病手当金の額が障害厚生年金(同時に障害基礎年金が支給される場合は合算額)の1日当りの額(360分の一)より多い場合は、その差額が支給されます。一方、障害手当金の支給を受けたときは、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

 同一の傷病により国民年金法による障害基礎年金のみ支給される場合は、傷病手当金は同時に支給されます。また、同一の傷病によらない障害厚生年金と傷病手当金は、同時に受給できます。

(2)傷病手当金と老齢退職年金給付との調整

 資格喪失後に傷病手当金の支給を受けるべき者(「6.資格喪失後の継続給付」参照)が、老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付(老齢退職年金給付)の支給を受けることができる時は、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢退職年金給付の1日当たりの額(360分の一)と傷病手当金の日額を比較し、支給される老齢退職年金給付の額が傷病手当金の額を下回る場合には、その差額が支給されます。

(3)傷病手当金と休業(補償)給付との調整

 業務上の負傷又は疾病等が原因で労災保険の休業(補償)給付を受けているときに、業務外の事由による傷病がもとで労務不能になっても、傷病手当金を受給することはできません。ただし、1日当りの傷病手当金の額が休業(補償)給付の1日当りの額より多い場合は、その差額が支給されます。

(4)傷病手当金と出産手当金との調整

 健康保険法による出産手当金を支給する場合(通常出産の日以前42日から出産の日後56日)、その期間中の傷病手当金は支給されません。また、出産手当金を支給すべきところ、傷病手当金が支払われている場合には、支払われた傷病手当金を出産手当金の内払いとみなすことになっています。


6.資格喪失後の継続給付

 会社を退職し、健康保険の被保険者資格を喪失すると傷病手当金は、原則として受給できません。ただし、被保険者の資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている者は、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。これを資格喪失後の継続給付と言います。

資格喪失後の継続給付を受けるための要件は次の通りです。

(1)退職日に健康保険の被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の被保険者期間は含みません)が継続して1年以上あること
(2)退職時に傷病手当金を受給しているか受給要件を満たしていること
(3)退職日以前及び退職日以後も継続して傷病により労務不能状態が継続していること
(4)退職時に傷病手当金の支給が開始されてから1年6箇月未満であること

 退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は、会社を退職して健康保険の資格を喪失し、保険料を支払う必要がなくなったあとも引続き保険給付として受給できる現金給付です。最低限1年間の保険料を支払えば、退職後は保険料を支払わなくても、退職後でも支給開始から最長1年6箇月も受給できる制度です。

 資格喪失後の継続給付制度は、退職した会社在籍中の健康保険の給付の一種として、退職後も引続き受給できる保険給付であるため、傷病手当金支給申請書の記号・番号欄には、在職中の健康保険証の記号・番号を退職後も記入する必要があります。

 なお、資格喪失後の継続給付制度は、以前には(1)任意継続被保険者にも適用され、(2)資格喪失が6箇月以内に出産した者に対する出産手当金も支給されていましたが、平成19年4月にいずれも廃止されていますので注意が必要です。


7.傷病手当金と役員

 健康保険では、社長及び役員が被保険者となることができます。なお、社長及び役員は労働基準法上の労働者ではありませんので、失業保険及び労災保険の被保険者となることは、原則としてできません。

 社長や役員の場合でも支給要件を全て満たせば、傷病手当金を受給することができます。ただ、社長や役員は役員報酬が定められており、通常は私傷病での欠勤があっても役員報酬が支払われますので、「待期後、同一傷病での労務不能により、報酬の支払がない日があること」が問題となります。

 そのため、「私傷病による欠勤がある場合は役員報酬を支給しない」旨を取締役会で決議し、傷病手当金支給申請書を保険者(「協会けんぽの都道府県支部」又は「健康保険組合」)に提出する際に、その取締役会の議事録の写しを添付する必要があります。


8.傷病手当金の不支給処分に対する対応

 傷病手当金の申請に対して、「不支給決定通知書」が来る場合があります。この処分に不服がある場合には、処分を知った日から60日以内に各都道府県に配置されている社会保険審査官に対し、「審査請求」を行います。

 「審査請求」でも原処分(不支給処分)が取り消されず、不服がある場合には東京に設置されている社会保険審査会「再審査請求」を行います。


9.メンタルヘルス関連

 事業場におけるメンタルヘルスの問題が大きく取り上げられる昨今です。うつ病を罹患する従業員も珍しいことではなくなりました。メンタルヘルス対策は、予防の観点が第一義的に考慮されるべきですが、実際にうつ病などの罹患者が労務に服することができなくなる場合も想定して、労災保険又は傷病手当金の適用なども含めた総合的な対策を構築しておく必要が出てきているのかもしれません。メンタルヘルスの問題は、これからの労務管理において看過できない重要な課題の一つになってきている気がします。

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