国民年金及び厚生年金保険制度の薀蓄集5

 記録的な猛暑続きの今夏です。今週月曜日には四国西土佐で日本最高気温を更新する41度を記録したとの報道が全国を駆け巡りました。暑い暑いお盆休みの中、久々に国民年金及び厚生年金保険制度の薀蓄集シリーズです。シリーズ3(2012年3月15日)で既に同月得喪について書きましたが、そのときに触れられなかった点について解説したいと思います。


1.同月得喪

 厚生年金保険の被保険者期間の計算方法は、その資格を取得した月から喪失した月の前月までが被保険者期間です。ですから、60歳未満の被保険者が、月中に(=月末以外に)退職した場合、退職月は被保険者期間に算入されません。国民年金についても、その月に再就職しないでいた場合、当該退職月は2号被保険者ではなくて1号被保険者ということになります。

 この原則には、例外があります。それが、同月得喪で、同一月内に厚生年金保険の被保険者資格を取得して喪失した場合、その月を1箇月として厚生年金保険の被保険者期間に算入します。

 厚生年金保険法の条文に当たって詳細を確かめておきましょう。

19条2項 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一箇月として被保険者期間に算入する。但し、その月にさらに被保険者の資格を取得したときは、この限りでない。

 さて、この19条2項が何を言っているかということです。あたり前のことですが、この条文が厚生年金保険法の条文であることからして、同月得喪した月は厚生年金の被保険者期間1箇月とみなすといっているだけです。換言すると2階部分の話をしているだけで1階の話は一切していないということです。ちなみに、3階部分の厚生年金基金の加入員資格については同月得喪の例外がありませんので、1箇月にはなりません。

 次に考えなければならない点は、2階部分で被保険者期間1箇月とみなした期間は、必然的に1階の2号期間となるのかということです。ここで、国民年金の保険料納付済み期間の定義を復習しておきましょう。保険料納付済み期間とは、国民保険第1号被保険者期間の内保険料納付済み期間(部分免除期間を除く)、第2号被保険者期間(厚生年金被保険者期間ではない)及び第3号被保険者期間を合算した期間のことです。そこで、厚生年金の同月得喪の期間を見ていくと、この期間は第2号被保険者資格を月中で一旦喪失して新たに別の被保険者資格を取得すべき期間です。被用者年金適用会社等に再就職すれば、再び第2号被保険者となり、あるいは第2号被保険者の配偶者となれば第3号被保険者ですが、どちらにも該当しなければ、必然的に第1号被保険者となります。

 この状態で、第1号被保険者へ種別変更手続を行うと当該月は、その月の最後の種別の被保険者であったものとみなされます。国民年金法11条の2をみてみましょう。

11条の2 第一号被保険者としての被保険者期間、第二号被保険者としての被保険者期間又は第三号被保険者としての被保険者期間を計算する場合には、被保険者の種別(第一号被保険者、第二号被保険者又は第三号被保険者のいずれであるかの区別をいう。以下同じ。)に変更があつた月は、変更後の種別の被保険者であつた月とみなす。同一の月において、二回以上にわたり被保険者の種別に変更があつたときは、その月は最後の種別の被保険者であつた月とみなす。

 適切に種別変更手続を行って、国民年金保険料も納付しておけば問題はないのですが、手続を失念して放っておいた場合が問題です。この場合も強制加入ですから、第1号被保険者で未納期間となってしまいます。そうです、同月得喪のこの1箇月は、厚生年金保険料の被保険者期間であるのと同時に国民年金第1号被保険者であり、国民年金保険料を別途納付ておかないと未納期間となってしまうのです。つまり、厚生年金保険の年金額の算定では1箇月ですが、受給資格期間の算定では未納期間(=0箇月)として扱われる期間が存在することとなります。


2.学生納付特例制度

 学生納付特例制度とは、所得がない学生が、学生時代の未納が原因で将来受給する老齢年金等の受給資格期間を満たさなくなることや学生時代に不慮の事故等により死亡したとき又は障害が残ったときに遺族基礎年金又は障害基礎年金が受取れなくなることなどを防止する観点から、学生本人の申請により国民年金保険料の納付が猶予される制度のことです。

 この制度は、一般の保険料免除制度とは異なり、世帯主の所得が高くても当該学生の所得だけを判断材料にして、所得が少ない場合(所得118万円 + 扶養親族等の人数 × 38万円以下が目安)には制度の対象となります。学生で国民年金保険料納付困難者は、この学生納付特例制度のみ利用可能で、他の免除制度を利用することはできません。

 学生納付特例期間は、一般の保険料免除制度とは異なり、将来受ける年金の受給資格期間には算入されますが、年金額の算定には反映されません。そこで、学生納付特例制度が承認された期間の保険料は、10年以内であれば、古い期間から順次納付することが可能です。

 ただし、学生期間であっても一般の免除を受けたのと同様の記録を保持する方が存在します。これは、学生の強制加入が開始された平成3年(1991年)4月に、学生納付特例制度が同時に開始されておらず、平成12年(2000年)4月からの開始であるため、9年間の空白期間があり、この期間には「学生免除」という制度が存在していたためです。この制度は、現在の全額免除(申請免除)と同様の効果がありましたが、学生納付特例制度の成立により消滅しました。

上野池之端Lotus(2013年)

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