同居の親族と労働者性

 同居の親族とは、事業主と生計を一にする民法上の親族、すなわち、6新等内の血族、配偶者、及び3親等内の姻族を指します。労働基準法は、雑則を定めた第12章の第116条2項で「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」と謳っています。ところで、この同居の親族の労働者性について、法律により、その扱いが微妙に異なる場合があるように感じます。改めて基本を整理しておきたいと思います。


1.労働基準法と同居の親族

 労働基準法は、前述のとおり「同居の親族のみを使用する事業」には適用されないと謳い、原則として適用労働者(事業に使用され、賃金を支払われる者)に含めていないのです。ただし、条文によれば、事業については、同居の親族のみを使用していることが要件になっています。従って、同居の親族の他に1人でも他人を使用していれば、その事業所は労基法が適用されることになります。その上で、同居の親族は、労働者性が否定され、他の1人だけが労基法上の労働者ということになるのが原則です。

 ところが、当該同居の親族が、他の1人の労働者と同様に一般事務又は現場作業に従事し、事業主の指揮命令の下にあり、就業の実態が他の1人の労働者と変わらない場合には、例外的に労基法適用の労働者となります。


2.労働保険と同居の親族

 基本的に労働保険は、労基法に準じて考えていけばよいと思われます。まず、労災保険については、労基法と同様で、原則適用除外ですが、例外的に適用労働者となります。具体的には次のような基準で判断します。

(1)業務を行うにつき、事業主の指揮命令下にあることが明確なこと
(2)就労の実態が、当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締切り及び支払いの時期等について就業規則その他で定められ、他の労働者と同様に管理されていること。

 次に、雇用保険ですが、原則として被保険者にはなりません。例外的に適用労働者となるためには、次のような要件を満たし、その上で公共職業安定所に適用の実態が確認できる書類を提出しなければなりません。

(1)業務を行うにつき、事業主の指揮命令下にあることが明確なこと
(2)就労の実態が、当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締切り及び支払いの時期等について就業規則その他で定められ、他の労働者と同様に管理されていること。
(3)事業主と利益を一にする地位(役員等)にないこと

 ここで、注意しなければならない点は、いかに実態が上記のような要件に合致していたとしても、他に1人の労働者も雇用していない事業では、労働者性を認めることはできず、従って、労働保険の適用は端から考えられないということです。


3.労働契約法と同居の親族

 さて、そこで労働契約法はどうなっているかというと、第22条2項で「使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については、適用しない」と謳っています。

 同条1項は、そもそも労働契約が成立していない公務員への適用除外を謳っている確認規定に過ぎないので、この法律が実質的に適用されないのは、「使用者が同居の親族のみを使用する場合」だけということです。このことは、また、労基法が同居の親族と並んで適用除外としている「家事使用人」についても、使用従属の関係と報酬の労務対償性から判定して、労働契約法2条に該当する者であれば、労働契約法は適用されるということを意味します。


4.社会保険と同居の親族

 労働保険とは異なり、あまり問題になってくることはないと思われます。まず、法人事業所の場合ですが、社長1人だけの株式会社であっても、その社長は、法人から雇われているとみなされて、社会保険の被保険者になるのが社会保険の論理です。同居の親族であっても、賃金等報酬を受取って働いている限り、被保険者になりえます。

 次に、個人事業の場合ですが、従業員5人以上の事業所には社会保険が適用され、従業員5人未満の個人事業には適用されないのが原則です。この点を押さえた上で、社会保険が適用される個人事業において、事業主本人はあくまでも使用者であって、被用者ではありえません。しかし、同居の親族は被用者たりえますので、被保険者になると考えられます。

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