海外勤務者に関する労働保険、社会保険制度の適用

1.出張の場合は国内勤務と同様

 社員を海外に派遣する場合、短期的な滞在で、引続き日本からの指揮命令の下勤務していることが明らかなとき、この勤務形態は「出張」とみなされ、日本の労働基準法が適用されます。出張となると、日本における雇用関係がそのまま継続され、日本で加入している労働保険及び社会保険がそのまま適用されます。従って、業務上の事故で負傷した場合などは、日本から労災保険の給付が受けられます。


2.出張とはみなされない場合

 滞在期間が比較的長く、かつ、現地の企業から直接指揮命令を受ける場合には「出向」とみなされます。ただし、日本の会社に席を置いたまま現地企業に勤務するとき、日本の親会社などから直接本人に給与が支払われる限り、日本の健康保険、厚生年金、雇用保険が継続します。

 労災保険は、実際に指揮命令を行う使用者の責任を担保するものなので、日本からの直接の指揮命令を離れている出向者については、適用がなくなります。ただし、在籍出向の場合には、海外派遣者の特別加入制度(第三種特別加入:註1)が利用できます。また、転籍出向の場合、日本の会社との雇用関係がなくなり、日本の労働保険・社会保険の資格を喪失することになります。

 なお、海外支店の支店長又は現地法人の代表など事業主として派遣される場合特別加入は可能です。ただし、派遣先の事業場が中小規模であることに加えて、代表者以外に労働者を雇用している必要があります。


3.社会保障協定

 既に述べたような実質的な基準のほか、我が国は既に世界14箇国と社会保障協定を締結しており、これらの締結国との間では、当該協定に基づいて社会保障の適用あるいは不適用が判断されます。社会保障協定とは、主に年金制度を念頭に、社会保険制度への国境をまたがる二重加入の防止及び保険料の掛け捨て防止を目的として2国間の協定に基づいて発効する制度です。社会保障協定を締結した2国間では、就労地である国の制度が優先され、原則として就労地の制度にのみ加入することになります。但し、例外的に一時的な派遣の場合には、派遣元の国の制度にのみ加入することとしています。原則で行くか例外措置になるかの分かれ目の目安は、5年とされています。

 この5年基準の運用は極めて弾力的で、5年以内の予定で日本の制度にのみに加入していたが、予測できない事情により派遣期間が5年を超えてしまった場合、5年を越えてしまった時点で協定相手国の制度に加入し、日本の制度から抜けることになります。しかし、例外的に両国の合意が得られれば、引続き日本の制度にのみ加入し続けることも可能です。逆に当初5年超と見込まれて、協定相手国の制度に加入し、日本の制度については加入免除となっていたにもかかわらず、予定より帰国が早まり、5年以内になったとしても、その期間はそのまま協定相手国の制度に加入し、日本の制度は加入免除の期間とされます。

 なお、5年以内の派遣で派遣元の国の制度にのみ加入し協定相手国の制度への加入免除を受けるためには、派遣前に事業主と本人が年金事務所に「適用証明書交付申請書」を提出し、審査を受けます。審査の結果申請が認められた場合には、「適用証明書」が交付されます。

 
4.自営業者と社会保障協定

 社会保障協定の仕組みの原則は、自営業者にも適用されます。つまり、日本の自営業者が協定相手国で自営業を5年以内で行う場合には、引続き日本の社会保障制度に加入し、協定相手国の社会保障制度加入は免除されます。協定相手国で自営業を営む期間が5年を超えている場合には、協定相手国の社会保障制度に加入し、日本の社会保障制度加入は免除されます。ただし、日本で自営業を営んでいなかったものが、新たに協定相手国で自営業を開始する場合には、協定相手国の社会保障制度に加入することになります。


(註1)第三種特別加入
 海外の別会社に出向させた場合、国内の労働関係法令は適用されないため、原則として現地の労働法規が適用されます。しかしながら、労災保険については派遣される従業員の不利益を避けるため、「特別加入」という制度が設けられています。(労働者災害補償保険法第33条第6、7号)

(註2)厚生年金特例加入制度
 2013年3月1日より、これまでも有効だった英国だけでなく、全協定締結国について、協定相手国の年金制度に加入していても、日本の厚生年金制度(企業年金を含む)にも加入し続けることができるようになりました。

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