年金機能強化法の施行に関する政令公布

 平成24年8月10日の消費税引上げ法案可決、成立に伴い、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金機能強化法)という長い名前の法律が国会で成立し、同月22日に公布されました。同法の目玉は、なんと言っても平成27年10月施行分、即ち、消費税が10%に引上げられることを前提に、受給資格をこれまでの25年から10年に大幅に短縮することが規定されていることでした。しかし、この法案の中には、公布の日から2年以内で政令の定める日に施行されるとした改正点がいくつか盛込まれておりました(年金機能強化法の内容_平成24年9月2日)。今月始め件の政令が公布され、施行日は平成26年4月1日と決まりましたので、その内容について確認しておきたいと思います。


1.老齢年金の繰下げ支給に係る支給開始時期の見直し

 65歳から支給される老齢年金は、70歳まで繰り下げることができます。5年間繰り下げると42%(1月当たり0.7%)増額になりますが、それより後に申出を行っても42%以上に増額されることはありません。それにもかかわらず支給は申出のあった月の翌月以降の年金からという取扱いになっていたのです。これが、平成26年4月1日以降は、70歳時に遡って申出があったものとみなされ、70歳到達月の翌月分から支給されることになりました。


2.国民年金の任意加入者の保険料未納期間の合算対象期間への算入

 基礎年金制度導入前の被用者年金加入者の配偶者(いわゆるサラリーマンの妻)、基礎年金制度導入後の海外在住者、平成3年3月以前の20歳以上の学生などで任意に国民年金制度に加入の手続きをとっておきながら保険料を支払わなかった場合、これらの期間は未納期間になるので、合算対象期間とはされませんでした。しかし、平成26年4月1日以降は、任意加入しておきながら未納になっている期間が合算対象期間とされることになりました。従って、法改正により受給資格期間を充たし、新たに年金受給者となるものは平成26年4月からの年金を受給することになります。


3.障害年金の額改定請求に係る待機期間の緩和措置

 障害年金の受給者で障害の程度が進んでしまって増額改定請求をした場合、この改定請求が認められないときには、事務負担等を考慮し、1年間の待機期間が設けられています。しかし、明らかに障害の程度が増進したことが確認できる場合には、1年間の待機期間を経ずに再請求できることになりました。再請求できる場合の具体的な事例は、省令等で別途定められることになりました。


4.特別支給の老齢厚生年金に係る障害特例の支給開始時期の見直し

 特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢に達しており、かつ障害等級1級から3級の該当者については、本人からの請求があれば、請求月の翌月から定額部分の支給も開始することになっています。しかし、障害年金受給権者については、障害等級1級から3級の障害状態が固定した日又は初診日から1年6箇月が経過し障害状態にある日(特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢以前から障害状態にある場合には、支給開始年齢到達時)に遡って障害特例による支給を行うことになりました。


5.未支給年金の請求権者の範囲拡大

 年金受給権者が死亡した場合、死亡月分の年金については、受取人がいないこととなりますが、当該年金受給者と生計を同じくしていた一定範囲の親族に限り、年金の一身専属権の例外措置として、当該親族が「未支給年金」として年金を請求する権利を有するとされています。

 平成26年4月1日以降は、未支給年金を請求できる親族の範囲が「生計を同じくする2親等以内の親族」から「生計を同じくする3親等以内の親族」にまで拡大され、甥、姪、子の配偶者、伯父(叔父)、伯母(叔母)、曾孫、曾祖父母等が新たに請求権者として加えられることとなりました。


6.国民年金保険料免除期間に係る保険料の取扱い

(1)国民年金保険料を前納した後に法定免除に該当した場合、又は申請免除が承認された場合に、既に納付された前納保険料のうち法定免除該当日又は申請免除申請日の属する月分以後の保険料について、還付手続が可能になります。

(2)障害基礎年金の受給権者になったときなど、遡及して法定免除に該当した場合、法定免除該当日後に納付されていた保険料は、有無を言わさず還付される取扱いになっていましたが、本人が希望する場合には還付手続を行わず、当該期間を保険料納付済期間として取り扱うことができるようになりました。

(3)法定免除に該当した後に、将来の年金受給資格確保のために、保険料の納付を希望する者については、申出をすることによって保険料を納付することも可能になりました。


7.国民年金保険料の免除に係る遡及期間の見直し

 申請免除等の遡及期間について、申請時点の直近7月までしか遡ることができないことになっていましたが、平成26年4月1日より、保険料の徴収権について消滅時効が成立していない過去2年分について遡及して免除されることが可能になります。なお、学生納付特例制度、若年者納付猶予制度についても、申請免除同様に過去2年分遡及して免除されることが可能になります。


8.付加保険料の納付期間の延長

 任意加入である付加年金の保険料については、納期限の翌月末日までに保険料が納付されなかった場合には、加入を辞退したものとみなされ、その後の納付はできないことになっています。しかし、実務では国民年金保険料と付加保険料の納付は一体的に行われていて、別々の扱いは被保険者の皮膚感覚になじまないため、国民年金保険料の納付と同様に過去2年分遡って納付できることになります。


9.産休期間中の保険料免除及び従前標準報酬月額の特例

 産前産後休業の取得者に対し、育児休業同様の配慮措置が講じられることになりました。すなわち、産前6週間(多児妊娠14週間)、産後8週間のうち、被保険者が労務に従事しなかった期間の厚生年金保険料が免除されます。また、産前産後休業終了後に育児等を理由に報酬が低下した場合に、次回の定時決定のときまで保険料負担が改定前の標準報酬月額により算定されることになるのを避けるため、育児休業終了時改定と同じ発想で産前産後休業終了後の3箇月の報酬月額を基に標準報酬月額を改定する制度を設けます。


10.所在不明の年金受給者に係る届出制度創設

 年金受給者の所在が明らかでない場合に、年金受給者の属する世帯の世帯員に対して、所在不明である旨の届出を行うことが義務化されます。具体的には、所在不明の届出がなされると、受給権者本人に対し、生存を確認できる書類の提出を求めた上で、その提出がない場合には、年金の支給を一時差し止めることになります。


コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/308-7c58a4d8