法人の代表者等に対する健康保険の適用

1.健康保険法等の一部を改正する法律案

 厚生労働省は、現在開会中の第183回通常国会に健康保険法等の一部を改正する法律案を提出しています。この法律案の骨子は、現行の協会けんぽの保険料率10.0%(全国平均)を平成26年度まで維持するために、

(1)協会けんぽの財政基盤の強化・安定化のため、平成22年度から平成24年度までの間講じてきた国庫補助の13%から16.4%への引き上げ措置を2年間延長する。
(2)後期高齢者支援金の負担方法について、被用者保険者が負担する後期高齢者支援金の3分の1を、各被用者保険者の総報酬に応じた負担とする措置を2年間延長する。
(3)協会けんぽの準備金について、平成26年度まで取り崩すことができることとする。

といった措置、すなわち、「協会けんぽへの財政支援措置の継続」ということです。


2.法人の代表者等に対する健康保険の適用

 しかし、この法律案の中には、その他として、「健康保険の被保険者又は被扶養者の業務上の負傷等について、労災の給付対象とならない場合は、原則として、健康保険の給付対象とする。」という内容が含まれます。これは、健康保険法の適用について、業務外の事由による疾病等に関して保険給付を行うこととされているため、業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病は、健康保険の給付対象とならないことになっています(健康保険法1条)。一方、法人の代表者又は業務執行者(以下「代表者等」という )は、原則として労働基準法(昭和22年法律第49号)上の労働者に該当しないため、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づく保険給付も行われないことになります。これが、制度の隙間で保険適用の対象とならない「法人の代表者等に対する健康保険の適用」の問題です。

 この問題に関して、厚生労働省は、平成15年7月1日付けで保険局長名通達を発しています。通達の要旨は以下のとおりですが、今回の改正案では、この保険局長通達の内容が改正健康保険法に取り込まれるものと思われます。

(1)健康保険の給付対象とする代表者等について

 被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者については、その者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関しても、健康保険による保険給付の対象とすること。

(2)労災保険との調整

 法人の代表者等のうち、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び労働基準法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、これによりその者の業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病に関し
労災保険による保険給付が行われてしかるべき者に対しては給付を行わないこと。

 このため、労働者災害補償保険法の特別加入をしている者及び法人の登記簿に代表者である旨の記載がない者の業務に起因して生じた傷病に関しては、労災保険による保険給付の請求をするよう指導すること。

(3)傷病手当金について

 業務遂行上の過程において業務に起因して生じた傷病については、法人の代表者等は、事業経営につき責任を負い、自らの報酬を決定すべき立場にあり、業務上の傷病について報酬の減額等を受けるべき立場にないことから、法第108条第1項の趣旨にかんがみ、傷病手当金を支給しないこと。


3.第1種特別加入者

 中小企業であって、徴収法の規定による「労働保険事務組合」に労働保険事務の処理を委託している事業の事業主とその家族従業者は、特別加入の申請を行うことにより、政府の承認を受けた場合には当該事業に使用される労働者とみなして保険給付を受けることができる(労災保険法33条1-2号及び34条)とされています。ここでいう中小企業の定義は、以下のようになります。

(1)金融業、保険業、不動産業又は小売業:常時50人以下の労働者を使用する事業
(2)卸売業又はサーヴィス業:常時100人以下の労働者を使用する事業
(3)(1)、(2)以外の事業:常時300人以下の労働者を使用する事業

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