中小企業金融円滑化法失効とその後

1.中小企業金融円滑化法

 中小企業金融円滑化法(以下「円滑化法」という)とは、2009年12月から施行され、2013年3月に失効した中小企業の資金繰りの対策を企図した時限立法です。円滑化法により、金融機関は、中小企業及び住宅ローンの借り手からの融資条件の変更(返済期限の延長、貸付金利の減免など)申込みがあった場合、積極的に応じることが努力義務として義務付けられていました。また、その実効性を担保するために、金融機関に対して、体制整備及び実施状況の開示、当局への報告などが義務付けられ、虚偽開示又は虚偽報告に対して罰則が設けられていました。これにより、金融機関による「貸し剥がし」を防止し、中小企業の資金繰りを円滑化させようとしたものです。

 円滑化法は、当初2011年3月で失効する予定でしたが、この年に起きた東日本大震災などにより中小企業を取り巻く経済環境が依然として不透明であったため、2013年3月末まで延長されることになったものです。この法律は、そもそも百年に1度と言われた国際金融危機に端を発する不況に対処するために導入されたものですが、金融機関が努力義務とはいえ、業績回復の見込みのない企業に対しても融資条件の緩和に応じている可能性が高いこと、企業にとっては、業績が回復しなくても存続できてしまうため、モラルハザードを生じさせるおそれがあることなどの負の側面が指摘されてきました。


2.中小企業金融円滑化法失効後の状況

 ところで、このような円滑化法が本年3月で失効する数箇月前から、失効後の倒産件数の増加が懸念されていました。自民党が政権に復帰してから、大胆な金融緩和策、補正予算などの経済対策が矢継ぎ早に打ち出されているとはいえ、景気の本格的な回復というには程遠い状況だからです。このような景気状況で円滑化法が打ち切られれば、中小企業にとって大打撃となる式の不安を煽る報道がなされていましたが、失効後ここまで、いわれていたほどの混乱は見られないように思われます。その理由について、月刊社労士4月号掲載の記事で大和総研太田珠美氏が次のような解説をされておられました。

 「預金に対する貸出しの割合を表す預貸率は銀行全体:69%、信用金庫全体:52%、信用組合全体:53%と低迷している。加えて、預金取扱金融機関の不良債権比率は3.0%と2000年代前半に比べて低水準で安定的に推移している(預貸率・不良債権比率ともに2012年3月末時点)。金融機関としては貸出しを増やしたい(減らしたくない)というのが基本的な考え方であり、かつ不良債権比率も安定している状況であれば、損失が確定してしまう債権処理に積極的に動く動機があるとは考えにくい。預金取扱金融機関が所属する各業界団体(全国銀行協会や全国信用金庫協会など)は2013年2月にそれぞれ、円滑化法の期限到来後の融資姿勢はこれまでと変わらない、という声明文を公表している。
 
 円滑化法失効に備え、内閣府・中小企業庁・金融庁は2012年4月に『中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ』を策定した。・・・具体化された対策としては、例えば各都道府県に中小企業支援ネットワークが設立された。各県・信用保証協会を中心に、地域金融機関、中小企業再生支援協議会、地域経済活性化支援機構(旧企業再生支援機構)、法務・会計・税務等の専門家などが連携して中小企業の支援を行う体制が構築されたことになる。

 また、地域金融機関や信用保証協会、中小企業基盤整備機構などの出資による事業再生ファンドの設立も行われており、過剰債務等により経営状況が悪化しているものの、本業に相応の収益力があり、財務リストラや事業再構築により再生が可能な中小企業を対象にした支援体制が講じられている。」(中小企業における経営課題とその対策①より転載)

 日本経済は、長期にわたるデフレ経済の定着が主な原因となり、企業が投資をせずに借金を返すという状況がマクロ的には常態化しています。その結果、金融機関は貸出先に窮しているのです。従って、最終的に自らの首を絞めることになりかねない貸し剥がしに走ることはないということなのです。それにしても、信用金庫及び信用組合の預貸率が50%そこそこというのは、「デフレも極まれり」という凄まじい数字だと思います。

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