生計維持関係とはどういう関係?

1.生計維持関係の認定

 社会保険制度を勉強していると、特に遺族給付関係などで「生計維持関係」が給付の要件として挙げられていることが目に付きます。例えば、遺族基礎年金では「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持し、...」(国年法37条の2)、寡婦年金においては「夫の死亡の当時夫によつて生計を維持し、...」(国年法49条1項)、また、遺族厚生年金では「被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。以下この条において同じ。)その者によつて生計を維持したものとする。」(厚年法59条)などという規定があります。

 従って、亡くなった者が死亡者の要件を充たしている場合、これらの給付が行われるか否かの判断では、「生計維持関係」の認定が重要な要件になってくるのです。原則は、亡くなった者と生計を同じくしていた遺族で、年額850万円以上の収入又は年額655.5万円以上の所得(収入額又は所得額の「基準額」という)を将来にわたって有すると認められる者以外のものとされています。

 この生計維持関係の認定に関して、「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(平成23年3月23日年発0323第1号)」というのが出ていますので、これを基に知識の整理をしておきたいと思います。


2.生計維持認定対象者と生計同一認定対象者

 社会保険の給付要件として、生計維持関係の認定が必要な場合と単に生計同一の認定で足りる場合に分けられます。その主な内訳は、次のとおりです。

生計維持関係の認定が必要な場合

(1)老齢基礎年金の振替加算等の対象となる者
(2)障害基礎年金(国民年金法等の一部を改正する法律による改正前の国民年金法による障害年金を含む。)の加算額の対象となる子
(3)遺族基礎年金の受給権者
(4)昭和60年改正法による改正後の国民年金法による寡婦年金の受給権者
(5)老齢厚生年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子
(6)障害厚生年金の加給年金額の対象となる配偶者
(7)遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む。)の受給権者
(8)昭和60年改正法による改正前の船員保険法による障害年金の加給年金額の対象となる配偶者及び子

生計同一認定で足りる場合

(1)遺族基礎年金の支給要件及び加算額の対象となる子
(2)死亡一時金の支給対象者
(3)未支給年金及び未支給の保険給付の支給対象者


3.生計維持関係等の認定日

 生計維持の認定及び生計同一の認定対象者に係る生計維持関係等の認定を行う「認定日」について注意すべきは、次のとおりです。従って、老齢厚生年金の場合、受給権発生後に新たに生計維持関係がある配偶者及び子を有するに至った場合であっても、加給年金の認定日には該当しないということになります。

(1)受給権発生日
(2)老齢厚生年金に係る加給年金額の加算開始事由に該当した日
(3)老齢基礎年金に係る振替加算の加算開始事由に該当した日
(4)障害厚生年金及び障害基礎年金並びに障害年金の受給権者については、障害年金加算改善法の施行により、受給権発生後において、法施行日以後に新たに生計維持関係がある配偶者及び子を有するに至った場合にあっては、当該事実が発生した日


4.生計同一に係る認定要件

 生計維持の認定をするためには、まず生計同一の認定を行うことがその要件となります。また、その際に必要な手続書類等は以下のとおりです。

(1)認定の要件
生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては、次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。

(Ⅰ)生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合

A 住民票上同一世帯に属しているとき
  →住民票(世帯全員)の写
B 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →別世帯となっていることについての理由書

C 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
 (a)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →同居についての申立書
  →別世帯となっていることについての理由書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等

 (b)単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき
  (ア) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
  (イ) 定期的に音信、訪問が行われていること
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →別居していることについての理由書
  →経済的援助及び定期的な音信、訪問等についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等

(Ⅱ)生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が死亡した者の父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹である場合

A 住民票上同一世帯に属しているとき
  →住民票(世帯全員)の写
B 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写

C 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
 (a)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →同居についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等
 (b)生活費、療養費等について生計の基盤となる経済的な援助が行われていると認められるとき
  →それぞれの住民票(世帯全員)の写
  →経済的援助についての申立書
  →第三者の証明書又は健康保険の被扶養者を示す書類等


5.収入に関する認定要件

 次に、生計維持の認定をするためには、収入に関する要件を充たす必要があります。概ね、年額850万円以上の収入又は年額655.5万円以上の所得を将来にわたって有すると認められる者以外のものです。要件の詳細及びその際に必要な手続書類等は以下のとおりです。

(1)生計維持認定対象者(障害厚生年金及び障害基礎年金並びに障害年金の生計維持認定対象者は除く。)に係る収入に関する認定に当たっては、次のいずれかに該当する者は、厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。

① 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
② 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
③ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記①又は②に該当すること。
④ 前記の①、②又は③に該当しないが、定年退職等の事情により近い将来(概ね5年以内)収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

(2)障害厚生年金及び障害基礎年金の生計維持認定対象者に係る収入に関する認定に当たっては、次のいずれかに該当する者は、厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を有すると認められる者以外の者に該当するものとする。

① 前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては、前々年の収入)が年額850万円未満であること。
② 前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては、前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。
③ 一時的な所得があるときは、これを除いた後、前記①又は②に該当すること。
④ 前記の①、②又は③に該当しないが、定年退職等の事情により現に収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。

コメント

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2014年02月01日 14:51 from -

Re: 生計維持関係

労災の遺族補償年金について、確かに教科書では「主として労働者の収入によって生計を維持されていたことを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りる。従って、いわゆる共働きの場合もこれに含まれる。」と説明されています。

結論としては、狭義の社会保険における遺族年金のような収入金額又は所得金額による要件はありません。例えば、住所を同じくして、互いに依存関係をもって共に生活している夫婦がいるとして、妻がパートで勤務中に労災事故で亡くなったというような場合、夫が1000万円を超える収入を得ていたとしても遺族補償年金が支給されることになります。

個人的見解ですが、労災の場合には、遺族の生活補償という意味合いの他、勤務中に事故が起きたことに対する罰則的な意味合い、遺族に対するお見舞い(極端にいえば謝罪)的な意味合いが混入しており、機械的に遺族の収入等で切り捨てにできないと考えているのだろうと思います。

2014年02月03日 10:14 from ヨコテ URL

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