社会保険の一括適用と本社管理

 全国に支店又は営業所を有する大企業、事業所を本社と工場を複数の県にまたがって置いている企業など、事業所が1箇所ではない企業は世の中にいくらでも存在します。しかし、社会保険の適用は事業所ごとが原則ですので、複数の事業所をまたがる転勤など異動が行われるたびに届出が必要になってきます。そのような面倒を回避する手段として、一括適用制度が存在します。実務的にはかなり重宝する制度ではないかと思い、採り上げることにしました。


1.制度の概要

 一括適用とは、船舶を除く適用事業所について、本社で人事、給与等が集中的に管理されており、事業主が同一である等、一定の基準を満たす場合には、本社について支社等を含めた一つの適用事業所とすることの申請を行うことができる制度です。申請が承認されると、本社・支社等間の人事異動の際必要である被保険者の資格取得及び喪失届の提出が不要となり、手続の効率化を図ることができます。一括適用制度は、厚生年金保険法8条の2及び健康保険法34条に定められています。


2.一括適用の基準及び申請手続き

 一括適用の承認を受けるためには、厚生年金保険及び協会けんぽ管掌の健康保険について、次のすべての基準を満たす必要があります。

(1)1つの適用事業所にしようとする複数の事業所に使用されるすべての者の人事、労務及び給与に関する事務が電子計算組織により集中的に管理されており、適用事業所の事業主が行うべき事務が所定の期間内に適正に行われること。
(2)一括適用の承認により指定を受けようとする事業所において、上記(1)の管理が行われており、かつ、当該事業所が一括適用の承認申請を行う事業主の主たる事業所であること。
(3)承認申請にかかる適用事業所について健康保険の保険者が同一であること。
(4)協会けんぽ管掌の健康保険の適用となる場合は、健康保険の一括適用の承認申請も合わせて行うこと。
(5)一括適用の承認によって厚生年金保険事業及び健康保険事業の運営が著しく阻害されないこと。

 一括適用の承認申請の具体的な手続は、指定様式の申請書を作成した上、一つの適用事業所とみなされる事業所について次の内容を説明した文書の提出が必要です。

(1)人事、労務及び給与に関する事務の範囲及びその方法
(2)各種届書の作成過程及び被保険者への作成過程又は届出の処理過程
(3)被保険者の資格取得及び喪失の確認、標準報酬の決定等の内容を被保険者へ通知する方法及び健康保険被保険者証(協会けんぽ管掌の健康保険の場合)を被保険者へ交付する方法

 一括適用の承認申請は、1つの適用事業所(通常、本社)とみなされる適用事業所の所在地を管轄する年金事務所において行います。承認までに要する期間については、申請から約3箇月とされていますが、承認は算定基礎届の事務処理期間である5月から8月を除く月の末日となり、承認日から1つの適用事業所とみなされることになります(承認日が属する月の厚生年金保険等の保険料から、1つの適用事業所とみなされた適用事業所で社会保険料の支払いを行います。)。

一括適用の基準及び申請手続き

3.一括適用の承認基準を満たさない事業所

 さて、ここまで説明してきた一括適用制度は、その承認要件として、全ての被保険者について電子計算組織により集中的に管理されていること、届出を電子媒体、電子申請で行うことができること、が挙げられていました。それでは、そうではない事業所については、一括適用の便宜を受ける余地はないのかというとそうでもないようです。一括適用事業所の承認要件を満たさない、又は満たしていても「一括適用」の申請を希望しない事業所についても、支社等の被保険者の人事管理を本社で一括して行っている場合に当該被保険者の社会保険の手続を本社で一括して行える「本社管理」の取扱いという仕組みが利用できます。

 「本社管理」の取扱いという仕組みとは、一括適用事業所の承認を受けられない事業所であっても、人事や給与等を一括管理している一部の方について本社の被保険者とするというものです。「本社管理」の取扱いの仕組み等については、旧社会保険庁時代に次のような資料が配布されています。

本社管理による社会保険事務の実施について

コメント

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2015年01月15日 10:10 from -

Re: 社会保障・税一体改革における一括適用について

ご照会ありがとうございます。社会保障の一連の改革における「被用者年金の一元化」の話と「一括適用」の話は別個の問題であると考えます。「被用者年金の一元化」については、小職の把握していることは、既に次の記事を投稿しておりますので、ご参照下さい。
http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/blog-entry-406.html

被用者年金の一元化にともない「一括適用」云々という制度運用の細かい点については、そもそも具体的にどのようなことを意味するのかも人によって見解が異なる点だと思われ、もし制度導入の必要があるならば、今後具体的に検討されるような問題だと思われます。

2015年01月15日 16:53 from ヨコテ URL

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