衆議院選挙と社会保障改革の行方

 さて、いよいよ衆議院選挙投票日の週末を迎えました。大手紙などの報道によれば、自民党の第1党への復帰と第二次安倍内閣の成立は、ほぼ確実なようです。問題は、地滑り的勝利といえるような勝ち方ができるか否かという点で、その理由は、予想される自公連立政権では参院において過半数に達することができず、衆院で圧倒的多数を占めることができない場合、参院第1党の民主党による妨害が政権運営に重大な支障をきたすおそれがあるからです。

 自民党が公表している今回の政権公約によれば、デフレ・円高対策として2%の物価目標、いわゆるインフレターゲットを設定するとしています。インフレターゲットを設定した場合には、(1)日銀は何時までにどれくらいの期間2%の物価目標を実現するのかについて明らかにし、(2)それが実現できない場合、日銀は政府及び国会に対する説明責任を負うことになります。このように強力な金融緩和政策を進めるために、日銀法の改正も視野に入れると政権公約は謳っています。これは、安倍総裁の発言などから推して、物価目標が達成できるまで無制限に日銀に長期国債を市場から買い取らせ、新たに通貨を発行させる、欧米の中央銀行が行っているような強力な金融緩和策を意味します。

 おりしも米国の中央銀行に相当するFRBのバーナンキ議長は、「失業率が6.5%以下になるまでは利上げはない。その後は徐々に金利が上がっていく。6.5%に達しても緩和的な政策が急速に縮小されることはない」とつい先日発表して、失業率の低下を直接の目標に据えて金融緩和を引き続き行っていくことを明言しています。

 自民党の経済政策に話を戻すと、速やかに本格的大型補正予算と新年度予算とを合わせて、切れ目のない経済政策を実行するとしていますが、その財源は大量の建設国債を発行して確保しつつ、防災対策・減災対策などに主眼を置いた国土強靭化のための公共事業を行うこと、即ち、当面はケインズ流の公共事業を中心とした財政出動を行って行くことを明確に述べています。

 自民党の経済政策の眼目は名目3%以上の経済成長の達成であり、デフレ・円高からの脱却を最優先にするということですから、政権公約の中では直接言及してはいないものの、デフレ脱却ができないうちに平成26年4月及び平成27年10月に予定される消費税引上げはしないということを意味します(附則18条 景気弾力条項)。

 しかし、本年8月10日の国会での消費税引上げ法案可決、成立に伴って成立した年金機能強化法の目玉である受給資格期間の大幅短縮は、消費税の引上げによる増収を財源にするというものです。即ち、平成27年10月施行の消費税10%引上げを前提条件に、受給資格をこれまでの25年から10年に短縮するとしているのです。また、平成24年度及び25年度について、国庫は基礎年金国庫負担割合2分の1を負担しますが、その際、2分の1と36.5%の差額の財源として、将来の消費税増税によって得られる収入を償還財源とする年金特例公債を発行することによって得られる財源を充当することとしています。これによって、平成24年度及び25年度の国民年金保険料の免除期間について、ようやく基礎年金国庫負担割合を2分の1として年金額を計算することができるようになったのですが、要は、平成24年度以降の基礎年金の国庫負担割合2分の1を維持するための恒久財源は、消費税引上げによって見込まれる税収を当てにしているということなのです。つまり、年金制度においては、予定通りの消費税の引上げがとっくに既成事実化されてしまっているのです。

 ところで、前回消費税を3%から5%に引上げ、財政政策も引締め気味に転じた平成9年(1997年)以来、我が国はデフレ経済に苦しめられてきました。新政権の施策によって、デフレから脱却し、名目で3%を超える持続的な経済成長が実現できたならば、税収の自然増が見込まれ、基礎年金の国庫負担割合の財源など楽に確保できるようになるはずです。また、「過去の物価下落時に年金減額を据え置いた結果、本来の支給額より2.5%高くなっている特例水準の解消」も法律をいじるまでもなく、自然に実現されてしまいます(年金額の特例水準引下げについて)。さらに、株式市場、債券市場などの金融市場が本来の運用市場としての役割を取り戻したならば、年金の資産運用に関する諸々の問題もある程度は解消に向かうのではないかと考えられます。国民の財産を守り、安全保障を実現することなども同じだと思いますが、健全な社会保障制度を維持するためには、何といってもデフレ経済を克服し、経済成長していくことが肝要なのです。
2012_東京上野浅草周辺+043+(2)_convert_20121111

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/276-1f79d707