面白法人カヤックの人事管理制度

1.賃金制度

同社の人事管理制度のうち、賃金制度、中でも「サイコロ給」という手当は同社の面目躍如というところです。

柳澤代表に拠れば、同社の賃金制度は、基本給、職能給、山分給及びサイコロ給からなります。

基本給:年齢など基本的な社会人としてのスキルによって決まります。勤続年数が増えれば自然に上がっていくようになっていて、組織も社員も年数をへてお互いに成長することを前提とした給与です。

能力給:職種に応じた手当で、各自のパフォーマンスによって決まります。自分にしかできないこと、自分の市場価値を知ってもらうことも大事という考え方を背景に決定されるそうです。

山分給:年2回のボーナスです。一つの組織にいる以上、組織が好調ならその喜びはみんなで味わいたい。隣のプロジェクトの成功も一緒に喜ぶための給与です。ということから、個人個人の成果にあまり連動せず、会社としての利益を皆で分けようというような趣旨のようです。

そしてサイコロ給です。特注でつくったサイコロを、各自が毎月給料日前にふり、「(出たサイコロの目の数)%×基本給」が、給料の+αとして支給されまるというものです。その根底にある思想は、やはり人間が人間を正しく評価するというのは、なかなか難しいということを認めてしまって、そもそも完璧ではない他人の評価で暗い気持ちになるのはもったいない、資本主義のものさしで測れない価値だってあるということを象徴的に提示しようということで、評価に余白を設けておいて、そこの部分は運を天に任せてみて、サイコロを振った出た目で決まるくらいでもいいんじゃないか、ということなのだそうです。

そして、その評価内容は代表のものも含めて全て公表しています。そもそも、給与の仕組みで「これが完璧」というものはないと思うので、社員が納得するかどうかが重要と考えているのです。

給与、手当の定義又は意義を明確にして、どういう思想で支払っているのか社員に分かるようにしておくことは非常に重要なことですが、意外にできていない会社が多いのではないでしょうか。また、賃金分配の前提にある人事評価を全て公表するというのは、さらりと言っていますが普通の会社にできることではないと思われます。こうする事によって、理念に共感できない社員、会社の方針に方向を合わせられない社員が白日の下に曝されることになるのでしょう。


2.社員の権限と損益管理

社員には「自由に何かをつくることができる権限」は無限に与えられていますが、予算を自由に使う権限などはもちろん与えられてはいません。

また、人件費の管理は、人の階層を3段階に分け、どの階層の人がどのプロジェクトに何%コミットしているかを計算することによって、プロジェクトごとの人件費を計算するそうです。

具体例をあげると、カヤック社ではほとんどの社員が複数のプロジェクトを掛け持ちしていて、ある人がA、B、Cの3つのプロジェクトを掛け持ちしているとしたら、自分の能力配分をAに50%、Bに30%、Cに20%というように決めます。この能力配分の%がコミット率です。

3箇月に一回、チームの編成を変えており、伸びているプロジェクトに人を増やしていくのですが、特に人事異動というものはなく、同プロジェクトにかかわる人数と%で増やします。Cのプロジェクトが伸びているので、あの人の20%をCにくださいとか、そのように人を増やしていくそうです。


3.組織論

カヤック社の資産は人ですが、クリエーターというかなり特殊な専門家であり、費用の大部分は彼らに対する人件費が占めています。それゆえに、前述のようなユニークな人事管理制度が生み出されてきたのでしょう。

しかし、ここで問題になるのは、十年単位で見れば、クリエイターの価値は将来必ず上がっていきます。優秀なクリエイターを集めて、切磋琢磨して、働きやすい環境を整えていければ、強い組織であり続けられるはずですが、今まで以上にクリエイターが一人でも食べていけるようになる時代が来るかもしれません。その結果、組織の価値が下がる可能性はあるということを柳澤氏は指摘しています。

そのような状況が現実的になった将来、クリエーターにとって組織に残ることの意味について、柳澤代表は、「ブレーンストーミングなどによるアイデアの相乗効果が生まれる環境をどのように整えていくかが重要だと考えています。自分一人でつくるよりも、組織で一緒につくることで、自分の力以上のものが出てくることを感じられれば、組織を選ぶのではないかということです。また、周囲に自分以上にクリエイターとしてがんばっている人がいるので刺激になるという状況があれば、組織にいる意味は十分にあるでしょう。そのために大事なことは、リーダーがクリエイターであり続けることだと思います。」と述べています。

組織は何のために存在するのか、突き詰めると柳澤氏の言うとおりだと思います。確かに分業化のメリットなどもあるのだと思いますが、そうではなくて、他者の考えを聞き、他者からの刺激を受けることによって一人で仕事をする以上の成果や成長がなければ、組織を作ることの意味は非常に小さいのかもしれないと思います。まあ。人間なかなか一人では、自分自身を管理し、がんばれないものでもありますが...。

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