中国経済の基礎知識

 今やGDPで我が国を抜き去り、世界第2位の経済大国にのし上がった中国ですが、為替を米国ドルに連動させる管理フロート制を採用しています。このことが、米国では中国を為替操作国に認定すべきであり、中国の為替操作についてWTOに提訴すべきであるという主張が繰り返され、米中貿易摩擦の原因にもなっています。


1.管理フロートとは何か

 中国は、輸出依存の経済成長政策を採用しているために、人民元の外国為替レートを米国ドルに連動させ、人民元安に誘導する管理フロート制(=一種の固定相場制)を維持しています。ちなみに、中国のGDPに占める輸出の割合は、2010年で約27%、同じく輸入は24%程度であり、輸出13%、輸入12%程度の我が国に比べかなり高くなっていることが分かります。

 ここで、中国の管理フロート制がどのように運用されているのか、我が国の為替介入と対比しながら見てゆくことにいたします。我が国にしても中国にしても経常収支の黒字国であり、自国通貨高の傾向が強く見られます。そこで、米国ドル買い、自国通貨売りの為替介入を行うのですが、その場合売るための自国通貨をどうやって調達するか問題になります。中国の場合、中央銀行である中国人民銀行が準備預金を増やすことで自国通貨の調達を行っています。準備預金を増加させるとは、新たに通貨を発行するということと同義です。中国人民銀行は、このようにして調達した人民元を市場に売り、ドルを購入、そのドルを米国債などで運用することになります。また、これらの外貨建て資産は外貨準備として積み上がるというのが、管理フロート制の仕組みです。

 これに対して、我が国の場合、変動相場制を採用しているため、為替介入は原則禁じ手です。しかし、実体経済を反映しない異常な円高に対しては、これまでも何度か円売り介入を実施してきました。その方法は、日本政府が国内の金融機関に対して、政府短期証券を発行し、円を調達します。次に、政府は国内金融機関から借りた円を日銀を通じて売却し、ドルを購入します。米国債などを購入し、外貨準備として保有する点は中国と同様です。この介入方式で注意すべき点は、日本政府が民間から一旦円を借入れた上で、その円を同額市場に売却しているということです。従って市場に在る円の流通量は、全体として見れば増減しないのです。この後、しばらくして短期証券が満期を迎えたとき、全額償還してしまえば円の流通量は増加しますが、通常借換えが行われます。

 ところが、中国の為替介入は日常的に行われているため、日本方式ではたちまち政府の負債残高が膨らんでしまいます。従って、通貨を新たに発行する方式で実施されているわけですが、このことは、中国の場合、為替介入を行えば行うほど、市中の通貨流通量が増加することを意味しています。つまり、中国経済は管理フロート制を採用しているために、常に過剰流動性の問題をかかえ、インフレを助長しやすい体質を本質的に抱えているということがいえそうです。

 そこで、人民元が米国ドルと実質的に為替レートが固定されているならば、金利の低い米国ドルで調達して、人民元に交換し、インフレで金利の高いはずの人民元で預金してはどうかと思ったのですが、外貨預金を扱っている○×銀行の人民元定期預金の金利は税込みで1年物0.22%ほどでした(香港ドルはさらに低い金利)。米ドルの1年物は0.06%ですから、若干高い程度です。為替の手数料まで考慮に入れると敢えてやってみる価値はなさそうでした。


2.外貨準備とは何か

 中国政府が、変動相場制ではなく管理フロート制を採用している理由は、自国通貨高になって輸出競争力が維持できなくなることを恐れているからだろうと推察されます。中国は、今や世界の工場とまで称される経常収支黒字国ですから、自国通貨高を回避し、管理フロートを維持するためには、前述の通り、日常的に為替介入を行うことになります。その結果、民間が稼いだ米国ドルを中国人民銀行が人民元に交換してやり、政府は外貨準備を積上げていくということが継続的に行われていることになります。つまり、中国の外貨準備高が巨額かつ対外資産に占める割合も高くなりがちな理由も管理フロート制によって説明されることが分かります。ちなみに、我が国の対外資産は2011年末で582兆円(対外負債は329兆)で世界一の対外純資産国ですが、外貨準備は約97兆円で、外貨準備の対外資産に占める割合は16.8%に過ぎません。
 

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