企業年金をめぐる最近の報道から2

1.ソシエテ信託銀行に業務停止命令

 16日、金融庁は、長野県建設業厚生年金基金から資産の運用を委託されていた仏系大手金融機関の日本法人ソシエテジェネラル(SG)信託銀行に対し、信託業務兼営法や金融商品取引法に基づき3箇月の一部業務停止命令を下しました。この事件では、長野県建設業厚生年金基金から委託された資産総額は68億円にのぼる運用資産がSG社他3社を介して未公開株に投資され、現時点で22億円まで目減りしていると伝えられています。

 金融庁が発表したSG社に対する主要な行政処分の内容は、銀行法第26条第1項及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第9条の規定に基づくもので、以下の2点です。

(1)平成24年10月23日(火)から平成25年1月22日(火)までの間、法人部門における信託業にかかる業務(平成24年10月22日以前の既存の契約によりすでに受託した信託財産の運用・管理・返還に係る業務、業務改善命令の実施に必要な業務及び当庁が個別に承認した業務を除く)を停止。

(2)平成24年10月23日(火)から平成24年11月22日(木)までの間、プライベートバンキング部門における信託業にかかる業務(平成24年10月22日以前の既存の契約の信託財産の運用・管理・返還に係る業務、業務改善命令の実施に必要な業務及び当庁が個別に承認した業務を除く)並びに外貨預金、仕組預金等リスク性商品の勧誘(広告、宣伝を含む)及び受入れにかかる業務を停止。

 また、処分の理由としては、主に以下のような点が指摘されています。

(1)年金信託業務における善管注意義務違反
 SG社は、指定運用の年金信託業務において、未公開株式への投資事業を目的とする投資事業有限責任組合(以下、「組合」という)に対して出資しているが、以下のとおり、指定運用の年金信託受託者に求められる管理を行っておらず、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第2条第1項で準用する信託業法第28条第2項に規定する善管注意義務に違反していること。

 a)組合への当初出資において、SG社経営陣は、外部弁護士の法律意見書などにより、投資対象先である組合及びその運用者である組合の無限責任組合員(以下、「GP」という。)に対する十分なデューデリジェンスの必要性を認識していたにもかかわらず、引受審査の権限や方法について明確化しておらず、組合の投資対象範囲やGPの運用経験・能力等に係るデューデリジェンスを、運用責任者であるファンドマネージャーではなく、営業担当者のみに行わせ、かつ法務・コンプライアンス部等の内部管理部門に検証を行わせていないこと。
 b)組合への追加出資においても、SG社は、依然として指定運用の年金信託受託者に求められる管理の枠組みを構築しておらず、同組合及びGPに対するデューデリジェンスを行わないまま出資していること。
 c)SG社は、指定運用の年金信託受託者として、GPによる事業運営を継続的に監視する義務を果たすための態勢を構築していない。このため、営業部門及び業務管理部門の責任者は、組合の投資先である未公開企業に、監査法人が不適正意見を述べている企業など、投資先の選択として適切でなかった可能性がある企業が含まれていることを認識していたにもかかわらず、GPに対して事業運営の是正を求めるなどの適切な対応を取っておらず、当社は長期にわたりこれを看過していること。

(2)プライベートバンキング業務における法令違反
 SG社は、プライベートバンキング部門に対する牽制態勢を適切に構築していないことなどから、以下のとおり、法令違反が認められること。

 a)同一グループ内のヘッジファンドを信託財産に組み入れる取引をする場合の顧客説明に当たって、当該取引は利益相反取引に該当するにもかかわらず、利益相反取引について記載した顧客説明書面を作成し、顧客に対し交付しておらず、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第2条第1項で準用する信託業法第29条第3項に違反していること。
(以下、b)、c)は省略)

 また、長野県警から詐欺容疑で捜索を受けた株式会社アール・ビーインベストメント・アンド・コンサルティング(以下「RB社」という)から、RB社を運営者とし未公開株を投資対象とする投資事業有限責任組合に、長野県建設業厚生年金基金との間で年金一任契約を締結して運用を委託された資産を当該事業組合に全額出資したとされるユナイテッド投信投資顧問株式会社及びナレッジキャピタルを運営責任者とする投資事業有限責任組合に同様の出資を行っていたとされる一任業者スタッツインベストメントマネジメントに対しても金融庁から行政処分を行ったことが公表されています。


2.AIJ運用委託の2基金解散へ

 前述の長野県建設業厚生年金基金は、AIJ投資顧問に約67億円の運用を任せていたことでも知られていますが、今回AIJ投資顧問に資産の一部運用を任せていた北海道内の4つの厚生年金基金のうち、既に解散を決めた北海道電気工事業厚生年金基金に加え、新たに2基金が解散の方針を固めたと伝えられています。

 解散を決めたのは、トラック業者約350社による北海道トラック厚生年金基金(AIJ委託 約22億円)及びガソリンスタンド業者など約380社による北海道石油業厚生年金基金(AIJ委託 約40億円)です。ともに株価低迷による運用利回りの悪化で厚労省から財政健全化を目指す指定基金に指定されていたのに、巨額の企業年金資産を消失させたAIJ問題が追打ちをかける格好となりました。解散時の負担をできるだけ減らせるように国の制度改正に向けた作業を注視しているところといわれます。また、唯一残っている北海道乗用自動車厚生年金基金(AIJ委託 約15億円)も指定基金であり、厳しい状況には変わりないようです。

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/267-e37b352d