出産手当金と継続給付

 月刊社労士の9月号の社会保険審査会裁決事例で「不支給とされた出産手当金」が採り上げられていました(34頁)。健康保険の継続給付については、以前に傷病手当金のところでも解説を試みましたが(「傷病手当金_資格喪失後の継続給付(2)」
、今回は出産手当金について考えてみます。継続給付の考え方は、傷病手当金の場合と全く同様です。


1.出産手当金の期間と受給金額

 そもそも出産手当金は、どのような状況でどのくらいの期間受給できるのかという点です。出産手当金は、健康保険の被保険者が出産の日(註1)以前42日目(註2)から出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間について支給されます。但し、この期間に、出産手当金の額を上回る報酬を受けていた場合、出産手当金は支給停止されます。

 また、支給額は、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する金額です。なお、会社を休んでいた期間について事業主から報酬を受けた場合は、出産手当金の支給額が減額調整されます。


2.継続給付の問題点

 出産手当金の受給には、傷病手当金の場合と同様、継続給付といわれる制度があります。要は、出産手当金を受給していた被保険者が一定の要件を備えることによって、退職後も引続き出産手当金の受給を可能足らしめる制度のことです。この要件とは、退職日までに継続して1年以上被保険者であった者が、出産の日(註1)以前42日目(註2)から出産の日の翌日以後56日目までの間に退職した場合で、(1)退職の日に現に出産手当金の支給を受けていたとき、又は(2)退職日に出産手当金の支給が給与報酬との調整により支給停止されていたとき、というものです。

 この要件の(1)又は(2)の意味するところは、出産手当金が支給される期間が出産の日(註1)以前42日目(註2)から出産の日の翌日以後56日目までの間というある一定期間に限定されているものの、手当金の支給自体は会社を休んだ日の1日ごとに見て行きます。このため、退職日に敢えて出勤し(例えば、退職の挨拶のために出勤したとか)、労務に服する行為を行った場合、ここで出産手当金を現に支給されていた状態が止まり、継続が途切れたものと見るのです。

 「その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているもの」は、現に退職日において出産手当金を受けていなくても、その受給権を取得したが出産手当金の額を上回る報酬を受けいるとして支給停止されているものを含むと解されています。

 なお、月刊社労士9月号で採り上げられた事例は、本件会社が社会保険事務所業務課に照会した際、当該退職日に出勤し労務に服することを避ける必要があることを明確に説明されなかったために、請求人は退職日に出勤して労務に服した(お盆明けの多忙期だったため)というものです。その結果、請求人は出産手当金を継続して給付されない不支給の処分を受けましたが、事の発端である社会保険事務所の説明があまりに不適切だったということで、社会保険審査会が原処分を取消したというものです。

(註1)予定日より遅れて出産した場合は、支給期間が出産予定日以前42日から出産日後56日の範囲内となっていますので、予定日から実際に出産した日までの期間も出産手当金が支給されることになります。
(註2)多胎妊娠の場合は98日

(健康保険法)
第104条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第106条において「1年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

 
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