債権の消滅時効について

 社会保険でいうと、年金受給権の消滅時効は5年です。また、保険料等の徴収権及び還付請求権は2年で消滅時効にかかります。賃金債権の時効も、労働基準法によれば2年となります。ここでは、債権の消滅時効について、簡単にまとめておきたいと思います。


1.債権の消滅時効の原則

 債権の消滅時効は、民法167条1項で規定されております。「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」これに対して、不法行為による損害賠償請求権は民法724条で、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と定められています。

 業務上の労働災害補償について、労災保険制度は、精神的損害をその補償の対象としていないため、労災保険制度と並行して使用者に対して損害賠償請求を行うことが認められています。その際の法的根拠として、民法709条及び715条の不法行為責任又は安全配慮義務の存在を前提にした民法415条の債務不履行責任を上げることになりますが、消滅時効の観点からすれば、不法行為の3年に対して、安全配慮義務違反は10年の消滅時効を主張することができるため、請求権者に有利ということができます。


2.短期消滅時効

 民法や商法には、権利関係を迅速に確定するためにより短い期間で時効が成立する短期消滅時効の場合が規定されています。短期消滅時効の主なものは、次に掲げるとおりです。

(1)5年
 追認できる時からの取消権(民法126条)
 年金・恩給・扶助料・地代・利息・賃借料など定期給付債権(民法169条)
 財産管理に関する親子間の債権(民法832条)
 商事債権(商法第522条)
 相続回復請求権 相続権を侵害された事実を知ったときから(民法884条)
 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利(地方自治法第236条)
 労働者の退職手当(労働基準法第115条後段)

(商事消滅時効)
第522条 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。


(2)3年
 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産、調剤に関する債権(170条1号)
 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権 工事終了のときから(170条第2号)
 弁護士、弁護士法人、公証人の職務に関して受け取った書類についての義務に対する権利(171条)
 不法行為に基づく損害賠償請求権 損害及び加害者を知ったときから(724条、製造物責任法第5条)
 為替手形の所持人から引受人に対する請求権、満期の日から(手形法第70条第1項)
 約束手形の所持人から振出人に対する請求権、満期の日から(手形法第77条第1項第8号)

(3)2年
 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権(172条)
 生産者、卸売又は小売商人の売掛代金債権(173条1号)
 職人、製造人自己の仕事場での仕事に関する債権(173条第2号)
 学芸、技能の教育者の教育、衣食又は寄宿に関する債権(173条3号)
 詐害行為取消権:債権者が取消しの原因を知った時から(426条)
 労働者の賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権(労働基準法115条前段)
 年金徴収権

労働基準法
115条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。


国民年金法
102条 年金給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる給付の支給を受ける権利を含む。第3項において同じ。)は、その支給事由が生じた日から5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。
2 年金たる保険給付を受ける権利の時効は、当該年金たる保険給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。
4 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によつて消滅する。


厚生年金保険法
92条 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、2年を経過したとき、保険給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利を含む。第4項において同じ。)は、5年を経過したときは、時効によつて、消滅する。
2 年金たる保険給付を受ける権利の時効は、当該年金たる保険給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。



3.国又は地方公共団体との債権

 国の金銭債権及び金銭債務については消滅時効の特則があり、会計法に以下のように規定されています。地方公共団体の金銭債権及び金銭債務についても、地方自治法第236条に同様の規定が置かれています。

会計法
第30条 金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、5年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

第31条 金銭の給付を目的とする国の権利の時効による消滅については、別段の規定がないときは、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
2 金銭の給付を目的とする国の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し、適用すべき他の法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

第32条 法令の規定により、国がなす納入の告知は、153条(前条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。


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