年少者と労働の問題

 20年近く前、ニューヨークタイムズが、「泡沫経済崩壊後、日本が創造した唯一の産業『援助交際』」というおふざけ記事を掲載したことがありました。この記事を見て、ある意味で日本も落ちるところまで落ちたものだなという感想を抱いたものです。我が国には、所属する共同体に対して献身的に奉仕する精神や危機に際して秩序を維持し、混乱に乗じて窃盗など犯罪を犯さないという高い倫理観が残っており、世界標準から見れば、まだまだ捨てたものではないことが昨年の大震災などをきっかけに再認識されることになりました。しかし、国の将来を担う子供や若年層を大切にしてきた文化を踏みにじる風潮は、この新産業が出てきたころから急速に蔓延しつつあるのではないかという危惧を抱いて今日に至っているというのもおおげさなことではありません。

 「群馬県桐生市の中学校体育館で、アルバイトとして解体作業をしていた栃木県足利市五十部町(よべちょう)、中学3年石井誠人君(14)がブロックの下敷きになって死亡した事故で、群馬県警は7日夕、石井君を雇っていた群馬県太田市の解体業者を労働基準法違反(年少者使用)と業務上過失致死容疑で捜索した。捜査関係者によると、解体業者は石井君の同級生(15)も雇用。県警は押収した作業日報などを分析し、労基法が禁じている中学生以下の年少者を雇った経緯を調べる。」(8月8日 読売新聞)

 「足利市立西中3年の石井誠人君(14)が群馬県桐生市の中学校体育館の工事現場で作業中に死亡した事故で、県教委は8日、各市町教委に対し、職場体験の在り方を再確認するよう通知を出すことを決めた。9日にも通知する。一方、西中は8日、生徒と保護者向けにそれぞれ説明会を開いた。保護者からは事実上、学校が中学生の労働を容認していたことに厳しい意見が相次いだ。」(8月9日 読売新聞)

 労働基準法では、未成年者について18歳未満の者を「年少者」、15歳到達後の3月31日終了までの者を「児童」と定義して、特別に保護を図っています。義務教育を受けている者、すなわち児童を労働者として使用することは原則として禁止です。また、18歳未満の年少者については、労働をさせてもよいが、法定労働時間及び週休制の原則を守って労働させることとし、原則として、変形労働時間制、時間外・休日労働及び労働時間・休憩の特例を認めないこととしています。使用者は、労働者が年少者である場合には、その年齢を証明する戸籍証明書を事業所に備え付けなければならず、さらに、例外的に児童を使用する場合には、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意者を事業場に備え付けなければならないことになっています。

 例外的に児童を使用できる場合とは、次のような条件を満たす場合とされています。

(1)就業する事業が非工業的事業であること
(2)児童の健康及び福祉に有害でないこと
(3)その労働が軽易であること
(4)所轄労働基準監督署長の許可を受けること
(危険有害業務、軽業又は大道芸の類、飲食店又は娯楽場の業務などは許可してはならない)
(5)満13歳以上であること
(ただし、映画の製作又は演劇の事業については、13歳未満も例外的に就業が認められる)

 国家の最優先課題は、1にも2にも教育です。その義務教育を担っている学校が自ら教育の機会放棄をして、労働基準法違反の疑いのある事業場に手を貸していたというのでは、全くお話になりません。

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