心理的負荷による精神障害の労災認定基準(2)

 労働者が精神障害を発病したとき、労災認定をするためには、それが業務上の発病か否かを判断する必要があります。この業務起因性の判断指針としての「心理的負荷による精神障害の認定基準」に添付された別表1「業務による心理的負荷評価表」によれば、いわゆるパワー・ハラスメントを含む出来事が⑤対人関係に、そしてセクシャル・ハラスメントについては、⑥セクシャルハラスメントとして取り上げられています。


1.出来事類型⑤対人関係

 この項目でパワー・ハラスメントについては、具体的出来事29「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に該当するものと考えられます。そして、その心理的負荷の強度は「Ⅲ」(=強い)とされた上で、嫌がらせ、いじめ、又は暴行の内容及び程度など並びにその継続の状況を考慮して総合評価を行うとされています。

 具体的には、「部下に対する上司の言動が業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた」、「同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた」、「治療を要する程度の暴行を受けた」などがひどい嫌がらせ・いじめ又はひどい暴行に当たるとされ、総合評価「強」としています。

 一方、「上司の叱責の過程で業務指導の範囲を逸脱した発言があったが、継続していない」、「同僚等が結託して嫌がらせを行ったが、これが継続していない」は「中」になる事例とされ、「複数の同僚等の発言により不快感を覚えた(客観的には嫌がらせ、いじめとはいえないものを含む)」程度は「弱」としています。また、「上司から業務指導の範囲内の叱責等を受けた場合、上司と業務をめぐる方針等において対立が生じた場合等」は、具体的出来事30「上司とのトラブルがあった」、心理的負荷強度「Ⅱ」で評価することになっています。実務的には、業務指導の範囲を超えたか超えていないかの判断は微妙で難しいところになると思われますが、このあたりは客観的なことば遣いの面、常日頃の上司の部下に対する接し方から来る被害者の主観的な側面などを配慮して総合的に判断するしかないのでしょう。

 出来事類型⑤対人関係におけるその他の具体的出来事では、31「同僚とのトラブルがあった」、32「部下とのトラブルがあった」、33「理解してくれていた人の異動があった」、34「上司が変わった」、35「同僚等の昇進・昇格、昇進で先を越された」があります。30から32が標準的には「中」程度の総合評価とされ、「周囲から客観的に認識されるような大きな対立があり、その後の業務に大きな支障をきたしたときなどには、「強」と総合評価されることがあるものとされています。33から35は、原則的には「弱」の総合評価とされています。


2.出来事類型⑥セクシャルハラスメント

 セクシャルハラスメントの被害を受けたときの第一義的心理的負荷強度は「Ⅱ」です。それに、その内容及び程度等並びにその継続する状況、さらには会社の対応の有無、内容、改善の状況、及び職場の人間関係等を考慮に入れて、総合評価を行います。

 「胸や腰等への身体接触を含むセクシャルハラスメントがあっても、行為が継続しておらず、会社が適切かつ迅速に対応し、発病の前に解決している」、「身体接触のない性的な発言のみのセクシャルハラスメントであって、発言が継続していない」、「身体接触のない性的な発言のみのセクシャルハラスメントであって、複数回行われたものの、会社が適切かつ迅速に対応し発病前にそれが終了した」、これらのように会社が適切かつ迅速に発病の前に対応がなされている場合には、総合評価も「中」程度の心理的負荷強度とされます。

 一方、「胸や腰等への身体接触を含むセクシャルハラスメントがあって、行為が継続して行われた」、「胸や腰等への身体接触を含むセクシャルハラスメントがあっても、行為が継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった又は相談等の後に職場の人間関係が悪化した」、「身体接触のない性的な発言のみのセクシャルハラスメントであって、発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた」、「身体接触のない性的な発言のみのセクシャルハラスメントであって、性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクシャルハラスメントがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった」、これらの場合には、総合評価「強」としています。

 ちなみに、「○○ちゃん等で呼んだ」、「職場内に水着姿の女性のポスター等を掲示した」などは、確かに起こりがちなセクハラ事例ではありますが、精神障害発症との関連では「弱」と評価されることになっています。

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