労働者派遣_偽装請負

1.派遣、請負及び出向

 一般用語として、あるいは意図的に、しばしば混同して使用される用語と思われます。ここで法律用語としての定義を整理しておきたいと思います。

 まず、派遣ですが、雇用契約は派遣元企業甲と派遣社員Aとの間に結ばれていますが、実態的な指揮命令関係は派遣先企業乙とAとの間に成立させ、かつ、乙とAとの間には雇用関係はないという法律関係です。甲と乙の間には、当然労働者派遣契約のような契約が締結されています。

 これに対して、乙とAの間にも雇用関係があるもの、即ち二重の雇用契約が成立しているのが「出向」です。典型的な例としては、親会社との雇用関係が継続しているまま、子会社に出向する場合です。

 それでは、請負(業務処理請負)とは何か、民法に条文があり、次のように定めています。

 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(民法第632条)。

 請負企業甲が発注企業乙に対し、その一定業務の処理を請負い、この請負業務を遂行するために、自己の雇用する労働者Aを発注企業の事業場において自己の指揮命令下に労働させることです。つまり、発注企業乙とAとの間には、指揮命令関係が存在しません。請負と派遣の違いは、労働者Aが雇用契約を締結している企業の指揮命令権の下で労働するか、雇用契約を締結している会社とは異なる企業の指揮命令権の下で労働するかと言う点です。


2.偽装請負

 偽装請負とは、形式的に請負の名目で請負事業者が注文者との間で契約を締結し、自己の従業員を注文者の事業場等において労働させるものの、実際には請負事業者が自ら当該従業員を指揮命令することはなく、注文者の指揮命令の下で労働に従事させることをいい、実質的に労働者派遣又は労働者供給事業にあたるものをいいます。

 このようなことが行われる主な理由は、労働者派遣契約の場合、労働者派遣法によって課されることになる様々な規制を回避することにあると思われます。

 偽装請負は、違法行為です。そこで、このような法律関係の効果について、諸説があります。

(1)無効説
 労働者派遣法は、そもそも我が国労働法体系で原則禁止とされている労働者供給事業を一定の要件を満たすことによって例外的に認めたものであるから、要件を満たさない契約は無効であるとする考え方です。

「(偽装請負は、)脱法的な労働者供給契約であり、職安法44条違反、労基法6条(中間搾取)違反という極めて強い違法性があり、公序良俗に違反するものであり民法90条によって無効である。」(松下プラズマディスプレイ事件 大阪高裁平成20年4月25日判決)

(2)有効説
 違法な労働者派遣であっても、労働者派遣法は行政取締規定であるから、これに抵触しても基本的には契約の効力に影響しないと言う考え方です。この見解に拠れば、違法な労働者派遣であっても労働者派遣法による罰則や行政的措置はさておき、契約自体は有効であると言うことになります。

 ちなみに、松下プラズマディスプレイ事件の最高裁判決(平成21年12月18日)が既にでており、高裁判決を否定しています。「しかしながら、労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである。そして、被上告人と(偽装請負業者)との間の雇用契約を無効と解すべき特段の事情はうかがわれないから、上記の間、両者間の雇用契約は有効に存在していたものと解すべきである。

 大阪高裁判決の特殊性は、偽装請負の違法性を強調して、労働者と偽装請負業者との間の雇用関係を民法90条違反で無効としています。その上で、偽装請負発注企業と労働者の間に実態的に(1)事実上の使用従属関係、(2)労務提供関係、(3)賃金支払関係があることをを認定し、両者の間には「黙示の労働契約」の成立が認められると言う理論構成を行い、「労働契約上の地位確認請求」を容認する判決で偽装請負労働者の保護を狙ったと思われます。しかし、この理論構成は、最高裁では支持されず、上記のような判断となり、さらに、(3)賃金支払関係などをの実態から、労働者と偽装請負発注企業との間の「黙示の労働契約」の成立は否定されたのです。

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