東電企業年金給付削減へ

 多くの報道機関から既に伝えられているように、東京電力は企業年金の給付額削減に向けて、対象となる退職者15373人のうち、83%に当たる12700人からの同意を得ることができたことを発表しました。今後の日程は、7月上旬に厚生労働大臣に規約変更を申請し、厚労相の承認が得られれば、10月にも減額を実施するとしています。東京電力は、既に労働組合からの同意を取り付けている加入者への将来支給する年金の削減と合わせ、10年間で1065億円の経費削減効果が期待されるとしています(6月4日 MSN産経ニュース)


1.東電の企業年金

 東電の企業年金は、確定給付企業年金と確定拠出年金の2本立てです(「東京電力の企業年金概要」)。元々は、税制適格退職年金だったものを平成19年(2007年)に確定給付企業年金と確定拠出年金に移行しています。今回減額の具体的な内容については、次のようなものと伝えられています。

減額の内容
(1)有期年金(75歳まで)
 平成19年9月までの退職者(旧・税制適格年金適用者)は、退職時適用の給付利率3.5%から6.5%までを指標金利(国債)に連動させて(下限保証利率2.25%)年金額を毎年変動させる仕組みに変更。
 平成19年9月以降の退職者(確定給付企業年金適用者)は、既に指標金利連動型を適用しているが下限保証利率は2.0%から1.5%に変更。
(2)終身年金(75歳以降)
 現行月額7万円を月額5万円に減額する。


2.企業年金給付減額について

 確定給付企業年金法によれば、給付減額は原則禁止です。例外的に減額が許容される要件及び手続について施行令及び施行規則で以下のように定めています。

確定給付企業年金法施行令(平成13年12月21日政令第424号)
第4条  法第5条第1項第5号 (法第6条第4項 において準用する場合を含む。)の政令で定める要件は、次のとおりとする。
一  (省 略)
二  加入者等の確定給付企業年金の給付(以下「給付」という。)の額を減額することを内容とする確定給付企業年金に係る規約(以下「規約」という。)の変更をしようとするときは、当該規約の変更の承認の申請が、当該規約の変更をしなければ確定給付企業年金の事業の継続が困難となることその他の厚生労働省令で定める理由がある場合において、厚生労働省令で定める手続を経て行われるものであること。

確定給付企業年金法施行規則
(給付減額の理由)
第5条 令第4条第2号の厚生労働省令で定める理由は、次のとおりとする。ただし、加入者である受給権者(給付を受ける権利(以下「受給権」という。)を有する者をいう。以下同じ。)及び加入者であった者(以下「受給権者等」という。)の給付(加入者である受給権者にあっては、当該受給権に係る給付に限る。)の額を減額する場合にあっては、第2号及び第3号に掲げる理由とする。
一 確定給付企業年金を実施する厚生年金適用事業所(以下「実施事業所」という。)において労働協約等が変更され、その変更に基づき給付の設計の見直しを行う必要があること。
二 実施事業所の経営の状況が悪化したことにより、給付の額を減額することがやむを得ないこと。
三 給付の額を減額しなければ、掛金の額が大幅に上昇し、事業主が掛金を拠出することが困難になると見込まれるため、給付の額を減額することがやむを得ないこと。
(以下省略)

(給付減額の手続)
第6条 令第4条第2号の厚生労働省令で定める手続は、次のとおりとする。
一 規約の変更についての次の同意を得ること。
イ 加入者(給付の額の減額に係る受給権者を除く。以下この号及び次項において同じ。)の三分の一以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意
ロ 加入者の三分の二以上の同意(ただし、加入者の三分の二以上で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の同意をもって、これに代えることができる。)
二 受給権者等の給付の額を減額する場合にあっては、次に掲げる手続を経ること。
イ 給付の額の減額について、受給権者等の三分の二以上の同意を得ること。
ロ 受給権者等のうち希望する者に対し、給付の額の減額に係る規約の変更が効力を有することとなる日を法第60条第3項に規定する事業年度の末日とみなし、かつ、当該規約の変更による給付の額の減額がないものとして同項の規定に基づき算定した当該受給権者等に係る最低積立基準額を一時金として支給すること。
2 給付の額が減額されることとなる加入者が加入者の一部に限られる場合にあっては、前項第一号イ及びロの規定中「加入者」とあるのは、「給付の額が減額されることとなる加入者」とする。
3 給付の額が減額されることとなる受給権者等が受給権者等の一部に限られる場合にあっては、第一項第二号イ及びロの規定中「受給権者等」とあるのは、「給付の額が減額されることとなる受給権者等」とする。
4 第一項第一号の場合において、実施事業所が二以上であるときは、同号の同意は、各実施事業所について得なければならない。


 要約すると、給付減額が例外的に認められる場合とは、

(1)給付減額がやむを得ないほどの経営悪化
(2)給付減額しないと事業主が掛金拠出困難になるほどの掛金負担の大幅上昇が見込まれること

が挙げられています。

 また、その手続きについては、全加入員の3分の2以上の同意(労働組合の同意で代替可能)が必須条件です。さらに、現受給権者の給付削減にはより厳しい要件が加わります。

(1)事前に給付設計の変更に関する十分な説明と意向確認を行う。
(2)全受給権者の3分の2以上の同意。
(3)希望者に対して一時金としての受取を可とする。

 東電の場合、実質国有化やむなしというところにまで追い詰められていますので、経営の悪化という点で要件を満たしているようですが、年金財政自体は健全を維持していると伝えられており、議論の余地はまだ残っているようです(「企業年金受給権者の給付減額の問題_2010年11月26日」)。 

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