労働者派遣

1.派遣規制強化の動き

 昨年暮もおしつまった12月28日、厚生労働相の諮問機関労働政策審議会は、派遣法改正に向けた報告書を長妻昭厚生労働大臣に提出しています。派遣規制強化を謳ったこの答申は、企業への影響を緩和するため、施行までに最大5年の経過期間を置いているものの、製造業への派遣原則禁止及び登録型派遣の原則禁止という企業にとっては厳しい内容になっているといえます。

答申の概要
(1)登録型派遣:原則禁止
(2)製造業派遣:常用型を除き原則禁止
(3)日雇い派遣:原則禁止
(4)均等待遇:派遣労働者と派遣先社員の待遇を同じようにするような規定を設ける
(5)マージン率の情報公開:派遣料金の改定時などに派遣会社は料金を明らかにする
(6)違法派遣における直接雇用の促進:本人が希望すれば直接雇用に切り替えられる制度の創設
(7)法律の名称及び目的:「派遣労働者の保護」を明記する
(8)(1)、(2)は公布日から3年以内((1)は一般事務などの業務は+2年の暫定措置)、その他は6箇月以内

 本答申を基にした派遣法改正案が郵政改革法案とともに今国会の重要法案とされ、終盤国会の焦点となってきそうな様相です。


2.労働者派遣の法的意義

 我が国の労働法体系は、職業安定法第44条において、労働者供給事業を包括的に禁止しています。しかし、同法4条6項によって、労働者派遣は労働者供給事業から除外され、労働者派遣法の定める要件を満たすことにより、適法とされているのです。

 それでは、労働者派遣の定義ですが、労働者派遣法は第2条第1号で次のように規定しています。「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもの」、つまり、雇用契約は派遣元企業甲と派遣社員Aとの間に結ばれていますが、実態的な指揮命令関係は派遣先企業乙とAとの間に成立させ、かつ、乙とAとの間には雇用関係はないという法律関係です。ちなみに、乙とAの間にも雇用関係があるのが「出向」です。

 労働者派遣事業は、特定労働者派遣事業及び一般労働者派遣事業に区分されます。前者は、派遣元企業が常時雇用する労働者のみを派遣するものであり、常用型派遣とも呼ばれます。後者は、派遣を希望する労働者を登録しておき、派遣の都度、派遣労働者と派遣期間だけの労働契約締結するものであり、登録型派遣とも呼ばれています。両者は、事業免許の方法において差が設けられており、特定労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣への「届出」だけで事業が始められるのに対し、一般労働者派遣事業の場合、厚生労働大臣の「許可」が必要とされています。


3.労働者派遣法

(1)労働者派遣法の目的
 労働者派遣法の第一義的な目的は、派遣労働者の保護です。しかし、正社員(終身雇用システム)の保護もその目的と考えられます。これはどういうことかというと、派遣労働者を無制限に認めていくと正社員の仕事が派遣労働者にとって代わられ、正社員の地位が脅かされることになるので、派遣対象業務を制限し、派遣可能期間を限定し、派遣先に対する直接雇用申込みを義務化するなどの措置を講じているのです。

(2)派遣対象業務及び派遣可能期間
 派遣対象業務は、これまで緩和されてきた歴史があり、平成15年の改正でそれまで禁止されてきた製造業が対象業務に含まれるようになり、派遣禁止となる業務はごく限定的に列挙されています。

①港湾運送業務、②建設業務、③警備業務、④医療関係業務などの一部

 派遣可能期間の原則は、派遣先が当該派遣先事業場の労働者の過半数代表者の意見を聴いた上で、1年から3年までの期間を定めることができ、その定めをしない場合、派遣可能期間は1年となります。

 但し例外があり、①平成11年改正以前に既に派遣対象業務となっていた26業務、②事業の開始、転換、縮小又は廃止のための業務であって、一定期間内に完了することが予定される業務、③その業務が1箇月に行われる日数が派遣先の通常労働者の所定労働日数に比べて少ない業務、④産前産後の休業及び育児・介護休業をする労働者の業務、これらについては派遣可能期間が適用されません。

26業務;
 ソフトウエア開発、機械設計、放送機器操作、放送番組等出演、事務用機器操作(昔の英文・和文タイピストなど?)、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建築物清掃、建築物設備運転・点検・整備、受付・案内・駐車場管理等、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、書籍の製作・編集、広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサー、OAインストラクション、テレマーケティング営業、セールスエンジニアの営業・金融商品の営業、放送番組等における大道具・小道具

(3)派遣先における雇用制限の禁止
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由なく、派遣元事業主との雇用関係が終了した後に、その労働者が派遣先に直接雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはいけません(労働者派遣法第33条)。

(4)派遣先の直接雇用義務
 派遣先は、派遣可能期間に制限のない業務について、派遣先が同一業務に3年を超える期間同じ労働者を受け入れ続けている場合で、当該同一業務に誰か労働者を雇入れようとするときには、その派遣労働者に雇用契約の申込みをしなければなりません(労働者派遣法第40条の4)。

 さらに、派遣可能期間の制限のある業務については、同一業務に継続して1年以上同一労働者を受け入れていた場合であって、その後当該業務に新たに労働者を雇入れようとする場合には、その派遣労働者を雇入れるように努めなければなりません(労働者派遣法第40条の3)。これは、強制ではなく、努力義務です。

 なお、申込みをする雇用形態は、必ずしも期間の定めのない契約に限られず、期間の定めのある契約、パートタイマーとしての雇用契約などでも足りるとされています。

コメント

改正派遣法 与野党間調整

2011年11月 改正派遣法の修正案が与野党実務者間で合意。
(1)登録型派遣:原則禁止⇒削除、(2)製造業派遣:常用型を除き原則禁止⇒削除、(3)日雇い派遣:原則禁止⇒条件緩和、(4)違法派遣における直接雇用の促進:本人が希望すれば直接雇用に切り替えられるみなし規定を施行後3年後に実施、(5)指定労働者派遣事業のあり方を検討事項とする。

2012年01月01日 18:44 from ヨコテ URL

無期雇用、派遣期間の制限なし 厚労省研究会が報告書

現行の制度では、通訳やアナウンサーなど「専門26業務」は派遣期間に上限がない。それ以外の業務では上限は最長3年に決まっている。今回の見直し案ではこの規制をなくし、3年ごとに働く人を変えれば、同じ職場で継続的に派遣を受け入れられるようにする。派遣期間に上限がなかった「専門26業務」は業務範囲がわかりづらいため原則廃止し、期間の上限の有無は派遣元との雇用契約によって変えるようにする。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS06026_W3A800C1PP8000/

2013年08月06日 21:40 from ヨコテ URL

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