厚生年金基金の代行部分とは何か

1.代行部分定義

 厚生年金基金の代行部分とはそもそも何なのか、企業年金連合会のHPにある用語集では、次のように定義しています。

 「厚生年金基金が国に代わって給付する部分。老齢厚生年金の報酬比例部分のうち賃金の再評価分と物価スライド分を除いた部分について代行することとなっている。厚生年金基金に加入していた人の場合、受給時に代行部分相当額は基金から給付され、残りは国から受け取ることになる。企業は代行部分に関する保険料を納める義務を国から免除される(免除保険料)代わりに、年金を給付する義務を国から請け負うことになる。
 代行給付の予定利率は長らく年5.5%に固定され、運用環境が悪化した1990年代は厚生年金基金の財政悪化の一因となった。なお、平成17年度から予定利率は3.2%となっている。」(下線は筆者)

 この定義で問題になるのが、「賃金の再評価分」と「物価スライド分」とは何かということです。ということで、厚生年金の報酬比例部分の算式を見てみますと、少なくとも5%減額措置(「5%適正化及び従前額の補償」)の前後、総報酬制の導入前後で算式が変わってきて大変複雑なのですが、実務的に一番多く使われていると思われる算式を上げると;

{(平成15年3月以前の被保険者期間分)
 平均標準報酬月額(過去の標準報酬月額を平成6年標準に再評価し、平均したもの)×7.5(~10)/1000
 +
(平成15年4月以後の被保険者期間分)
 平均標準報酬額(過去の標準報酬額を平成6年標準に再評価し、平均したもの)×5.769(~7.692)/1000}
 ×
1.031(註1)×0.978(註2)

(註1)平成6年の再評価率を使用しているので平成6年から平成11年の物価スライド率を乗じています。
(註2)(平成11年以後の平成23年度までの物価スライド率0.981)×(1-0.003)(=23年中の消費者物価下落率0.3%)=0.978。

 なお、従前額の保障及び物価スライド特例のつかない本来の算式は、毎年改定される最新の再評価率を乗じて平均標準月額及び平均標準報酬額を調整することで完結し、改定率を用いない方式を採っています。

 上述の算式から逆に考えると、基金代行分を計算する際の平均標準報酬月額及び平均標準報酬額は、再評価率を乗じていない生の標準報酬月額及び標準報酬額の平均値ということが言えます。さらに、物価スライド率を乗じることもありません。また、生年月日による乗率は、受給権発生日が平成12年4月1日以降の場合、1000分の7.125及び1000分の5.481などの新乗率を用います。

 結論として、基金が支給する代行部分の年金額は裁定時に一定額に定まり、かつ、不変です。念のため付け加えますと、厚生年金基金の給付義務は加入員の老齢に関して支給する年金給付及び脱退に関して支給する一時金給付に限られますので(厚生年金保険法106条、130条)、加入員の死亡及び障害に関して年金を支給する義務はありません。


2.代行返上等に伴う年金額の減少

 この代行部分を基金の解散や代行返上などによって国に返還してしまうと、報酬比例部分についても通常の厚生年金として国から支給されることになります。すると、次のような理由で報酬比例部分の年金額が減少します。なお、厚生年金基金の規約の内容は基金によって異なり、以下のような寛容な支給を元から行っていない基金もあり得ますが、一般論として、以下の三点が指摘されています。

 第一に、基金は加入期間が1箇月以上あれば、基金が担当する基本部分についての支給を行っています。しかし、厚生年金本体では加入期間が25年以上ないと老齢年金を受給する資格がないので、公的年金の加入期間が25年に充たない者などは、原則的に年金の受給権を失ってしまいます。

 第二に、一般的な厚生年金基金では、60歳から65歳までの特別支給の老齢厚生年金について、年金受給者が他社などに再就職していても、年金額の調整はなされずに支給されています。この部分は、「支給要件緩和によるプラスアルファー給付」と言われているもので、厚生年金基金の加入員となることによる優位性の一つでした。

 この他、各基金の規約によりますが、失業給付、高年齢雇用継続給付、遺族給付、又は障害給付などとの調整を実施していない場合もあり、このような場合に公的年金に移行するとこれらの給付との調整で老齢厚生年金が支給停止になりますので、結果的に年金額が減少することになります。

代行返上の仕組み1

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