年金交付国債

1.年金交付国債の背景

 まず、去年の暮に基礎年金の国庫負担を5割にすることについて、どのような議論がなされていたかです。2011年12月7日に、平成23年度分の国庫負担を5割に維持するための改正国民年金法が参議院本会議で可決、成立しました。改正法では、国庫負担5割を維持するために必要な財源およそ2.6兆円を東日本大震災の復興債で賄うとしています。また、当初、平成24年度からは消費税引き上げを含む「税制の抜本的な改革」で財源を確保するとしていた附則の文言を「必要な税制上の措置」を講じた上で確保すると修正しています。

 かつての自公政府は、保険料の不払いが増える中、年金制度の信頼性を高めようと、平成21年度から国が負担する財源の割合を36.5%から50%に引き上げました。当時は将来消費税を上げて財源に充てることを目論みましたが、増税は実現できず、特別会計の積立金などいわゆる「埋蔵金」でこれまでやりくりを続けてきました。しかし、平成24年度には、埋蔵金がほぼ枯渇するため、他の財源で工面するしかなくなったのです。


2.年金の積立金を借用する

 そこで政府が考えたのは、将来の消費税増税での返済を前提とする「つなぎ国債」を発行して財源を賄うという案です。しかし、財務省は、「閣議決定もしていない一体改革の素案を担保に国債を発行するのは困難」という立場で、国庫負担割合を36.5%に一旦下げて予算編成を行い、消費税引上げ関連法が国会で成立した段階で50%に戻す案を検討していました。


3.年金交付国債の発行へ

 ところが、12月22日になって、財務相と厚労相が財務省で会談、基礎年金の国庫負担分の不足財源を「年金交付国債」で賄うことで正式合意します。

 交付国債とは、政府が公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に国債を交付し、国は積立金から事実上の現金借り入れを行います。年金積立金管理運用独立行政法人の貸借対照表上は、資産の部の積立金の中身が2.6兆円分交付国債に換わるだけで、表面上変化はありません。その上で、消費税増税が実現した段階で、2.6兆円の他、得られたはずであろう運用益に相当する金額を消費税収から年金積立金に繰り入れます。

 そもそも交付国債とは、債券の発行に依る発行収入金を伴わず、国が金銭の給付に代えて公的機関向けなどで発行する債券であり、一般に利子が付かず、あたかも「小切手」や「約束手形」のようなもので、交付を受けた機関が必要なときに国に請求すれば換金できますが、国は請求があるまでは現金を必要としないため、発行時に全額予算計上する必要がないのが特徴です。新規国債の発行額を44兆円以下に抑えながら、年金積立金を直接取り崩さないで財源をひねり出す手法として編み出された、苦肉の策ということができます。


4.年金交付国債の疑問点 

 交付国債が通常の赤字国債とは異なり、「小切手」のような一時的な支払い手段のようなものだとすると、当然のことながら、次の疑問点が浮かんできます。すなわち、消費税引き上げなどの増税案が今国会で可決、成立しなかった場合、どうなるのかという疑問です。年金積立金管理運用独立行政法人は、当然、国に換金を請求してくることになりますが、元々消費税引き上げによる税収を当てにして交付されたものですから、そして、年金積立金から引き出した現金は、年金給付の国庫負担分に使ってしまっていますから、返済財源が見あたりません。

 とすれば、民主党政権にとっては、年金交付国債を発行したという事実自体がより重要なのかもしれません。なぜなら、年金交付国債発行を既成事実化してしまえば、それを人質にして、消費税引き上げを可決、成立させる以外に道はないという主張をするのではないかとさえ考えられるからです。

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