社会保障と税の一体改革素案_社会保障部分と国会

 現在、第180回通常国会が、1月24日から6月21日までの日程で会期中です。野田総理が法案成立に並々ならぬ決意を表明している社会保障と税の一体改革ですが、昨年12月20日に決まった改革素案(社会保障部分)の内容は多岐にわたります。そこで、今国会では、その中のどの部分が審議されようとしているのかという観点から、論点をまとめてみました。


1.今国会に必要法案が提出されるもの

(1)基礎年金国庫負担の2分の1恒久化

 国民年金事業の運営は、被保険者の保険料とその運用益だけで賄われているわけではありません。基礎年金の給付費の2分の1は国庫が負担しています(平成21年4月から、それ以前は3分の1)。これが、保険料を支払っていない免除者に対しても年金が支給されるカラクリになっています。つまり、現在20歳から60歳までの国民年金強制加入期間中、満額の保険料をきっちり納めた(若しくは全期間第3号被保険者であった)人の基礎年金額は、平成23年度が788900円ですので、強制加入期間全て法定免除又は全額免除を受けた人の場合には394450円になるという計算です。

 この基礎年金給付費の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げるための財源が、いまだに不安定で、これまで何とかやりくり算段してやってきたものを、消費税引上げ年度からは消費税を財源にして2分の1国庫負担を恒久化するという法案です。また、平成24年度から消費税引き上げが実施されるまでは、件の消費税引き上げを前提に予算をやりくり算段することになっており、それに必要な法案も盛り込まれています。

(2)物価スライド特例分の解消

 平成17年から年金の給付額を抑制するために導入されたマクロ経済スライドは、既に5年以上が経過した今現在も実施されない保留状態が続いています。この理由は、平成12年から14年の景気後退期に生じた-1.7%の物価下落がその後の物価上昇によって相殺されるまで、マクロ経済スライドを含む原則的な年金額の改定方法の実施を延期することとしてしまったからです(「年金額の改定とマクロ経済スライドなど」参照)。しかし、マクロ経済スライドによって導き出されるはずの本来の年金額との差が2.5%に拡大するに至って、今後の物価上昇を待ってなどという悠長なことが言っておられなくなり、今国会で本来の年金額に計画的に引き下げる措置を実施するための法案が審議されることになっています。具体的には平成24年度10月から26年度まで3年間かけて本来の年金額まで引き下げてゆくとされています。


2.今国会への法案提出に向けて引き続き検討されるもの

(1)最低保障機能の強化

 消費税引上げ年度から、低所得者等への一定額の加算のほか、老齢年金の受給資格期間を、現行の25年から10年に短縮するというものです。この案が新聞等で報じられると、年金の受給権が取得できるかもしれないと期待を膨らませる無年金者が相当数おられるようですが、今国会に具体的な法案が提出されるかどうかは、非常に不透明です。

(2)高所得者への年金給付の見直し

 高所得者の老齢基礎年金を、国庫負担相当額まで調整する制度を導入するための法案です。

(3)産休期間中の保険料負担免除

 厚生年金の被保険者について、育児休業期間中に加え、産前・産後休業期間中も、同様に年金給付は免除し、将来の年金給付には反映させるための措置を講じるための法案です(「育児休業中の社会保険料免除など」参照)。

(4)短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大

 厚生年金保険の適用対象となる者の具体的範囲、短時間労働者が多く就業する企業への影響に対する配慮等具体的制度設計について、適用拡大が労働者に与える効果や雇用への影響にも留意しつつ、実施時期を含め検討するとされており、今国会での法案提出は前途多難とみるべきではないかと思われます。

(5)被用者年金の一元化

 被用者年金制度全体の公平性・安定性確保の見地から、共済年金制度を厚生年金制度に合わせる方向を基本として被用者年金を一元化するということで、これ一つとっても非常に大きな課題になってくると思われます。このあたりと共通番号制度あたりを一点突破で攻めた方が、実現可能性は高いのではないかと思われます。


3.今国会への法案提出が見送られるもの

(1)「所得比例年金」及び「最低保障年金」

 職種を問わず全ての人が同じ制度に加入し、所得が同じならば同一保険料、同一給付の仮想積立方式の年金及び月額7万円程度の年金を税金を財源として支給する最低保障年金からなる新たな公的年金制度の創設は、平成25年の国会に法案を提出することとされました。

(2)第3号被保険者制度の見直し

 第3号被保険者制度の見直しを「短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大」及び「配偶者控除の見直し」の議論と連動させて引き続き総合的に検討を行うことになりました。小生は極端な個人主義の横行に反対する立場で、どちらかといえば家族単位で社会保障の仕組みを考えるべきだと主張する者ではありますが、さすがに第3号被保険者制度は欠陥が多すぎて、存続させるに値しないと考えています(「第3号被保険者の種別変更問題の考察」参照)。

(3)マクロ経済スライド

 デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方についての見直しを行うなど、引き続き検討していくことになりました。

(4)在職老齢年金の見直し

 60歳代前半の者に係る在職老齢年金制度について、調整を行う限度額の引き上げについて引き続き検討していくことになりました(「在職老齢年金(1)」参照)。

(5)標準報酬上限の引上げ

 厚生年金保険制度の標準報酬の上限(現行62万円)について、健康保険制度の水準(121万円)まで引き上げることについて引き続き検討していくことになりました。厚生年金及び健康保険の保険料は、標準報酬月額×保険料率(厚生年金保険料率現行16.412%)で算出されています。同じ標準報酬月額といっても厚生年金保険制度と健康保険制度とで上限及び下限が異なることは、ご存じだったでしょうか。

(6)支給開始年齢の引上げ

 少子高齢化が進行する中、支給開始年齢の在り方について、将来的な課題として、中長期的に検討を続けることになりました。

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