同一労働同一賃金の原則_(丸子警報器事件)

1.事案の概要

 Xらは、自動車部品の製造販売を業とするY社の女性臨時社員で、いずれも原則として雇用期間2箇月の雇用契約を更新すると言う形で継続して勤務しており、勤務期間は短い者で4年、長い者では25年を超えていた。また、これまでにY社が臨時社員に対して契約更新を拒絶したことはなかった。Xらは、正社員も従事する製造ライン等で勤務しており、業務内容は女性正社員とほぼ同じであった。さらに、勤務時間、勤務日数も正社員と同様であり、いわゆるQCサークル活動にも正社員とほぼ同様に参加していた。

 しかし、賃金体系は正社員は年功序列制に基づく月給制であるのに対し、臨時社員は日給月給制であり、一時金及び退職金も臨時社員は正社員より低く設定されていた。そこで、Xらは、同一労働同一賃金の原則に違反するなどと主張し、過去5年余の間に生じた正社員との差額賃金相当額(一人当たり約230万円から550万円)などの損害賠償を求めて、Y社を提訴した。


2.解 説

 丸子警報器事件(長野地裁上田支部平成8年3月15日判決)において、判決は、同一労働であるにもかかわらず、正社員との賃金格差が8割以下であるときは、その限度で賃金格差は公序良俗違反となるとして、Y社に対して正社員の賃金の8割と臨時社員の賃金との差額の賠償を命じました。

 この判決の要旨が、どういうことを言っているかというと、まず、「同一労働同一賃金の原則が、労働関係を規律する一般的な規範として存在していると認めることはできない」、「要するに、この同一労働同一賃金の原則は、...不合理な賃金格差を是正するための一個の指導理念とはなり得ても、これに反する賃金格差が直ちに違法となるという意味での公序とみなすことはできないと言わなければならない。」として同一労働同一賃金の原則の一般的な規範性を否定しています。

 しかしながら、「同一労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は、賃金格差の違法性判断において、一つの重要な判断要素として考慮されるべきものであって、その理念に反する賃金格差は、使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして、公序良俗違反の違法を招来する場合がある...。」と述べて、前述のような結論を導き出しているのです。

 本判決は、同一労働同一賃金の原則の一般的な規範性を否定しつつ、正社員と非正規社員との間にあまりにひどい労働条件の格差が生じている場合に、公序良俗違反の概念を用いて結論の妥当性を導き出そうとしたものと思われます。


3.非正規雇用

 本件の期間の定めのある雇用契約の更新を繰り返す臨時社員と言うのは非正規雇用の範疇です。今日、雇用形態の多様化に伴い、非正規雇用の問題が社会問題化しているのはご承知の通りです。頭を整理するために、以下用語の定義をしておきたいと思います。

(1)パートタイム労働者
 パートタイム労働法の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。
例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働者」としてパートタイム労働法の対象となります。
パートタイム労働法の概要

(2)擬似パート
 別名フルタイムパートとも呼ばれている労働者で、労働時間が1週間に35時間~40時間、またはそれ以上である人をいいます。

(3)非正規雇用(Wikipediaより引用)
 非正規雇用(ひせいきこよう)とは、期間を定めた短期契約で職員を雇う雇用形態。期間を定めない雇用契約を結ぶ正規雇用の対義語。日本では、非正規雇用の職員にはいわゆるパート(パートタイマー)、アルバイト、契約社員、派遣社員が含まれる。

 労働者数の推移をみると、1980年代から雇用者に占める非正社員の比率は少しずつ増加し、1990年に初めて20%を超えた。以降は、ほぼ横這いで推移していたが、1990年代後半になると増加傾向が著しくなり、1999年に25%、2003年には30%を超えた。これは主に女子学生、中年女性のパート・アルバイトが増加したことと、男女(特に女性)ともに派遣・契約職員が増加したためである。2008年10~12月期平均データでは過去最高34.6%を記録し、3人に1人超を占めるようになる。

 欧州では、早い段階から、フルタイム社員とパートタイム社員の均等待遇(同一労働同一賃金)の動きがある。フランスは1981年、ドイツは1985年に差別的取り扱いを禁止している。欧州連合(EU)では、1997年にパートタイム労働指令が発令された。これにより、パートタイムを理由とした差別の禁止と、時間比例の原則を適用することとなっている。背景として、産業別の労働協約と賃金体系があり、フルタイムとパートタイムとで賃金が違うということがあまりなかったことが挙げられている。

 米国では、均等待遇という原則は法制化されていない。これは、それぞれの雇用形態は企業と労働者の間の契約で取り決められたものだから、政府が法律で介入することはしないという考え方による。ただし、多くの産業別労働組合内でペイ・エクイティ原則が整備されている。よって、同じ仕事をしながら賃金に大きな差が出るということはありえない。

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【竹中平蔵】"日本版オランダ革命"に取り組め/同一労働同一賃金
http://www.youtube.com/watch?v=K6V6gcI4x8g

2010年06月01日 22:25 from 同一労働同一賃金 URL Edit

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