就業規則の法的性格_効力発生の要件

1.就業規則の効力発生要件

就業規則の作成及び変更の手続き・手順は次の通りです;

(1)使用者が就業規則案を作成する。
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(2)過半数加入労働組合又は当該労組が存在しない場合は過半数労働者代表への提示
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(3)意見聴取(文書意見)
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(4)正式に就業規則を決定
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(5)過半数加入労働組合又は当該労組が存在しない場合は過半数労働者代表の意見書を添付
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(6)所轄労働基準監督署長に届出
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(7)労働者に周知:①常時見やすい場所に提示又は備え付け、②書面交付、③磁器テープ、ディスク又はこれに準ずるものに記録し、常時確認できる機器を設置する

就業規則の効力発生要件については、(6)の届出は効力発生要件ではなく、(3)の労組の意見聴取も効力発生要件ではないと判例が述べています。(7)の労働者への周知は効力発生のための要件とされ、このことは労働契約法第7条と平仄が合いますが、その周知の方法については、周知手続きが労働基準法第106条に定める方法に必ずしも拠っていなくても、実質的に周知されていれば良いとされています。

・就業規則は、その性質上行政官庁への届出を効力発生要件としているのではない(昭和63年3月7日浦和地裁決定三矢タクシー事件)
・労働者の意見を聴くことは就業規則の作成変更の有効要件ではない(昭和24年10月20日京都地裁判決 京都市交通局事件)

・仮に被上告人会社において所論の如く労基法106条1項所定の周知の方法を欠いたとしても、前段の説明の如く当該就業規則には既に従業員側にその意見を求めるため提示され、且つその意見書が附されて届出られたものであるから、被上告人会社においてたとえ右労基法106条1項所定の周知の方法を欠いたとしても、これがため同法120条1号所定の罰則の適用問題を生じるのは別格、そのため就業規則自体の効力を否定する理由とはならないものと解するを相当とする。(昭和27年10月22日最高裁大法廷判決 朝日新聞小倉支店事件)
・変更後の就業規則の内容について、従業員に対し周知の方法をとることは効力発生のための絶対的要件であるが、実質的に周知する方法をとれば、労働基準法106条に定める周知方法をとらなかったとしても、その変更の効力が生じると解することができるから、(平成19年1月19日大阪高裁判決 クリスタル観光バス事件)

2.企業再編と不利益変更

今日的な問題として、会社の合併、分割、又は営業譲渡などが行われた場合に付随して起こる労働条件の変更の問題があります。

例えば、二つの会社が合併する場合、異なる就業規則を統一しようとすれば、合併前の各会社双方に不利益変更の問題が生じてくる可能性が付きまとうことになります。

2つの農協が合併しことに伴い、退職金の支給基準が変更(支給倍率が低下)されたので、今までの権利が守られないと職員が裁判を起こした事例について、退職金の支給倍率は低下しているが給与は増額されていること、給与の増額により実際の退職金額はそれほど低下していないこと、単一の就業規則による労働条件の統一は必須であること、労働条件を統一するための折衝が何度も実施されていたこと、などの理由により退職金の支給倍率の低下が認められた最高裁判決があります。
(昭和63年2月最高裁判決 大曲市農業協同組合事件)

会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)が2000年に施行されているので参照する必要はあると思いますが、不利益変更に関する基本的な考え方は、労働契約法第10条の要件を当てはめていけばよいのだと思います。

「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき...」です。

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