オリンパス事件(東京高裁判決)

 8月31日、日本経済新聞などの記事は、企業の内部告発に関する東京高裁の判決について伝えておりました。

 事件は、精密機器メーカー「オリンパス」(東京)社員の浜田正晴さん(50)が、営業担当だった2007年4月、上司が取引先の鉄鋼メーカー社員を引き抜こうとしていることを把握し、このことが企業倫理に反すると考え、上司に中止を求めたが聞き入れられず、同年6月に社内のコンプライアンス窓口に通報したものです。浜田さんは同年10月、それまで経験のない部署に異動になり、外部との自由接触を禁じられるなどの嫌がらせを受けたため、同社などに「異動の無効確認と1000万円の損害賠償」を求め控訴していました。

 31日、東京高裁、鈴木健太裁判長は「異動は、上司が原告の内部通報に反感を抱いて業務とは無関係に命じたもので、人事権の乱用にあたる」として原告敗訴の一審の東京地裁判決を変更し、同社側に異動の無効と220万円の賠償を命じるものでした。

 鈴木裁判長は判決理由で「通報に反感を抱いた担当部長が業務に関係なく、必要のない配転をした。動機は不当」と認定しました。また、「内部通報による不利益な取り扱いを禁じた社内規定に反し、人事権の乱用に当たる」との判断を占めしました。公益通報者保護法(公益通報者保護法の概要)に違反するかどうかについての直接の言及していません。配置転換後の人事評価も不当に低く、「新人同様の勉強やテストをさせるなど、50歳の浜田さんに対する侮辱的な嫌がらせがあった」と指摘し、「昇格、昇給の機会を事実上失わせた」とも述べ、精神的苦痛や賞与の減額分を損害と認めました。

 訴訟で会社側は「配転は業務上の必要性があった」と主張していて、一審の東京地裁判決は「通報は公益通報者保護法の保護対象に当たらず、配置転換も通報が理由とは認めがたい」などとして、会社に権利乱用はなかったと判断し、請求を棄却していました。

20110728_蓮華@不忍池001

 公益通報者保護法(平成16年法律第122号)とは、内部告発を行った労働者を保護することを目的として、2004年6月18日公布、2006年4月1日施行された法律です。

 労働法の一つとして位置付けられ、保護の対象となるのは、労働者のみとされます。通報対象事実は、同法別表にある7の法律のほか、政令にある約400の法律の違反行為のうち、犯罪とされているもの又は最終的に刑罰で強制されている法規制の違反行為(最初は監督官庁から勧告、命令などを受けるだけだが、それを無視していると刑罰が科されるもの)です。つまり、あらゆる法令違反行為が対象となっているわけではないし、倫理違反行為が対象となっているわけでもなく、刑罰で強制しなければならないような重大な法令違反行為に限られています。

 通報先は以下の三つの場合に分けられます。
(1)事業者内部
(2)監督官庁、警察及び検察等の取締り当局
(3)その他外部(マスコミ及び消費者団体等)
 上記通報先によって、それぞれ保護されるための要件が異なります。これは、事業者内部への通報は企業イメージが下がるなどのおそれがまったくないことから虚偽の通報に伴う弊害が生じないのに対し、事業者外部への通報はそのような弊害が生じるおそれがあることから設けられたものです。(1)では不正の目的による告発でないことで足りますが、(2)の場合、不正の目的でないことに加え、真実であると信じるに足る相当の理由が必要とされています。(3)では、(2)の要件に加えて、① 証拠隠滅のおそれがある、② 書面により事業者内部へ通報しても20日以内に調査を行う旨の通知がない、または正当な理由なく調査を行わない、③ 人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険があるなどの要件が備わっているか検討されます。

 ただし、同法施行前であっても、過去の裁判例では、通報者が労働関係上の不利益を被った場合に解雇が無効とされたり、損害賠償が認められるなど事例がかなり蓄積されてきており、同法で通報者が保護されない場合でも、判例で確立されてきた一般法理によって保護される可能性が十分にあります。

コメント

非公開コメント

トラックバック

http://yokoteoffice.blog130.fc2.com/tb.php/183-1829322c